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犬の病死で最も多いがん、早期発見や治療のために飼い主にできることは?

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犬は5頭に1頭が悪性腫瘍(がん)で亡くなってしまうそう。愛犬のがん治療や早期発見のために、飼い主できることは?(Ph/Photo AC)
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犬は5頭に1 頭が悪性腫瘍(がん)で亡くなります。人間のがんも予防や早期発見の方法、治療方法が現在も発展途上ですが、愛犬のがん治療や早期発見のために、飼い主さんにはどんなことができるでしょうか。獣医師の山本昌彦さんにお話をうかがいました。

早期発見のために半年に1回は健康診断を

犬の死亡原因で最も多いのは、がんだといいます。犬は残念ながら交通事故の犠牲になるケースも少なくないですし、子犬の間は感染症で命を落とすケースも多いですが、全体ではがん(腫瘍疾患)が死因の11.6%を占め、第1位です(アニコム家庭どうぶつ白書2016)。

がんには今のところ、こうすれば罹患リスクが劇的に下がるといった明確な予防方法がありません。ただし、がんにかかった場合に早期に発見する方法はあります。山本さんによれば、定期的に健康診断を受けることが大切だということです。

「私たち人間の場合は、健康診断はだいたい年に1回ですよね。ただ、犬は1年に人間で言えば4歳分ほど年をとります。1年に1回の健診だと、人間でいえば4年に1回受けているぐらいの低頻度になってしまう。ですので、半年に1回以上の健診ができればよいかなと思います。

定期健診を始める時期は、避妊去勢の適齢期である生後6か月頃から1歳頃がいいですね。子犬の間は予防接種なども頻繁で、たびたび動物病院を訪れるはずですが、徐々に病院へ行く機会が減ってくることもありますので、健診を習慣化して愛犬の健康を見守りましょう」(山本さん・以下同)

普段からのスキンシップも早期発見に役立つ

健康診断は、内容によって費用も数千円から数万円までさまざまです。

「一般的な健診では、一般的な診察(視診、触診、聴診)、血液検査、尿検査などが受けられると思います。そうした基本的な検査も大切ですが、さらに年に1回は、レントゲンやエコーといった画像検査も受けておくと、よいかもしれません」

また、健康診断以外にも、早期にがんを見つける方法があるといいます。

「飼い主さんが普段からしっかりと愛犬とスキンシップを取って、変化に気づいてあげることが大切です。急に痩せた、毛づやが悪くなった、元気がないなど、見ただけでわかることもあるでしょうし、体を触るとわかることがさらにたくさんあります。がんに限らず、その他の病気の早期発見にもつながります。

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愛犬とスキンシップを取って、変化に気づいて(Ph/Photo AC)
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特に、犬のがんはメラノーマ(悪性黒色腫)や肥満細胞腫、乳腺腫瘍など体の表面近くにできるものも多いので、ポコッとしたものが指に当たったりして、しこり(腫瘍)に気づければ、早期治療につながります」

なお、腫瘍疾患にかかりやすい傾向のある犬種は、ある程度明らかになっていて「ゴールデンレトリバーやラブラドルレトリバーは皮膚や口腔内、消化器、リンパ組織や造血組織など全般に、他の犬種より腫瘍ができやすいという統計があります」とのこと。

「他にも、ミニチュアダックスフントは他の犬種よりも脂肪腫や乳腺腫瘍にかかりやすい、パグやジャックラッセルテリアは肥満細胞腫にかかりやすい、フレンチブルドッグには脳腫瘍が多いといったことがわかっています」

治療法は手術や抗がん剤などから“最適”を探る

がんの治療方法には、外科手術、抗がん剤治療(化学療法)、放射線治療などがあり、単独で実施することもありますが、複数の治療方法を組み合わせることもあります。

外科手術は、がんを完全に摘出できれば短い時間で大きな治療効果が得られて、根治も望めますが、麻酔による事故や術後合併症のリスクがあります。また、手術によってがんを切除できても、がん細胞が血液やリンパを介して他の臓器などに転移しているケースもあります。転移していた場合には、数カ月~数年後に再発してしまうこともあります。

抗がん剤治療は、外科手術と合わせて実施したり、リンパ腫や血液のがん、外科手術を適用しにくいがんなどに対し実施します。ただし、抗がん剤治療単体で根治できるがんは少ないのも事実です。また、よく知られているように吐き気や下痢、貧血や白血球減少などの副作用が起きることもあります。

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治療法は手術や抗がん剤などから“最適”を探って(Ph/GettyImages)
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放射線治療は、手術で除去しにくいがんの細胞を放射線の照射で死滅させられる可能性があります。ただし国内で行える施設がまだ少なく、費用も高額で、麻酔も必要なのでそのリスクもあります。

「アプローチの異なる治療法がそろっていて、それぞれに強みとリスクやデメリットがあります。また、がんに対する積極的な治療は実施せず、がんによって起こっている症状(食欲不振や吐き気など)の治療のみをするというのも、しっかりとした治療のひとつです。

常にこれが最善という治療法があるわけではなくて、がんの種類や進行の度合いなどによって、最適な治療法は変わってきます。獣医さんとよく相談して選んでいただきたいと思います」

愛犬ががんと診断されたとき、飼い主がすべきこと

また、がんと診断された時点である程度、がんが進行していた場合には、病気の根治を目指すのか、苦痛を取り除くのか、一緒にいる時間を長く取ることを優先するのか、治療方法の前に治療の方向性を決めなければいけません。

「ご家庭でよく話し合うことが大切です。ひと昔前までは、<がん=治らない>というイメージもあったかと思いますが、今は実施できる治療方法も増え、根治が目指せることもありますので、悲観しないことが大切です。治療方法や予後について、獣医師としっかり相談し、前向きに考えていきましょう。

その際、具体的な方法や費用、期待できる効果、起こりうる副作用などについて話をしてもらい、その内容をもとに、ご家族で話し合ってほしいと思います」

◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん

山本
獣医師・山本昌彦さん
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獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/

取材・文/赤坂麻実

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