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空き家になった自宅を活用して家賃収入「マイホーム借上げ制度」のメリットとデメリット

人生100年時代と言われる時代だからこそ、老後の資金作りや住まいをどうするかは慎重に検討する必要があります。

会話する夫婦
現役世代も老後資金のことを考えておきたい(Ph/Getty Images)
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定年後は夫婦2人の生活に合わせてコンパクトな住宅へ住み替え、自宅を売却して老後の生活資金にしようとする人もいるでしょう。一方で、自宅を売らずに安定収入を得る「マイホーム借上げ制度」や自宅を担保に老後資金の融資を受ける「リバースモーゲージ」を利用する方法もあります。

今回は、老後の資金調達手段である「マイホーム借上げ制度」「リバースモーゲージ」の仕組みについて、特定社会保険労務士の小泉正典さんの監修のもと紹介します。

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住み替えるので空き家を有効活用したい「マイホーム借上げ制度」

自宅を活用した老後資金作りのひとつに、移住・住みかえ支援機構(JTI)と自治体が連携して行う「マイホーム借上げ制度」があります。JTIは、国のサポートを得て「マイホーム借上げ制度」の業務を行っている一般社団法人です。50歳以上の人の自宅を借上げて、子育て世代などの家を借りたい人に転貸し、安定した賃料収入を保証する仕組みです。

借上げ制度には、「期間指定型」と「終身型」の2タイプがあります。

住宅
Ph/Getty Images
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期間指定型

あらかじめ制度利用者(オーナー)が指定した期間のみ借上げます。原則3年間の定期借家契約なので、3年後に貸していた自宅に戻ることもできるし、再契約して長く住んでもらうことも可能です。賃料は終身型よりも低くなります。また10年以上長期で貸す場合は、耐震工事費等をJTIが負担する「おまかせ借上げ制度」も利用できます。

終身型

利用者が亡くなるまで自宅を貸すことができます。亡くなったら、3年契約の満了時に入居者に退去してもらい、自宅は相続することが可能です。

制度を利用できる対象者は?

制度を利用できる人は、50歳以上で、住み替えなどで持ち家やマンションが空き家になる人。または、海外に居住している50歳以上で、日本に住宅がある人が対象となります。利用するにはJTIに申請をして会員登録し、カウンセリングと住居の診断を受ける必要があります。

メリット・デメリット

通常の賃貸では空室の度に入居者を募集する必要があり、入居者がいない時期は家賃が入らないので収入が不安定になりますが、マイホーム借上げ制度を利用すれば、最初に入居者が決まった後は空室になっても賃料がもらえます。空室対策のリフォーム費用もかかりませんし、最初の入居者退去後は空室続きでも85%の賃料保証があるのもメリットです。

ただし賃料は一般相場より約10~20%低くなります。毎月の賃料に、JTI運営費、建物管理費合わせて15%がかかります。入居者が決まれば賃料収入が保障されますが、最初に入居する人がいないとその期間は賃料収入がありません。また、空室時保障賃料の上限額は12万7500円です。メリット、デメリットをよく考えて申し込みましょう。

→「マイホーム借上げ制度」について| 一般社団法人 移住・住みかえ

自宅に住みながら老後資金を増やしたい「リバースモーゲージ」

リバースモーゲージは自宅を担保にして、そこに住み続けながらお金を借りるローンの一種です。一般のローンと異なるのは、契約者は生きている間に利息のみを支払い、借りた元本を返済する必要がない点です。亡くなった場合に自宅を売却して返済にあてるので、自宅に住み続けながら老後資金を得ることができます。

会話している老夫婦
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自治体あるいは社会福祉協議会が実施しているリバースモーゲージを「不動産担保型生活資金」貸付制度といい、土地評価額の70%を上限に融資を受けられます。多くの金融機関でもリバースモーゲージは扱われており、不動産の市場価格の5~7割を上限に融資を受けられることが多いようです。

メリット・デメリット

自宅に住み続けながら老後資金を調達できるのがメリットですが、担保にした自宅は契約者が死亡時に売却して融資金の返済にあてるため、自宅は相続の対象になりません。そのため、契約時に法廷相続人全員の同意を必要とされる場合もあります。

利子は変動金利制であることが多いので、金利の上昇によって月々支払う利子が増えてしまうこともあります。想像以上に長生きした結果、借り入れ残高が融資の上限額を超えてしまうケースもあるので注意が必要です。その場合、超過分を返済しなければならず、予定より早く自宅を手放さなければならなくなることも考えられます。

自宅を活用した老後の資金作りの手段は多様化していますが、起こりうるさまざまなケースを想定し、メリットとデメリットをよく考慮してから決めるようにしましょう。

※手続き内容をわかりやすくお伝えするため、ポイントを絞り編集しています。一部説明を簡略化している点についてはご了承ください。また、令和3年6月1日時点での内容となっています。

監修:特定社会保険労務士・小泉正典さん

小泉さん
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こいずみ・まさのり。特定社会保険労務士。1971年生まれ、栃木県出身。明星大学人文学部経済学科卒。社会保険労務士 小泉事務所 代表、一般社団法人SRアップ21理事長・東京会会長。専門分野は労働・社会保険制度全般および、社員がイキイキと働きやすい職場作りのコンサルティング。監修書に『社会保障一覧表』(アントレックス)、『「届け出」だけでお金がもらえる制度一覧』(三笠書房)など。セミナーや講演も多数行う。https://koizumi-office.jp/

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