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【64歳オバ記者 介護のリアル】93歳母の自宅介護を決意「コロナ禍が理由で死ぬまで会えないのは受け入れられない」

バツイチ独身のライター・オバ記者こと野原広子(64歳)が、“アラ還”で感じたニュースな日々を綴る。

茨城の風景
64歳オバ記者が母の介護のために実家へ
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連載260回目となる今回は、93歳「母ちゃん」の介護について。

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今度という今度は覚悟を決めた

18歳で上京して46年。数えきれないほど茨城の実家に帰ったけれど、2泊以上したことってあったかな。ちょこちょこ顔を出して、行けば仏壇にお菓子を置いたり、置かなかったり。たいがいは友達と出かけてしまい家には居つかなかった私。

それが今度という今度は、覚悟を決めたわよ。2か月間入院していた93歳の母ちゃんを実家で介護することにしたの。で、気分を新たにするのために東北新幹線「やまびこ」に乗ってみた。

オバ記者
「やまびこ」で茨城へ
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ワクチン接種、PCR検査「陰性」が必須

東京と茨城の実家は距離にすれば90kmだけど、人口もコロナ感染者数もケタ違い。母ちゃんのケアをしてくれるケアマネージャーさんや訪問看護師さん、介護ヘルパーさんと会うには、2度のワクチン接種を終えて2週間以上過ぎていることと、直前のPCR検査が必要とのこと。

ワクチン接種は、64歳なのに高齢者(2022年3月で65歳になるため)になったおかげで、6月末には2度目が終わり、万全の構え。だけどPCR検査は母ちゃんの退院日が決まるまでできなくて、直前になって調べたら、正規のものは1万5000円以上と高額で、しかも結果が出るまで3日以上かかる。

市販のキットで自分で唾液や鼻水で検査すると5000円くらい。あまりに価格差が激しいので、かかりつけのT医師に電話をすると、「地域によって違うでしょうけど、たいがいは市販のいちばん安い検査キットでも大丈夫だと思いますよ」だって。

「こんなに状態いいことはない」?

それはともかく、意識障害を起こして2か月前に入院していた母ちゃんと病院で面談したときのショックといったら、まるで予測なしに”怪奇映画”を見せられたみたい。

本人とよく似てるだけで空気を抜かれてしまった人みたい。私を見ても反応しない。どんなに寂しい思いをしたのか、眉間には今まで見たことがないほどの縦ジワが刻みこまれていた。

介護タクシー
介護タクシーに乗ることに
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「母ちゃん、私だよ。分かっか?」と言っても、焦点の合わない目をかすかに動かしたかどうか。それを「最近、こんなに状態が良かったことはなかったですよ~」と担当の看護師さんが目を輝かせているんだよ。

「退院だよ~」と伝えたら「手をひらひらさせてくれました~」たと言うけど、ホントかいな。そうこうしている間に頼んでおいた介護タクシーが来て、母ちゃんは車椅子ごとリフトに乗って車の中へ。

「いい女だなや~」にも笑わない母ちゃん

思えば母ちゃんにとって久々のシャバだ。目に映る稲の丈もずいぶん高くなっているんだろうなぁと思って顔を見ると、眩しそうに顔をしかめている。私のサングラスをかけて、「目、ラクか?」と聞いたら、はっきりと頷いたけど、あとは何を話しかけてもウンともスンとも。

オバ記者の実家近くの風景
母に久しぶりの実家はどう映ったのか?
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スマホで本人の写真を見せて「いい女だなや~」と言って笑わない母ちゃんは母ちゃんじゃないよ。

さらにさらに、夜になって私と弟夫婦と3人がかりで初めてシモの世話をしたら、「お母ちゃ~〜ん。お父ちゃ~ん。さちこお~」と絶叫。「お父ちゃん」は亡き父のことで、「さちこ」はものすごくお世話になっている親戚のおばさんだけど、「お母ちゃん」って誰よ。

自分自身を「お母ちゃん」と呼んだことはあったけれど、実母は13歳の時に亡くなっていて、人には「お梅さん」と呼んでいたんだよね。母ちゃんの意識障害はどこまですすんでいるのか。

自宅での介護を決めたワケ

今回、老母を実家で介護するというと、「親孝行ですね」と言われるけど、いやいやいや。コロナ禍でなかったら死ぬまで病院にお預けしていたわよ。そして気ままに行きたいときに病院に行って、「バアさん、ばいば~い」と言って別れたと思う。そういうシステムに疑問を持ったことなんかないもの。

だけどコロナ禍が理由で、今、生きているのに死ぬまで会えないって、これは受け入れられなかった。

とはいえ、退院前に「猫1匹しか看取ったことがないんで、何ができてできないかもわからないんですけど」と言った私が、よほど心細い顔をしていたのかしら。

「大丈夫ですよ。もし無理ならすぐに電話してください。また入院すればいいんですから」

芥川龍之介似のU医師はそう言って送り出してくれた。

翌朝、さっそく訪問看護師3人とケアマネジャーのUさんが実家の14畳の和室に集結。プロの仕事ぶりを見せてくれた。この人たちがついてくれたら私でもなんとかなるかもな。が、介護はそんなに甘いもんじゃない、という話はまた改めて。

◆ライター・オバ記者(野原広子)

オバ記者イラスト
オバ記者ことライターの野原広子
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1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。同誌で、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。一昨年、7か月で11kgの減量を達成。

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