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【大塚寧々 ネネノクラシ#1】5年続ける太極拳、きっかけは母の驚異の快復

女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」がスタート。第1回は、「太極拳」について。

大塚寧々
撮影/LUCKMAN
写真2枚

* * *

太極拳を始めてから、5年くらいになる。今では、リビングで簡単な動きをやったり、庭で剣を使う32式をやったりしている。まさか自分が太極拳をやるとは思っていなかった。

出会いは、夫と息子、義父、母も一緒に家族五人で香港へ旅行に行ったときだった。

少し心配だったのは母のことだ。母は、その少し前に腰を圧迫骨折していて、それがやっと治ってきたものの、歩くにはまだ杖が欠かせないという状態だったからだ。

私は旅行では朝はゆっくりしたいのだが、母は普段から夕方6時くらいには寝て午前2時くらいに起きる人なので、時間をもてあまし、早朝、一人で杖をつきながらホテルの太極拳教室に行ったみたいだった。楽しかったようで朝から興奮して、

「すごいの! たった一回やっただけなのに股のところから何か熱い物がドドーっと流れて足が軽くなった!」と大喜びだった。多分滞っていた血液が流れたのだろう。

翌朝、「一緒に行かない?」と誘われたが、少しでも多く寝て、ゆっくりしたい私は丁重にお断りした。

ホテルへ帰る途中、急に降り出した雨

香港では飲茶を食べに行ったり、観光したりして家族旅行を満喫した。

そんな滞在中のある日のこと。外で朝食を食べてホテルへ帰る途中、急に雨が降り出してきた。息子はともかく高齢の義父、母が雨に濡れて風邪でもひいたら大変だ! 夫と私は焦った。傘も持っていなかったし、ホテルのエントランスまであと50メートルほどだが、雨が降っているとやけに遠く感じる。それも坂道。雨宿りする場所もない。

太極拳用の剣
撮影/大塚寧々
写真2枚

雨ですべって転ばないように注意して義父、母の手を支えながら急ごうと夫と私が瞬時に目で確認し合った時…すでに母はいなかった。

杖をついてしか歩けなかった人が、杖を使わずにホテルのエントランスまで一人小走りしていたのだ。

今でもあの時の光景は、まるで映画やドラマの1シーンのように私の頭の中に鮮明に残っている。

しかし、不思議なのはなぜか、その光景が数十メートルの高さからの引きの映像で、私もそこにいることだ。つまり俯瞰で見た映像になっている。義父、夫、息子、私が雨が降っているなか、ただただ立ち尽くしている姿である。

まあそれはともかく、残された私たちは雨が降っているのも忘れて爆笑していた。太極拳すごい!と心底驚かされた。

そんなわけで、翌日、私は太極拳教室に参加していた。朝が弱い私が、目覚ましをかけである。

文・大塚寧々(おおつか・ねね)

1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。

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