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睡眠ゴールデンタイムの真実|成長ホルモンが分泌される説への見解を医師が語る

世界的に見て、日本人の睡眠時間は非常に短い。経済協力開発機構(OECD)が発表した先進国の平均睡眠時間データ(2014年)によれば、最長の南アフリカが9時間13分だったのに対し、日本はわずか7時間22分だった。

実は、日本人の睡眠時間は年々ゆるやかなカーブで減り続けている。NHKの国民生活時間調査(2015年)によると、この50年で1時間ほど減ったことになっている。

熟睡していれば成長ホルモンは分泌される

家事や仕事をしていると、なかなか夜10時に床に就くのは難しいもの。だが、こんな言葉を聞いたことはないだろうか。

〈夜10時から深夜2時までは睡眠のゴールデンタイム〉

10時をさす時計の前でぐっすり眠る女性
毎日忙しい中で、夜10時から深夜2時までといわれる、ゴールデンタイムに就寝するのは難しい(写真/アフロ)
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この「ゴールデンタイム説」を真っ赤なウソだと指摘するのは、東京医科大学精神医学分野の志村哲祥先生。

「成長ホルモンは良質の睡眠がとれているときに分泌され、全身をメンテナンスしてくれる、健康のためになくてはならない物質。この成長ホルモンは夜10時から深夜2時以外の時間でも分泌されるんです」

では、なぜこんな説が定着したのだろう。

「1991年に発表された、被験者の血液中の成長ホルモン値を測定した実験の論文が早とちりされたのではと思っています。この実験では、被験者を夜10時過ぎから寝かせると夜10時過ぎから深夜2時頃にかけて成長ホルモンが出ることが確認されました」(志村先生)

成長ホルモンと睡眠の関係を表したグラフ
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こう聞くと、やはりゴールデンタイムに布団に入るのがよいように思える。しかし、この研究には続きがあると志村先生が話す。

「翌日は被験者を徹夜させ、成長ホルモンは確認できなかった。徹夜明けの翌々日、昼間に被験者を寝かせたところ、朝10時から寝ても成長ホルモンが大量に確認できた。つまり、布団に入る時間が大切なのではなく、熟睡していれば何時でもいいのです」

眠れないのに布団に入るのはやめたほうがいい

翌日に大きなイベントを控えるなどして目がさえてしまい、なかなか眠りに就けない夜。誰しも経験があるだろう。そんなとき、心の支えになるのは、〈寝つけない夜も、布団に入って横になっていれば体は休まる〉という言葉だ。

これもよくない俗言だと志村先生が指摘する。

薄暗い部屋で布団の中に入っているが目を開けている女性と、ぐっすり眠る男性
布団に入っても眠れないときはつらいもの(写真/アフロ)
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「眠れないのに布団に入っていると、無意識のうちに『布団=眠れない場所』だと条件付けがなされてしまい、ますます眠れなくなる悪循環に陥ることがある。これを『条件付け不眠』と呼びます。ですから、眠くないのに布団に入るのはやめた方がいい」

では、寝つけないときはどうしたらいいのか。

「そんなときは、いったん布団から出ましょう。ソファなどで過ごし、眠気を覚えてから布団に入るようにするのです。必要な時間を超えて布団にいること自体が不眠を発生させる原因なのです」(志村先生)

眠くなりにくいのは、日中の活動が足りない場合もあり、意識して昼間に運動を取り入れるようにすると改善する場合もあるようだ。

※女性セブン2018年12月20日号

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