不調改善

ダイエット成功のカギは「食事」!”痩せる食生活”を科学的根拠から解説

今、ベストセラーとなっている医師でUCLA助教授の津川友介さん著『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(東洋経済新報社)。最強のエビデンス(科学的根拠)のある食事法について説いたもので、確実に健康に良いと裏付けされた「本当に体に良い食べ物」が紹介されている。

アスパラと野菜ソースの上に焼いた鮭が載った料理
肉中心の食事よりも、魚や野菜中心の食事が健康的に痩せる食事(写真/アフロ)
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健康的な食事はダイエットにも有効

病気にならず健康になるための食事法を説いているが、実はダイエットにも有効。「やせる食事」は「健康的な食事」とかなり近いのだという。同書にも紹介されている健康食事術の中から、ダイエットに有効な食べ方について津川さんに教えてもらった。

健康情報と同様に、巷に溢れるダイエット情報も玉石混合。インターネットだけでなく、テレビや健康本の情報ですら、科学的根拠に基づいておらず間違ったものも多く存在していると津川さんは言う。

「“これさえ食べていれば痩せる”と誤った情報に踊らされてしまう人が残念ながら多いのです。これらの多くは一見手軽ですが、実は何の根拠の無いものも数多く存在しています。食事は健康を決める上で最も重要なものの一つですので、話題性のある目新しい情報にすぐ飛びつくのではなく、正しい情報を見極めることはとても大事です」(津川さん、以下「」内同)

→津川さん解説による”痩せる食事術”その1はコチラ

エビデンス(科学的根拠)のレベルが大事

「ただエビデンスがあればいいのではなく、『レベル』が大事です。まず、エビデンスには強弱があり、最強のエビデンスは、複数の研究結果(特にランダム化比較試験)をとりまとめた研究手法・メタアナリシスによるもの。ひと口にエビデンスといっても、『ランダム化比較試験』→『観察研究』→『個人の経験談、専門家のエビデンスにもとづかない意見』の順で弱くなっていきます。最近はエビデンスという言葉が市民権を得るようになったのですが、その一方でエビデンスという言葉を巧みに使った怪しい情報も出てきているので要注意です」

ダイエットにも?本当に健康に良い食品5つ

現在、数多くの信頼できる研究に裏付けされた、本当に健康に良く、脳卒中や心筋梗塞、がんなどのリスクを下げると考えられている食品は以下の5つ。

○魚
○野菜と果物(フルーツジュースとじゃがいもは含まず)
○茶色い炭水化物(玄米、蕎麦粉の含有量が多い蕎麦、全粒粉を使った黒いパンやパスタ)
○オリーブオイル
○ナッツ類

本当に健康に悪い食品3つ

一方、本当に健康に悪いと考えられているのは、

×赤い肉(牛肉や豚肉など。白い肉の鶏肉は含まない。ハムやソーセージなどの加工肉は特に体に悪い)
×白い炭水化物(白米、うどん、パスタ、小麦粉
×バターなどの飽和脂肪酸

(出典/『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』より)
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”食べても太らない食べ物”と”食べると太る食べ物”がある

全粒粉のパン
「茶色い炭水化物」を積極的に摂りたい(写真/アフロ)
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巷では、炭水化物の摂取量を減らして、たんぱく質や脂質の摂取量を多めにする「糖質制限」や「低炭水化物ダイエット」が流行っているが、「炭水化物の『量』さえ減らせば痩せる、という考えは必ずしも正しくない」と津川さん。最新の研究によると、ダイエットにとって摂取する「量」と同じくらい重要なのは、その「質」なのだという。

「何キロカロリー摂取するかだけでなく、どのような食品でとるかが重要だと最近は考えられるようになってきています。たとえば、“炭水化物は健康に悪く、食べると太る”という考え方は不正解で、“健康に良く、食べてもあまり太らない炭水化物”と“健康に悪く、食べると太る炭水化物”があるのです」

”食べても太らない炭水化物”は全粒粉、大麦、キヌア、玄米…

良い炭水化物とは、全粒粉、大麦、オート麦、ライ麦、キヌア、玄米、雑穀類、蕎麦粉など精製されていない「茶色い炭水化物」のこと。悪い炭水化物とは、精製過程で食物繊維や、ビタミンなど多くの栄養成分が取り除かれてしまう、白米や小麦粉(パン、パスタ、ラーメン、うどん)など「白い炭水化物」を指す。

ラーメン
「白い炭水化物」の代表格、ラーメン(写真/アフロ)
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「白い炭水化物」は血糖値を上げ、脳卒中や心筋梗塞など病気のリスクを高める可能性があることが数多くの研究から報告されている一方、精製されていない「茶色い炭水化物」の多くは、食物繊維や栄養成分を豊富に含み、白い炭水化物を茶色い炭水化物に置き換えることで、肥満や動脈硬化のリスクをむしろ下げると言われている。

「アメリカで行われた研究によると、4年間の追跡期間で茶色い炭水化物の摂取量が1日1単位(全粒粉パンなら1スライス=約30g)増えていた人達は、体重が1.7kg減っていたことが明らかになっています。複数の研究において、白い炭水化物を食べている人は体重が増加しているのに対し、茶色い炭水化物を食べている人は体重が減り、その摂取量が多い人ほどBMIが小さく、腹囲が細いことも示されていました」

パンやパスタの選び方は「全粒粉」を見る

「全粒粉」と書いてあっても、ほとんどが精製された小麦粉という商品があるため、パンやパスタは、食品ラベルを見て全粒粉の割合の高いものを選んで。ほとんどが小麦粉の蕎麦にも注意。十割そばや二八そばのように割合の高いものが好ましい。

また、炭水化物の摂取量が多い人よりも、炭水化物の摂取量が少ない人の方が体重が減っていることはランダム化比較試験で報告されているが、炭水化物制限は、6か月は体重減少がみられるものの、12か月後には体重が元通りになってしまうという報告もある。

「実は極端な炭水化物制限を長期的に行うことによる健康への影響はまだわかっておらず、心臓病などのリスクが上がる可能性も疑われています。単純に“炭水化物さえ減らせばあとは何を食べてもやせる”と書かれた本や指導者は、エビデンスを十分理解していないと思われるので、あまり信用しない方が賢明でしょう」

痩せる食事法は、太る炭水化物を減らして野菜、果物をとる

赤身の肉
赤い肉を食べている人ほど体重が増えているという研究結果も(写真/アフロ)
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糖質制限食には、炭水化物を減らした分、代わりに“肉をたくさん食べていい”など、間違った指導が行われている問題点がある。

「炭水化物さえ減らせばステーキでも焼肉でもたくさん食べて良いという食事療法は明らかに間違いで、赤い肉を食べている人ほど体重が増えているという研究結果もあります。仮に肉を食べて体重を減らすことができたとしても、赤い肉をたくさん食べると、動脈硬化が進み脳卒中や心筋梗塞のリスクを上げるだけでなく、大腸がんのリスクを上げることも知られています。

病気のリスクを上げずに痩せる正しい食事療法は、白い炭水化物を減らして、代わりに野菜や果物をたくさん食べること。もしくは、白い炭水化物を茶色い炭水化物に置き換える。数多くの行動科学の研究から、食事量を減らしてもストレスになり、爆発して食べ過ぎてしまうといわれています。それよりも、食べる食品を健康に良い食品へ置き換えるのが効果的です」

赤い肉や白い炭水化物を減らして、代わりに前述の「体に良い5つの食べ物」ならお腹いっぱい食べてもOKだ。

著者・津川友介さん

津川友介さん
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つがわ・ゆうすけ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)内科学助教授。東北大学医学部卒、ハーバード大学で修士号(MPH)および博士号(PhD)を取得。聖路加国際病院、世界銀行、ハーバード大学勤務を経て、2017年から現職。ブログ『医療政策学×医療経済学』で最新の医療情報を発信。著書に共著『「原因と結果」の経済学:データから真実を見抜く思考法』(ダイヤモンド社刊)がある。

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