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定年退職で受給できるケースも!失業給付金をもらえる条件や手続きを解説

定年退職すると失業給付金をもらうことができないと思っている人がいるかもしれませんが、そんなことはありません。雇用保険の被保険者期間が受給要件を満たしていて、働く意思があるのに就業できない状態であれば、定年による退職でも失業給付を受け取る資格があります。

退職祝いをされて喜んでいる女性
定年退職後でも失業給付金をもらえるケースが(Ph/Getty Images)
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今回は、失業給付制度の基本について、特定社会保険労務士の小泉正典さんの監修のもと紹介します。

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働く意思があれば失業給付金はもらえる!その条件とは?

失業給付金をもらえる条件とは、どんなものがあるのでしょうか。

失業給付金(基本手当)をもらうのに、定年退職か中途退職かは関係ありません。会社員やパート勤務など、雇用保険に加入しており、65歳未満で退職した人は、求職活動をすればハローワークから認定を受け、基本手当を受けることができます。基本的な受給条件は以下の通りです。

失業給付金をもらえる条件

・離職前の2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること
・積極的に就職しようとする意思があること
・いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)があること
・積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在は職業に就いていないこと

失業保険申請書
自己都合か会社都合かによっても条件は異なる(Ph/Getty Images)
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被保険者の期間については、過去に失業給付金などの支給を受けたことがある場合、支給を受けた後の被保険者期間のみが算定の対象になります。また会社都合による退職の場合は、離職日以前の1年間に、被保険者期間が通算6か月以上あれば受給できます。

自己都合か会社都合かの判断は、最終的にハローワークが労使協定や就業規則などから判断します。会社が再雇用制度を用意しているのに定年退職した場合は自己都合となり、雇用の延長を希望したのに継続されなかった場合は会社都合による退職になる可能性も高いでしょう。

妊娠、出産、病気やケガですぐに就職できない、定年退職後休養し、しばらく就職するつもりがないといった場合は、受給期間延長申請を提出しておきましょう。いつでも働ける状況となった場合に、就職活動を行えば受給可能となります。退職後、働く予定、意思がない場合は給付対象になりません。

基本手当の給付を受けられる「受給期間」は?

基本手当の給付を受けられる「受給期間」は原則として離職日翌日から1年。これは、基本手当が給付される期間ではなく、受給できる資格がある期間です。離職日からハローワークへの申請まで期間が空いた場合、「所定給付日数」分の支給を受け終わっていなくても、受給期間の1年を過ぎた分はもらうことができません。

なお、60歳以上65歳未満の定年退職者は、前述の通り、申請すれば最長1年まで受給期間の延長が可能です。

失業給付金をもらうためにすべきことは?手続きの流れ

失業給付金をもらうために準備すべきことを解説します。

勤めていた会社から「雇用保険被保険者証」(【1】)と「離職票」(【2】)を受け取りましょう。【1】は就職時に会社から渡されていることが多いですが、もらっていない場合は確認しましょう。【2】は退職後に発行されるもので、通常は退職から10日~2週間程度で自宅に郵送されます。(給与計算期間の途中で退職した場合は、最後の給与が確定してから離職票申請することもあるため、もう少し時間が掛かることもあります)

就職活動
ハローワークへ(Ph/Getty Images)
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離職票が届いたら、ハローワークに行って手続きしましょう。実際に基本手当をもらえるまで、会社都合の退職なら約1か月、自己都合の退職なら約3~4か月かかります。受給期間を延長する場合は、退職日の翌日から2か月以内にハローワークに申請する必要があります。先に給付申請をしてしまうと受給期間を延長することができないので、気を付けましょう。

最大約34万円の一時給付も!65歳以上が対象の「高年齢求職者給付金」

65歳を超えると、雇用保険の失業給付をもらうことはできません。その代わりに、2017年から65歳以上の人も雇用保険に加入できるようになり、働く意思があるが就業できない場合には「高年齢求職者給付金」が一時金として支給されます。

実際にもらえる金額は、被保険者だった期間で決まります。雇用保険に6か月以上加入していた場合、基本手当(賞与を除く賃金日額の50~80%)の30日分、1年以上加入していた場合、50日分が支払われます。上限の日額は6845円(毎年変動)となり、最大34万円が一時給付されます。

さらに、要件を満たせば65歳以上であっても、教育訓練給付金や介護休業給付金なども受けることができます。65歳以降は老齢基礎年金や老齢厚生年金を受け取る人もいますが高年齢求職者給付金とは併せて受け取ることが可能です。

※手続き内容をわかりやすくお伝えするため、ポイントを絞り編集しています。一部説明を簡略化している点についてはご了承ください。また、令和3年7月22日時点での内容となっています。

◆監修:特定社会保険労務士・小泉正典さん

小泉さん
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こいずみ・まさのり。特定社会保険労務士。1971年生まれ、栃木県出身。明星大学人文学部経済学科卒。社会保険労務士 小泉事務所 代表、一般社団法人SRアップ21理事長・東京会会長。専門分野は労働・社会保険制度全般および、社員がイキイキと働きやすい職場作りのコンサルティング。監修書に『社会保障一覧表』(アントレックス)、『「届け出」だけでお金がもらえる制度一覧』(三笠書房)など。セミナーや講演も多数行う。https://koizumi-office.jp/

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