「例年なら今頃は閑散期のはずなのに…。量が多すぎて一時的に受け取り中止にしたよ」「持ち込みのために1時間の渋滞。こんなの前代未聞だ!」
アメリカ・ワシントン地区のリサイクルショップ『グッドウィル』では、1週間で前年比66%増の持ち込みがあり、同シカゴの古書店でも寄付の量が4倍に。同じようにイギリスやオーストリア、オランダなど、世界中のリサイクルショップに、今人々が殺到している。異変が始まったのは今年1月。実はこれ、一斉を風靡したある日本人女性が関係している。
この女性の正体は、片づけコンサルタントの近藤麻理恵さん(34才)。“こんまり”という愛称に聞き覚えのある人もいるだろう。
こんまりが自ら手にしたアメリカンドリーム
ここで彼女のプロフィールをざっとおさらいしよう。5才の時から主婦雑誌を愛読する、根っからの片づけ魔。
徐々に、「こんまりちゃんが遊びに来ると家がきれいになる」と評判になり、本格的に片づけに没頭し始めたのが中学時代。大学2年時、「こんまりメソッド」を考案し、片づけコンサルタント業をスタートさせた。
一度習えば二度と散らからない彼女の“リバウンドゼロ”の片づけ収納法は、大きな反響を呼び、初の著書『人生がときめく片づけの魔法』(サンマーク出版・2010年)は世界40か国で翻訳され、シリーズ累計1000万部を突破。
2015年には米雑誌『TIME』の『世界で最も影響力のある100人』に選出されるほど、グローバルな人気を博すようになる。
プライベートでは2014年に結婚した夫と2人の女児をもうけており、同年から一家でアメリカに活躍の場を移す。アメリカのエンタメに詳しいライターのよしひろまさみちさんは、興奮気味に語る。
「以前から英語圏で翻訳本がとても売れていたのですが、今年の1月にNetflixで冠番組『KonMari~人生がときめく片づけの魔法~』の配信が全世界で始まったことで、さらに火がつきました。
こんまりさんの収納術はマインドが重要視されている。物にときめくかどうかという考えは、“物に命を見出している”ということ。そこが特殊なんです。彼らはそこに日本の“禅”を感じ、新鮮でクールと思うようです」
「スパーク・ジョイ」が国際的流行語に
今や『KonMari』は、“片づける”という意味の動詞として定着し、“ときめき”を訳した『Spark(スパーク) joy(ジョイ)』はグローバルな流行語にもなっている。
「“ときめき”は日本独特の言葉なので直訳するのが難しい。スパーク・ジョイは造語ですが、“喜び、弾ける”というニュアンスがぴったりはまりました」(よしひろさん)
147cmの小柄な彼女が、バサバサと物を仕分けしていく姿は痛快そのもの。体の半分ほどもある収納ボックスを手に笑顔で各家庭を訪問する姿は“家事が得意な働き者の魔女”などと称されることもある。
「まさに“時の人”という証拠に、2月26日に行われたアカデミー賞授賞式にも招待されていました。ゲストは厳選されることで有名で、どんなにお金を積んでも入れてもらえません。日本のどの政治家よりも、俳優の渡辺謙さんよりも、“今最も有名な日本人”は、こんまりさんです」(よしひろさん)
米国では、「こんまりが嫌い」とツイートした女性作家がSNS上で大バッシングに遭い、炎上する騒ぎも。こんまりという存在こそが人々の心をスパーク・ジョイさせているのだ。
こんまりメソッドのポイントをおさらい!
冒頭に話を戻そう。米国でのリサイクルショップの盛況ぶりは、彼女の番組を視聴し、こんまりメソッドを実践した人たちの多さを表している。と同時に、世界中の人がいかに「ときめいていなかった物」に囲まれて生活してきたかを物語っているのだ。
だがここまできて、「こんまりの片づけ?」「ときめく、ときめかないって、なんだっけ?」という人も少なくないかもしれない。
世界で2人しかいない、こんまりの公式弟子である、こんまり流片づけエグゼクティブコンサルタントの武田望さんにこんまりメソッドと極意を聞いた。
1.理想のくらしを描く
「何のために片づけをするのか、目的を決めることが大切。どんな空間に住みたいか、わくわくする暮らし方はどんなものか、制限をつけずにビジュアルイメージしてください」(武田さん・以下同)
写真を切り抜いたり、スケッチブックに絵を描いてもOK。イメージがしやすい。
2.順番に物を見極める
衣類→本類→書類→小物→最後に思い出の品という順番で、ときめく物かどうかを見直す。その際、1か所にその物を積み上げて、必ず1つずつ手にとっていくこと。「ときめきで選ぶ決断力を磨くのに適した順番です。衣類はいつも身につけるのでときめきを判断しやすい。逆に思い出の品は見入ってしまったりして難易度が高いので、後回しにしてください」。
3.ときめかない物に感謝を伝え、手放す
「ときめかない物は“お役目を終えた”として、“ありがとうございました”と言って手放しましょう。感謝をこめて送り出す事で手放しやすくなります」
やってはならないのは、決断の一時しのぎに実家に送りつけたり欲しくない誰かに押しつけることだという。
4.ときめく物は居場所を決めて収納する
「コート、スーツ等は掛け、それ以外のたためる衣類は小さく長方形に折りたたみ、立てて収納を。奥に濃い色の衣類から順にグラデーションでしまうと、見た目がきれいなほか、引き出し内で探しやすく、手持ちの服がどれくらいあるのかも把握しやすいというメリットがあります」
手でたたむと、シミやほつれなど、衣類の状態にも気づきやすくなる。
片付け嫌いの人生を変えた“こんまり力”
実は、武田さんは片づけが大の苦手だったそうだが、こんまりメソッドに感激して、片づけの道に進んだという。
「部屋が片づくと気持ちがよくなるのはもちろんですが、何にときめくかを決断し続けるうち、人生においての決断力がつき、自信もついて、自分を前より好きになれました。
今後やりたいことが明確に見えてきたり、まわりに感謝する気持ちが湧いてきたり、まさに人生が変わる。それが注目される理由なのだと思います」
米・ニュースサイトの報道によると(3月7日)、近藤さんが片づけ方法を普及するために設立した会社「コンマリ」が、投資会社から最大4000万ドル(約45億円)の資金調達を受ける交渉をしているとのこと。こんまり旋風はますます拡大しそうだ。4月から新生活、“こんまり”して、あなたの人生もスパーク・ジョイで満たしては?
※女性セブン2019年3月28日・4月4日号
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