エンタメ・韓流

森高、ジュリー、河島英五ほか…ほろ酔いドロ酔い、涙がツマミ。歌とお酒の関係はやっぱりほろ苦い

アルコール度数150%くらいに感じる『スローなブギにしてくれ』

何、そういえば洋酒が足りない? ウイスキーならCMでおなじみの石川さゆりさんの『ウイスキーが、お好きでしょ』で飲むのもいいし、恋の酒なら「テキーラ」だと『恋のメキシカンロック』で橋幸夫さんが歌っている。木の実ナナさん&五木ひろしさんは『居酒屋』で「ダブルのバーボン」を飲んでいる。さすが大御所、居酒屋でもバーボン。選ぶものが違う!

記事上の飲み会であっても、オシャレに決めたいならカクテルも外せない。岡村靖幸さんの『カルアミルク』は、ディスコやファミコンなど1990年の空気まで味わえる濃厚な1曲だ。矢沢永吉さんの『Dry Martini』も最高に粋。歌詞にまったくドライ・マティーニが出てこず、愛する女性への熱い想いがひたすら注がれていて、聴くだけでクラクラする!! この曲と、強いジンのせいにして「おまえが欲しい」と言ってしまう『スローなブギにしてくれ(I want you)』(南佳孝)の2曲は、アルコール度数150%くらいありそうなので注意!

『失恋レストラン』でNHK紅白出場を果たした清水健太郎(写真は1977年、Ph/SHOGAKUKAN)
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水割りを「涙の数だけください」とリクエストされたバーテンダー

さて、こんなオシャレな流れで恐縮だが、少し酔い覚ましに私の思い出話を。昔「私のイメージのカクテルを作ってくれませんか」と勢いで言ったことがある。ひゃー! 笑ってよし、笑ってよし! しかも頼んだものの自分が恥ずかしくなり、結局テンパってどんなカクテルが出てきたかまったく覚えていない。せっかくのバーテンダーさんの瞬間クリエイティブ、もっと楽しみ、味わえばよかった。後悔しきりである。

歌の世界では小さなバーが多いので、バーテンダーとマスターが兼任しているケースがほとんどで、やはり客の注文がなかなか大変である。堀江淳さんの『メモリーグラス』では水割りを「涙の数だけください」と注文されている。「そのくらいにしときな……」と静かにチェイサーを渡したのではなかろうか、と私は勝手に想像している。

清水健太郎の名曲『失恋レストラン』では、マスターは1番で涙を忘れるカクテルを注文され、2番で心の痛みを忘れるラプソディーを歌ってくれと頼まれている。ここのマスターはとても甘く素晴らしい歌声であることが想像できるが、いやはやあらゆる方向で客の望みを叶えるのは大変なはず。「ありがたいのは常連客、無茶を言うのも常連客」。それはリアルな現実社会も同じだろう。

さて、記事内の飲み会ツアーはいったんここでお開きを。けれどお酒の歌は名曲が山ほどあるので、まだまだ歌に酔いたい方、心のちょうちんは灯したままでOKだ。

ただし、曲の中だからといって飲み過ぎは要注意。忘れていた切ない想い出がぶり返す恐れがあるから……。

◆ライター・田中稲

田中稲
ライター・田中稲さん
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1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka

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