不調改善

”巣ごもり便秘”が死を招く!その原因と解消のための食生活や「腸もみメソッド」を解説

政府が発表した「新しい生活様式」に従えば、今後も家にいる時間はぐんと長くなることが予想される。確かに、外出しなければ感染は免れるが、別の弊害が生まれてくる。日頃から私たちを悩ませる便秘もその1つ。お腹スッキリ、「新しい排便様式」お伝えします!

コロナによる巣ごもり生活で便秘になる人が増加

お腹の痛みを感じている女性

写真/ゲッティイメージズ

いつの間にか季節が移り変わり、気温30℃を超える真夏日を記録した場所もある。例年なら外を歩くだけで汗がしたたり、暑さで食欲も落ちるこの時期は、体重が減るという人も多いが、今年は違う。巣ごもり生活による運動不足で、「コロナ太り」を実感する女性が増えているのだ。

実際、アメリカの医療系メディア『Web MD』では国ごとにコロナ太りの実態を調査したアンケート結果を公開。各国で男女ともに体重増加の傾向にあったが日本人は特に多く、イタリア・ブラジルに続く“世界3位”となる51%が感染拡大中に体重を増加させたという結果になった。

◆不規則な食生活などで腸の働きが悪化

在宅時間の長期化は思わぬところで体をむしばんでいた。体重増加とともに急増しているのが“お通じ”に関するトラブルだ。

帝京平成大学教授の松井輝明さんは「巣ごもり便秘」だと指摘する。

「なかなか家から出られない巣ごもり状態が続けば、運動不足やストレス、不規則な食生活などさまざまな要因から腸管自体の動きが悪くなって大腸内に有害な菌が増え、これまで便秘とは無縁だった人も便秘になってしまう可能性があります。新型コロナウイルスの台頭によって、いままさに便秘は国民病になるのではないかと言っても過言ではありません」(松井さん)

巣ごもり生活で便秘になる理由とは?

なぜ、巣ごもり生活が便秘の原因になるのか。最も大きな理由は、運動不足だ。横浜市立大・肝胆膵消化器病学教室主任教授の中島淳さんが解説する。

「実際に診察していても、4月以降に便秘がひどくなったという人が非常に多い。体を動かすことによって腸が刺激され動きは活発になりますが、自粛生活の影響で、外に出られず運動量が劇的に減っている人が多い。通勤のために歩くだけでも、腸への充分な刺激になっていましたが、テレワークになれば定期的に歩く機会もなくなり、同時に腸が活性化する機会も奪ってしまうのです」

◆スマホの見すぎも影響

運動不足に加え、食生活も大きく影響する。中島さんが続ける。

「太ることを気にしてダイエットをしたり、『ずっと家にいてお腹が空かないから』ときちんと食べていない人が意外と多い。もちろん、食べすぎはよくありませんが、食事を減らせば食物繊維も充分に摂れず、便秘になりやすい。1日20gの食物繊維が必要だとされています」

日本養腸セラピー協会会長で養腸家の真野わかさんは、「自宅でのテレビやスマホの見すぎも、便秘に影響している」と指摘する。

「知らないうちに目を酷使して、自律神経が乱れてしまっている人が多いです。目から入ってくる情報が増えると、自律神経の交感神経が優位に働き、常に脳が興奮状態になって、胃腸の活動が鈍ってしまいがちに。逆に副交感神経が優位になるリラックス状態では、胃や腸が動いて便が出やすくなります」(真野さん)

便秘によるさまざまな病気のリスク

便秘が与える全身へのトラブルを図解したイラスト

そもそも腹筋が弱い女性は男性に比べて便秘になりやすく、2人に1人が悩んでいるともいわれる。だからこそ、多少ひどくなっても「いつものこと」だと思いがちだ。しかし、あなどってはいけない。近年、さまざまな研究や調査によって重篤な病気を引き起こすことがわかってきたのだ。

中島さんは「便秘は放置すれば死に至る立派な病気」だと断言する。

「これまで便秘で死ぬことはないと軽視されてきました。ところが、死に直結する病気を引き起こすことがある。便秘の人とそうでない人を15年間追跡調査したところ、便秘の人の方が死亡率が高いことも明らかになっています」(中島さん)

◆血管の不調があるときは要注意

特に恐ろしいのは血管にかかわる不調を抱えていたときだ。

「便秘の人がトイレで力むと一気に頭に血が上り、収縮期血圧(上の血圧)が200mmHgを超えてしまうことがあります。ところが、200mmHgを超えると、血管が圧力に耐えきれず、解離性動脈瘤といって太い動脈が破れることがあるのです。そのまま意識を失って亡くなる人もいます。お風呂で血圧が急変動して倒れるヒートショックが有名ですが、実は救急車で運ばれる人の1~2割はトイレで倒れています」(中島さん)

閉経後の女性はさらにリスクが上がる。

「更年期を迎え、閉経すると血管をしなやかにする働きを持っていた女性ホルモンが減少し、動脈硬化が進んで心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが上昇します。その状態で便秘になれば、トイレで力んだのをきっかけに、脳梗塞や心筋梗塞を起こす可能性は大きく高まります」(中島さん)

◆便が腸に留まることで腎臓の機能を低下

恐ろしいのは血管系の病気だけではない。体にとって不要な便が腸に長く留まることで、思わぬ悪影響もある。

「便が長く腸に留まれば異常発酵し、『尿毒素』と呼ばれる有害物質が発生します。この毒素には腎臓の機能を低下させる働きがあると考えられており、アメリカで350万人を対象にした調査によれば、便秘の人は5~6年後に腎臓が悪くなったことがわかりました。中高年以降に多い慢性腎臓病には、便秘が関係していると考えられます」(中島さん)

便秘は新型コロナウイルスにかからないための免疫力にとっても大敵だ。

「腸内の善玉菌は腸壁にバリアを作って、ウイルスや病原菌が腸壁から内部に侵入するのを防ぐとともに、小腸での免疫力を高めることで全身の自然免疫・獲得免疫を活性化して、感染症予防の役割を果たしてくれています。実際に、善玉菌の1つであるビフィズス菌や乳酸菌などは、腸や気管の粘膜から侵入する外敵から身体を守るたんぱく質『IgA(免疫グロブリン A)』の生成を助けていることが、動物実験で明らかになっている。

加えて、免疫細胞の数や機能を調節する役割を果たすサイトカインがコロナウイルスによって暴走し、容体が急変する一因といわれている『サイトカインストーム』に関しても、サイトカインの働きをコントロールして予防できることも知られている。ところが便秘が続くと善玉菌の働きが弱くなり、免疫力は低下。コロナへの罹患リスクが高まり重症化してしまいます」(松井さん)

便秘を改善する食生活、便秘薬のポイント

味噌汁を食べようとしている女性

写真/ゲッティイメージズ

放置すれば最悪、死に至る可能性すらある便秘。解消するにはどうすればいいのだろうか。中島さんは「そもそも便は出すものでなく自然に出るもの」ときっぱり。

「女性の場合、便秘でないという人でも、1日に何度かトイレに行って、ウサギのフンのように硬い便を出しているとか、力まないと出ないというタイプが多い。しかしそれではたとえ毎日排便があったとしても、血圧が上昇して動脈破裂や脳梗塞のリスクがあります。10秒以上、トイレで力むようなら要注意。水分をしっかり摂ったうえで、無理に頑張って出そうとしないことです」(中島さん)

体がリラックスすることに加え、毎日同じ時間にトイレに行って、排便習慣をつけるのが大事だと中島さんはアドバイスする。

「腸が鈍感になって、便が肛門近くまで下りてきていても、便意を感じない人が少なくありません。毎日同じ時間にトイレに行く習慣をつけることが大事です。おすすめの時間帯は、朝食の2時間後くらい。自然に便を出すために、必要に応じて便秘薬を使いましょう」(中島さん)

◆便秘薬の使い方に注意

ただし気をつけたいのが薬の使い方だ。

「よく市販されている、腸を刺激してぜん動運動を促すタイプの便秘薬にはリスクがある。毎日のんでいると耐性ができて、使用量がどんどん増えていきます。人によっては、のみ始めた30代の頃は1日1錠だったのが、50代くらいになると1日60錠のまないと効かないという人も。『便秘薬を使って毎日水のような便が出ないとスッキリしない』と言う人もいて、依存性もある。使う場合は1週間に1~2度くらいの頻度で“ここぞ”というときだけにしてほしい。また、どうしても薬を使いたいなら病院で処方される便秘薬なら依存性がないため、医師に相談してみるのも手です」(中島さん)

◆食生活の見直しを!おすすめは具だくさんみそ汁

食生活の見直しも大切だ。

「自宅にいる時間が長いいまこそ、ファストフードは控えめに。料理を作って発酵食品や食物繊維をきちんと摂るようにしましょう」(真野さん)

食物繊維を手軽に摂れる料理として真野さんがすすめるのは、具だくさんのみそ汁だ。

「みそは発酵しているので体に吸収されやすく、効率よく大豆のたんぱく質が吸収できます。大豆は食物繊維も豊富。具は残りものの野菜など何を入れても構わないので、お財布にもやさしい。定番のわかめやきのこは食物繊維がたっぷりですし、豚汁に入れるこんにゃくも食物繊維が含まれています。納豆を入れて腸内細菌を増やすのもおすすめです」(真野さん)

便秘解消に効果的な「腸もみメソッド」のやり方

食生活で腸内環境を整えたら、腸のぜん動運動を活発にするため、ウオーキングなどで、できるだけ体を動かそう。真野さんは、腸をマッサージして活発化を促す「腸もみ」をすすめる。

「便秘がちの人に多いタイプの腸は、肛門に近い部分のS状結腸が硬くなる“つまり腸”。S状結腸は便を排出するまでためておく場所ですが、水分を摂る量が少なかったり、便意があってもがまんしたりしていると、便が固まって出にくくなってしまいます。体そのものを動かすことに加えて、お腹を心地よくマッサージし、ぜん動運動を促してあげると、便秘が改善されやすいです」(真野さん)

腸もみをする際は、あおむけになって、両ひざを立てて、腸がリラックスできる状態で行うのが基本だ。

「利き手を下にして、人差し指、中指、薬指の第一関節を重ねて、押したい場所に置きます。親指と人差し指で逆三角形を作るように指先を重ねて、お腹を押すのは利き手の人差し指、中指、薬指の3本の指の腹で押します。上に重ねた手で下の手を押すように、息を吐きながらゆっくり力を入れましょう」(真野さん)

腸もみメソッドの方法を図解したもの

まずはおへその左斜め上から、おへその周囲を時計回りに5か所押す。

「3秒かけてゆっくり押して、2秒かけて離して、小腸の辺りを丁寧に押しもみます。続いて、右の骨盤の内側から時計回りに5か所、大腸を押します。小腸よりも少し力を強くして、便やガスを押し出すつもりで。

最後はS状結腸です。便を肛門に押し出すように、斜め下に向かって硬い部分を押しながらもみましょう。ただし、強く押そうとして指を立てるのはNG。痛いだけの刺激は、腸がリラックスできず逆効果です」(真野さん)

◆時間がないときは深呼吸だけでも有効

腸もみの時間がとれないときは、深呼吸をするだけでも効果が高まるという。

「深い呼吸を繰り返すと横隔膜が動いて、その下にある腸に刺激が伝わり、動きが活発になります。1日に3回、朝昼夜と1分ずつでいいので、意識して深呼吸するといいですね。5秒で吸って、10秒で吐く。もっと短くてもいいですが、1対2の長さで息を吸って最後まで吐き切るのがポイントです」(真野さん)

◆毎日湯船につかってお腹を温める

猫背やお腹の冷えも大敵だ。

「猫背の人は背中が丸くなり、肺にたっぷり空気が入らず、呼吸が浅くなったり、お腹が圧迫されて腸が動きにくくなりがちです。暑くなると、お風呂に入らずシャワーだけですませる人も多いですが、お腹が冷えると腸の活動が弱くなります。なるべく毎日湯船につかって、お腹を温めるようにしましょう。これからの季節は、冷たいものが欲しくなりますが、飲みすぎは腸を冷やすので、注意してください」(真野さん)

それでも便秘が改善されないときは、病院を受診する必要がありそうだ。

「出血を伴う慢性的な便秘には大腸がんが隠れていることもあります。40才を過ぎて急に便秘がひどくなったという人は、一度病院で診てもらうことをおすすめします」(中島さん)

しばらく続くことになる新型コロナとの「新しい日常」。だからこそ巣ごもり便秘に向き合って、健康を維持しよう。

イラスト/飛鳥幸子

※女性セブン2020年6月11日号

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