ココロのケア

うつと食事に関係が? 改善におすすめの食べ物は肉、魚介、乳製品など

在宅勤務が続いたり、週末も家にいることが増えたりしたことなどで、心身の調子を崩しがちだという人は、食事を見直してみると改善するかもしれない。『医者の新常識 病気にならない最高の食べ方』(さくら舎)を上梓したダイエット外来の医師・工藤孝文さんは、「うつ症状のときこそ食事の見直しを」と強調する。

こんな症状が出たら、うつ病のサイン

女性が一人で頭を抱えて悩んでいる様子
写真/ゲッティイメージズ
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まず、自分や家族にこのような症状があったら危険信号だ。

「うつ病とされる特徴的な症状は、憂うつな気分が朝から晩までずっと続くこと、興味や喜びを感じなくなった状態がずっと続くこと。この2つが同時に起こるか、どちらかの症状があり、それが2週間以上続いたときはうつ病のサイン。

目安となる身体的な初期症状としては、頭痛や肩こり、立ちくらみ、食欲不振、だるい、疲れやすさなどがあります。そして、集中力の低下やイライラ、身だしなみに関心が持てない、趣味を楽しめなくなった、といった精神症状へと続くケースが多いようです。こうした症状が出たら、医療機関を受診することをおすすめします」

朝食をとらない人ほどうつになりやすい!?

イチゴやブルーベリーなどフルーツ入りのシリアルとバナナ、ヨーグルト、オレンジ
写真/アフロ
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うつ病の代表的な治療は、薬物療法や休養、そして可能な限り環境を変えるなりして、原因となっているストレスを取り除くことだと言われている。

だがもう1つ、冒頭に述べたように、食事でリスクを下げることも可能だという。まずすべきは、朝食をとること。

「うつ病の患者さんには夜遅くまで起きて何かを食べ、朝は遅く起きたり食事を抜いたりする乱れた食生活を送るかたが多いです。まずは、こうした習慣を改めるところから始めましょう。朝はちゃんと起きて、バナナ1本でも口に入れること。それによって脳にエネルギー源が確保されます。脳は運動機能や自律神経などのすべての活動にかかわっていますから、脳にエネルギー源を送りこむことは極めて重要なのです」

◆加工食品やファストフードへの偏りは要注意

実際、朝食をきちんととっている人はうつ症状が少ないというデータもあるという。かくして朝起きてバナナ1本でも口に入れる習慣がついたら、次は栄養素を意識するようにしたい。目標は、バランスよくいろんな栄養素を摂ること。

「抑うつなどの精神症状は、さまざまな栄養素の不足が原因の1つになることもわかっています。加工食品やファストフードなどに偏った食生活が、うつ病のリスクを上げる一方、魚介類、野菜、果物、ナッツ類、オリーブオイルなどを摂る地中海式の食生活をしている人はうつ病の発生率が低いという海外の研究もあります」

うつ改善におすすめの食べ物&飲み物

緑茶と急須、お茶の葉がテーブルに並んでいる
写真/アフロ
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3食欠かさず、さまざまな栄養素をバランスよく食べる。この鉄則を踏まえ、特におすすめの食品を挙げてもらった。まず、飲み物は緑茶。

「緑茶にはうまみ成分のテアニンが含まれていて、リラックス効果や気分を落ち着かせる効果があります。うつ病と併発しやすい肩こり、動悸、疲労、体重減などの身体症状や自律神経の乱れにも、緑茶はおすすめ。できれば朝昼晩と午後3時頃に飲むことを推奨します。うつ病の患者さんは、そうでない人と比べて緑茶を飲む頻度が少ないという研究結果や、緑茶を飲む頻度が高い人はうつ病のリスクが低いという報告があるんです」

◆トリプトファンを多く含むたんぱく質を

では、食べ物は何を積極的に摂るとよいだろうか。

工藤さんは、アミノ酸の一種「トリプトファン」を多く含むたんぱく質を推奨する。トリプトファンとは、牛・豚・鶏の肉やレバー、かつおやまぐろ、たらこなどの魚介類、豆腐や納豆などの大豆製品、牛乳やチーズなどの乳製品に多く含まれる。

「うつ病は、セロトニンなど神経伝達物質が不足して起こる病気と考えられています。そのセロトニンの原料となるのがトリプトファンなのです。このトリプトファンは、体内では生成されない必須アミノ酸なので食事で摂る必要があるのです」

他の食材としては、さばやさんまなどの青魚に豊富なDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)はうつ病の改善に有効だという研究結果も。