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【64歳オバ記者 介護のリアル】「お正月は寂しくないのか?」93歳母ちゃんの質問に困惑した理由

銀座の風景写真
年末年始は「母ちゃん」のいないひとりの時間を過ごしたオバ記者
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ライター歴43年のベテラン、オバ記者こと野原広子(64歳)が、今年8月から4か月間、茨城の実家で93歳「母ちゃん」の介護を経験しました。そして、母ちゃんは冬の間は元々いた施設に再び入所。オバ記者は母ちゃんのいない年末年始をどう迎えたのでしょうか?

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お正月や年末年始が苦手な理由

日本列島津々浦々、「あけましておめでとう」コールで満ち満ちている。「おめでとう」と何の引っかかりもなく言い合えることを、「幸せ」っていうのよねー。と、苦いお正月を何度か体験すると、そんなことを思うんだわ。

オバ記者
お正月の思い出…「うーん、何もないや」
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で、そう言った後でナンだけど、あのー、お正月って好きですか? 年の暮れとか、クリスマスとか、何なら年中行事全般ってどうなんでしょう。新年早々、火の中に飛び込むようなことを言いますが、私はもんのすごく苦手。てか、それを楽しむような心豊かな家庭に育たなかったせいで、生まれながらに縁がなかったのね。

結婚していた4年間は、長男の嫁という名の“下女”。年末年始は姑に命じられるまま、朝から晩までジャージー姿でおせちの用意にお餅番。思えばあれが私にとって唯一の“人並みの正月”だったから、何か良きことのカケラでもないかしらと今、一生懸命思い出しているけど…だめだ、何にもないや。

早い話が、人並みが合わないってか、何かの加減でそのまねごとをするとどうにも居心地が悪いの。で、どんなことがしっくりくるかというと風来坊。

デパートで見つけた高級「大間の本マグロ」

風来坊だって年末は新宿伊勢丹の地下食品、鮮魚コーナーを訪ねます。だけど目的は買い物ではなく、大間の本マグロ見学。まぁ見てくださいな。消費税を乗せたらひとさく1万6000円と1万8000円ですぜ。バブル期には、ひとブロック6万円の価格がついたのを見たことがあります。

マグロのさしみ
都内のデパ地下に陳列されている大間の本マグロ
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この、食品とは思えない値段を時に怒り、時に働く励みにしてン10年。実際は買おうかどうか、迷ったことすらなく、ものすごく運の良い日にだけ手に入るアラに小踊りよ。アラはステーキにするととんでもなく旨いんだけど一生に一度くらいは端っこではなく、堂々の正規品を手に入れたいな~と、馬鹿な夢を描きながら、秋葉原のマンションに帰って来る。

刺身盛り合わせ
「いつかアラの正規品を食べたいな」妄想が膨らむ
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「ヒロコはひとりになっちまーべな」と母ちゃん…

そんなことを話すと、「でもクリスマスとか、年末、お正月はひとりでどうしている? 寂しくないのか?」と、ド直球で聞いてくる人がいるんだわ。その中のひとりが、93歳の私の母親よ。

オバ記者の「母ちゃん」
93歳になっても娘の心配をする「母ちゃん」
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昨年末、冬は実家が寒くて心配だから施設に入ってと言ったら「ヒロコはどうすんで? ひとりになっちまーべな」って、とんでもないことを言い出したの。「あんたの介護をこれ以上したくないんだよ!」と言いたいのを、グッと堪えたわよ。

「ひとりが何よりの好物で、何なら半月くらい蟄居(ちっきょ)したい」と言ったところで「哀れな初老娘がムリしちゃって」という目で見られるのがオチ。

シモの世話をしている限りはストレスが爆発

「フン」と指先を動かしたらティッシュ。アゴをつんとあげたら醤油を取れ。4か月、朝から晩までずっと一緒にいたら、目の動きひとつで言いたいことがわかってきて、それがまた腹立ちにつながるという悪循環。しょせん、シモの世話をしている限りは、ストレスがたまって爆発するのよね。

オバ記者の「母ちゃん」
シモの世話をしている限りイライラは止まらない
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私はこの婆さまのことをずいぶんと理解したけど、婆さまは私が何を考えてるか、まったくわからないみたい

危篤状態から復活した母ちゃん
退院したときはグッタリしていた母ちゃん。自宅での生活で”復活”
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