コロナ禍で『愛の不時着』や『梨泰院クラス』を見て久しぶりに韓国ドラマにハマり、「次は何を見よう？」と悩んでいる人も多いのでは？ そこで、韓ドラ初・中級者のかたにぜひ見てほしいおすすめのドラマを、長年、韓国エンタメを追いかけるライター・田名部知子がご紹介！
今回、取り上げる『賢い医師生活』の企画意図は、「人の人生が交差する病院で、１日１日を暮らす平凡な医師5人たちの話」。『梨泰院クラス』でパク・セロイの生き方や、仲間と目的を達成する喜びに心震えたあなたに、ぜひ見てほしいヒューマンドラマです。
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韓国で人気のシリーズドラマ『応答せよ』（2012年～）や映画『刑務所のルールブック』（2017年／原題は『賢い刑務所生活』）の監督、脚本家と、韓国最高の5人の中堅実力派俳優、チョ・ジョンソク（『嫉妬の化身』）、ユ・ヨンソク（『応答せよ1994』）、 チョン・ギョンホ（『刑務所のルールブック』）、チョン・ミド（ミュージカル俳優）、 キム・デミョン（『ミセン』）がタッグを組んでいます。
1999年、ソウル大学の医学部で出会い、深い友情で結ばれた5人（チョ・ジョンソク、ユ・ヨンソク、 チョン・ギョンホ、チョン・ミド、キム・デミョン）の男女も40代に突入。酸いも甘いも嚙み分け、別々の病院で医師としての忙しい毎日を送る中、久しぶりに顔を合わせます。
ジョンウォン（ユ・ヨンソク）はその場で、ユルジェ病院のVIP病棟の再建を手伝ってほしいと４人に頼むのですが、ソッキョン（キム・デミョン）が出した条件は、学生時代のように「5人でまたバンドをやること」。晴れて40歳になって初めて同じ病院で働くことになった5人は、忙しい仕事の合間にバンドの練習を再開し、さらなる友情を深めていきます。
おせっかい気質、あいさつ代わりの「ご飯、食べた？」、孤食を嫌って大勢で食事をする文化、泣くときは人目もはばからず大声で泣くなど、本作には韓国のいいところがギッシリ詰まっています。毎話視聴後、余韻で心がじんわり温まる感じがなんとも心地よく、完走後は恋しくてすぐに2周目に行きたくなります。
生きるか死ぬかをスリリングに描く、いわゆる” 医療もの”とは一線を画し、あくまでも5人の中堅医師とその周囲の人々の日常を丁寧にほのぼのと描き、韓国では最高視聴率は最終回が14.1％で、2020年のケーブルテレビ最高視聴率で第4位（1位は『夫婦の世界』、2位は『愛の不時着』、3位は『梨泰院クラス』）になりました。
大病院の理事長を務める父親の死、彼氏の浮気、遠距離夫婦の破綻、父親の愛人の妊娠など、5人の毎日はそれなりに波乱万丈ですが、私生活でつらいことがあっても、プロフェッショナルな彼らは、それらを決して仕事に持ち込みません。
仕事以外の様子からレジデントやナースに「クマ」とあだ名をつけられている、冴えない産婦人科医ソッキョンも、医者スイッチが入ったときのキリリとした目は本当にかっこよく、敏腕産婦人科医に大変身する姿が私は大好きでした。
5人の医師は「1999年にソウル大学医学部に入学した同期」という設定なので、韓国では「99’s（ククズ）」と呼ばれ、愛されています。
「制作陣への信頼から、台本も読まず、共演が誰かも聞かずに出演を決めた」というチョ・ジョンソク（40歳）演じるイクジュンは、肝胆膵外科助教授でシングルファーザー。
ソウル大学医学部を首席で入学・卒業し、勉強も手術も歌も遊びも、できないことがない万能タイプ。彼以外のイクジュンは想像できないほど、役柄にピタリとはまっています。第1話の初登場シーンでは、ダースベイダーのヘルメットをかぶって緊急手術をこなすなど、出ているだけで面白い、圧倒的な存在感を放っています。
ユ・ヨンソク（37才）が演じるのは、心優しくてちょっと繊細な小児科医ジョンウォン。優しい性格で大の子ども好き。診察も患者の両親へのケアも丁寧なため、敬虔なカトリック信者なのに「仏」というユニークなニックネームを持っています。
5人の中で紅一点の脳神経外科医ソンファを演じるチョン・ミド（38才）は、本作がドラマ初主演ながら、ミュージカル界では有名な実力派。決して美人なタイプではないのですが、透明感にあふれ、とにかくチャーミング。演技も抜群に安定しています。
『愛の不時着』で、1話の冒頭に出てくるユン・セリの元彼役を演じたチョン・ギョンホ（37歳）は、本作では、常にクールで手術の腕は確かな胸部外科医・ジュンワン役を演じています。
キム・デミョン（40歳）演じる社会性のない産婦人科医ソッキョンは、繊細で自他共に認めるマザコンですが、マザコンになったのには切なく悲しい理由があるのです。
愛すべき人間的な魅力にあふれている5人の医師を、生き生きと演じる俳優たちの演技は本当に素晴らしく、何気ない食事のシーンでは、彼らが過ごした20年の月日に思いをはせることができます。
かつてこんなにサブキャストが充実したドラマはなかったのではないかと言えるくらい、有名、無名な俳優たちの演技と個性が光りまくっている本作。
小児科医ジョンウォンの母親を演じるのは、“韓流の母” キム・ヘスク。『冬のソナタ』でのチェ・ジウ演じるヒロインの母親役をはじめ、主演の母親役を数多く演じる“国民の母”です。ジョンウォンの母親役も、家族に不幸が訪れても気丈に振る舞い、いつも人の世話を焼きながら、なんだかとっても楽しそう。こちらまで幸せな気分になれるのです。
イクジュンの息子、ウジュを演じた子役・キム・ジュンくんは、短くパッツンとそろえられた前髪と愛嬌のある顔つきが、「ちびノリダー」を彷彿とさせます。父親役のチョ・ジョンソクとの息の合ったリアルな演技から、ファンになる人が続出したそう。
さらに本作には、ざっと数えただけで『愛の不時着』出演者が4人も出ています。前述のチョン・ギョンホ、ヒロインを殺そうとした次兄は善良な弁護士に、北朝鮮のおばちゃんは今回もアクの強い入院患者に、セリとジョンヒョクが国境で別れるシーンに立ち会ったイケメン国家警察官は、ソンファの元彼のドクター役を演じています。
そしてこれも制作側の意図とされていますが、脇を固めるキャストたちは、これまであまり馴染みのない俳優たちばかり。にも関わらず演技がうますぎて、余韻がすごいのです。それぞれが人生を不器用に一生懸命に生きながら、置かれた場所で懸命に花を咲かせようとしている姿は、「人生っていいな、一生懸命生きるっていいな」と思わずにはいられません。
序盤は恋愛の要素が少なくて、ヒューマン路線1本かと思いきや、中盤以降は、誰と誰がカップルになるのかが混迷を極め、“ラブライン探し”の謎解きが楽しくなっていきます。
『応答せよ』シリーズでも、ヒロインが誰と結婚するのかが最終話まで明かされず、「旦那探し」の謎解きが人気でした。
今回もヒロイン・ソンファの恋の相手、恋と友情に揺れるイクジュンなど5人の恋模様に加え、周辺人物たちのライブラインがラストにかけて一気に明らかになり、すっきりとしていきます。
韓国ドラマのOST（オリジナルサウンドトラック）の素晴らしさは何度もお伝えしていますが、バンドを組む医師5人組の歌がうますぎて、今回も見どころに入れないわけにはいきません。
5人が毎回披露する楽曲は、韓国人にとって懐かしの青春ソングそのものなんだそう。私たち日本人が聴いてもどこか懐かしさを感じることができ、ドラマの世界観をより深めてくれる力を持っています。
「昔のバンド音楽って、こうだったよね」というノスタルジックなナンバーから、隣にいる人と肩を組んで体を左右にユッサユッサ揺らしながら聴きたくなるような、コテコテのラブソングもまた心地いいんです。
チョ・ジョンソクが甘い声で繊細な歌声を披露した『アロハ』は、公開と同時に韓国の主要音楽配信チャートで上位圏にランクイン、YouTube累積再生回数1億回を突破しました。
劇中では音痴役だった、ミュージカル女優チョン・ミドが透明感のある歌声で歌い上げた、『愛することになると思った』も公開するや音楽配信チャートで1位を獲得し、放送当時から終了後まで、本作のOSTの曲が複数同時にランクインする社会現象を巻き起こしました。
『賢い医師生活』には強い中毒性があり、見終わったあとのロスがいつまでも続きます。ですが、本作は俳優たちが珍しいシーズン制の契約をしていて、シーズン２ありきのエンディングになっています。今年の6月17日には、日本でもシーズン2の配信開始が決まっているので、ロスに泣くファンにはうれしい限り！
心の掃除をしたいとき、あとひと息頑張らなきゃいけないとき、本作を見れば、「平凡な毎日だけど、明日も頑張ろう！」と思える勇気をもらえるはずです。
Netflixオリジナルシリーズ『賢い医師生活』シーズン１：独占配信中、シーズン2： 6月17日(木)より独占配信開始
2020年／全12話
※ 商品情報は2021年6月現在のものです。
『冬のソナタ』の時代から16年、K-POP、韓国ドラマを追いかけるアラフィフ・オタク記者。女性週刊誌やエンタメ誌を中心に執筆し、取材やプライベートで渡韓回数は100回超え。韓国の食や文化についても発信中。2018年に韓国の名門・梨花女子大学に短期語学留学し、人生2度目の女子大生を経験。twitter.com/t7joshi
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