エンタメ・韓流

「終活にはあまり興味がない」71歳の現役ドラマスタイリスト西ゆり子さんから学ぶ“攻めの姿勢”の生き方

「派手な服なら西ゆり子」と評判に

雑誌や広告の仕事に明け暮れた20代を経て、30代で西さんは次のステージとなるテレビの世界に軸足を移した。おニャン子クラブのステージ衣装をスタイリングしたり、『11PM』のMC・井森美幸、当時大人気だった山田邦子の衣装や、奇抜なファッションで話題になった『なるほど!ザ・ワールド』の楠田枝里子の衣装も西さんが担当。視聴者がワクワクするような“非日常的”なスタイリングは「派手な服なら西ゆり子」と業界でも評判となる。

黒いカーディガンを肩にかけた西さん
西さんは即断即決の「はい!」で人生を切り拓いてきた
写真8枚

そうして40代になった西さんが「天職」であるドラマスタイリストの道を歩み始めたのも、即断即決の「はい!」がきっかけだった。

「私はまず『はい!』って言うんですよ。子供の頃から誰かに何か言われたら『はい!』と返事をするようにいわれてた癖ね。だから、バラエティ番組で一緒に仕事をしたプロデューサーがドラマ班に異動して『西さん、ドラマもやって』といわれたときも『はい!』と答えました」

困難な課題やトラブルも楽しむスタンスで乗り越える

「大変であればあるほど、燃える性格」だという西さんにとって、ドラマの現場での仕事は天職だという。

「ドラマスタイリストというのは、役柄を衣装で表現するのが仕事。とはいえ演出家のイメージにぴったりで、作品の雰囲気に溶け込んで、なおかつ女優の希望に合った服を探すのはとても大変。でも、そうやって選んだ服をまとった役者が、役になりきり、迫真の演技を見せてくれる瞬間がたまらない。そこに一番のやりがいを感じます。ドラマスタイリストは私にとって最高に面白い仕事です」

ハイブランドの衣装の借用に成功

西さんが仕事の醍醐味を初めて知ったのは、1997年に制作された『ギフト』の現場。当時はテレビドラマに外部のスタイリストが入るのはめずらしく、予算も潤沢とはいえない。そんな時代に「思いっきりおしゃれにしていい」と制作側からお墨付きをもらった西さんは水を得た魚のように働き、ハイブランドの衣装の借用にも成功する。

「それまで海外のハイブランドが、日本のドラマに服を貸してくれた例は多分なかったと思うんだけど、どうしても女刑事役の倍賞美津子さんに、マックスマーラのスーツを着せたくて。無理を承知で直談判しました。担当者は戸惑っていましたが、あまりの熱弁に参ってしまったのか、OKをもらうことができて。放送が始まったら、このスタイリングが反響を呼んで、ブランド側もよろこんでくださったの」

脳みそをフル回転して問題を解決することが快感

それ以来、ディオールやケンゾーなど国内外のハイブランドがドラマや映画に服や小物を貸してくれるようになったという。さらに西さんは仕事の面白さについて、こう語る。

斜め上を見る西ゆり子さん
仕事の面白さについて語る西さん
写真8枚

「用意していた小物がなくなってしまったり、演出家の思いつきで急に服のスペアが必要になったり、ドラマの仕事は思いがけないトラブルが多く、ドキドキの連続です。ただ、私の場合トラブルが嫌いじゃないんです。アクシデントが起こったら、めそめそと落ち込んでいる場合じゃない。

次の手を考えることが先! “そう来たか。じゃあこうしたらどうだろう”と、難しいパズルを解くときのように脳みそをフル回転して問題を解決することに快感を覚える性格なんです」

仕事につきもののトラブルも忌避せず前向きに向き合うメンタルや機知を発揮していることが、いまだに西さんが現役で活躍している理由と言えるだろう。

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