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草なぎ剛が体現する“生活者” 映画『サバカン SABAKAN』での演技と語りで懐かしい景色に誘う

作品の看板を背負うことのできる俳優・草なぎ剛

草なぎさんといえば、言わずとしれた国民的アイドルグループの元メンバーの1人ですが、同時に演技派俳優としても知られている存在。『黄泉がえり』(2003年)、1938年公開の清水宏監督作『按摩と女』のリメイク作品である『山のあなた 徳市の恋』(2008年)や、人気アニメーション『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』(2012年)を原案に実写化した『BALLAD 名もなき恋のうた』(2009年)などで主演を務めてきました。多くのドラマ作品でも主演を務め、彼の代表作は観客それぞれによって異なることでしょう。

映画『サバカン SABAKAN』場面写真
(C)2022 SABAKAN Film Partners
写真15枚

近年は『台風家族』(2019年)や『ミッドナイトスワン』(2020年)に主演し、特に後者は多方面で大きな話題となりました。つまり草なぎさんとは、作品の看板を背負うことのできる俳優だというわけです。いまさら言うまでもないことかもしれません。

草なぎ剛が見せる“生活者”としての一面

とはいえ、本作の主人公は子どもたちです。実際のところ、草なぎさんの姿がスクリーンに映し出されるのは冒頭とラストのみ。時間でいえば想像以上に短いものです。しかし短い出番だからこそ、大人になった久田役は、誰がどのように演じるのかが非常に重要。ともするとこのポジションは、せっかくの子どもたちの好演を壊しかねないものだと思います。そこには子役と大人の俳優が2人して作り上げる、“二人一役”での久田像がなければならないのです。

映画『サバカン SABAKAN』場面写真
(C)2022 SABAKAN Film Partners
写真15枚

草なぎさんは大人になった久田の視点で、懐かしき日々を振り返ります。ただそこにあるのは、感情的でもなければ感傷的でもない彼の淡々とした語りと、少年たちのまぶしい姿。久田も竹本も、決して特別な子どもではありません。家庭環境の差はあれど、2人ともどこにでもいる幼い子どもです。

映画『サバカン SABAKAN』場面写真
(C)2022 SABAKAN Film Partners
写真15枚

そして大人になった久田はというと、彼も特別な存在になるわけではない。現代社会の波に揉まれる生活者の1人です。草なぎさんの声や表情、佇まいに見られるこの久田の“生活者”としての一面が、少年期の久田と地続きであることを強く感じさせます。

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