エンタメ・韓流

神尾楓珠が「今もっとも将来を嘱望される俳優」と言われる所以 新作映画で見せた絶妙な「表情のさじ加減」

神尾楓珠の柔軟性の高さと作品ごとに見せる表情の変わりよう

そんな神尾さんというと、いまもっとも将来を嘱望される若手俳優の一人でしょう。同クールに3作品ものテレビドラマに出演し、そのうちの一つ『17才の帝国』(NHK総合)では日本が誇る若手からベテランまでの俳優陣を主演として率いてみせました。

同作でヒロインを演じた山田杏奈さんとの共演作『彼女が好きなものは』(2021年)で映画初主演を務め、年の離れた男女の奇妙な関係を描いたアート系スリラー映画『親密な他人』、実在した若者の生涯を体現した青春映画『20歳のソウル』、そして今作と、この2022年は主演作の公開が相次いでいます。

さらに秋季には劇団☆新感線の『薔薇とサムライ2 海賊女王の帰還』にも出演するようで、エンタメ超大作から良質な小品にまで溶け込むことができるその柔軟性の高さと、作品ごとに見せる表情の変わりようが彼の魅力です。

『恋は光』場面写真
(C)秋★枝/集英社・2022 映画「恋は光」製作委員会
写真10枚

俳優として新たな扉を開いた

神尾さんは、今作『恋は光』でも俳優としてまた新たな扉を開いたように思います。西条は感情の起伏の浅い人物ですが、これをただ淡々と演じるだけでは観客は恐らく飽きる。

平板に思える感情の波にもやはり起伏が必要です。このさじ加減の上手さについては先述した通りで、神尾さんの表現は極めて繊細でありながら的確。3人のヒロインと織り成すカルテットあってのことでもありますが、観客の興味・関心を惹き続けるという、主役に必要な技術を持った俳優なのだと再認識させられました。

『恋は光』場面写真
(C)秋★枝/集英社・2022 映画「恋は光」製作委員会
写真10枚

この物語はやがて西条にとっての「恋って何だろう?」という問いの答えへと向かいます。彼にとって“知識”ではなく“経験”が増えるということで、これは人生における大きな変化。当然、神尾さんの演技そのものにも大きな変化が生まれる。

この変化は単なる恋愛感情への気づきだけでなく、“人を想うことの尊さ”を力強くもそっと訴えかけてきます。最初はとっつきにくい“神尾楓珠=西条”。そんな“彼”が遠回りをしつつも最終的には、私たちにとって当たり前過ぎて忘れてしまいがちな大切なことに気づかせてくれるのです。

◆文筆家・折田侑駿さん

文筆家・折田侑駿さん
文筆家・折田侑駿さん
写真10枚

1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。https://twitter.com/yshun

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