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シニア猫ほどリスク高まる「内分泌疾患」 早期で気づくための注意点と予防法

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シニア猫ほどリスク高まる「内分泌疾患」について解説(Ph/イメージマート)
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犬も猫も、年齢を重ねればありとあらゆる病気のリスクが高まるのは人と同じ。今回は、シニア猫で特にリスクが増大する傾向にある内分泌疾患について、予防や治療の方法を獣医師の山本昌彦さんに解説してもらいます。

内分泌疾患にかかる割合は年齢とともに増加

ペット保険大手のアニコムの統計によれば、猫の内分泌疾患は、若い頃は請求割合(その病気で保険金請求・給付があったペットの数を、保険に加入しているペットの数で割ったもの)が1%にも満たないのですが、加齢と比例して増えていき、12歳で5%を超えます。猫も長寿命化している今、気になるところです。

内分泌疾患とは、体内で健康を保つために作用しているさまざまなホルモンが、正常に分泌されなくなる病気の総称です。大きく分けると、必要量が分泌されなくなる病気と過剰に分泌される病気の2種類があります。

山本さんによれば「猫では、代表的な内分泌疾患といえば、糖尿病と甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)が挙げられます」とのこと。ホルモンの作用が不足するのが糖尿病で、過剰になるのが甲状腺機能亢進症です。

糖尿病の初期症状、見つけやすいのは多飲多尿

糖尿病は、人間の生活習慣病としてもよく知られていますが、膵臓から分泌されるインスリンの作用不足で起きる病気です。インスリンは血糖値を下げるホルモンなので、これが不足すると、高血糖の状態が続いてしまい、血液が濃くなって脱水症状を起こしたり、さまざまな病気を引き起こします。

「発症の要因として考えられるのは、遺伝や免疫疾患、ウイルス感染などで、インスリンを分泌する細胞が破壊されてしまうこと。ほかに、肥満やストレス、偏った食事、加齢なども発症を促すとされています。猫で多いのは肥満などから来る2型糖尿病ですね」(山本さん・以下同)

糖尿病の初期症状としては、いわゆる多飲多尿になることが多いようです。

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多飲多尿になることが多い(Ph/イメージマート)
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「水を飲む量が増えて、おしっこの回数や量も増えます。おしっこがベタついた感じになったりも。また、食欲はあるのに体重が減ることがあります。毛ヅヤが悪くなったり、足腰がふらついたりする子もいます」

病気が進行すると深刻な症状が

早めに発見して治療を始められるといいのですが、病気が進行すると深刻な症状が現れるそうです。

「糖尿病が進行すると、血液中に有害な物質が現れ、嘔吐や下痢などの症状を引き起こします。さらに重症になると神経障害や昏睡などを起こし、死に至ることもある怖い病気です。また、糖尿病には白内障や腎疾患、肝疾患、細菌感染症など、さまざまな合併症があります」

糖尿病の予防は食生活から

糖尿病の治療は、血糖値をコントロールすること。病気が軽い場合は食事療法や運動療法で改善できますが、重くなるとインスリン注射をすることになります。

「血糖値が安定して治療を終えられる子もいますが、一般に治療は長くかかることが多く、発症してからずっと注射を続ける子もいます。すい臓の中で起きていることなので、外科的な処置ができない病気なんです」

肥満防止策なら飼い主にもできることがある

それでは、糖尿病をどう予防すればいいのでしょうか。肥満防止策なら飼い主さんにもできることがありそうです。

「やはり、栄養バランスのとれた食事が大切です。犬は雑食ですが、猫は昔も今も肉食の動物です。脂肪や炭水化物を摂りすぎると肥満になりやすいので、年齢に合ったフードを与えてください。フードを手作りする場合は猫の体に適した栄養バランスを意識する必要があります」

環境省の「ペットフード・ガイドライン」によれば、猫は人間の3倍近いたんぱく質が必要とのこと(1000kcalの食事であれば猫は65g、人間は23g)。ホームページにはこのほか、愛猫の体型をチェックする方法や、必要なカロリーの計算方法なども掲載されているので、参考にしてみてはどうでしょうか。

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