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シニア猫ほどリスク高まる「内分泌疾患」 早期で気づくための注意点と予防法

甲状腺機能亢進症、予防は難しいが早期発見はできる

シニア猫がかかりやすい内分泌疾患、もう1つが甲状腺機能亢進症です。喉元にある甲状腺という器官が過形成や腫瘍化で肥大し、この器官からホルモンが過剰に分泌されてしまう病気です。

猫
喉元にある甲状腺という器官が過形成や腫瘍化で肥大(Ph/イメージマート)
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「甲状腺ホルモンは、体の代謝を活発にするので、この病気にかかった猫は落ち着きがなくなることが多いですね。普段はおとなしい子がシャーシャー言って怒りっぽくなったり。ひんやりした場所、涼しい場所を好むようになることもあります。

それから、糖尿病と同様に多飲多尿になったり、毛づやが悪くなることも。食欲は旺盛になってよく食べますが、代謝が上がっているので食べても体重は落ちてきます。このほか、呼吸が速くなる、嘔吐、下痢、頻脈、心雑音などの症状が出ることもあります」

治療方法は外科的手段と内科的手段を選択

治療方法は外科的手段と内科的手段を選択することになるといいます。

「腫瘍を切除する外科手術は、リスクはありますが、手術が成功すれば、その瞬間から劇的な治療効果が望めます。ただ、高齢の猫は循環機能が低下する傾向があり、手術のリスクは当然高まってきます。手術適応にならないケースもあります。

その場合は、食事療法と服薬を組み合わせることになります。薬の適切な投与量には個体差があるので、血液検査と並行しながら投薬していくことになります。こちらはほぼ生涯にわたって治療を続けることになります」

一生の付き合いになってしまうかもしれない病気、飼い主さんの心がけで予防することはできるのでしょうか。

「残念ながら、なぜ甲状腺の過形成や腫瘍化が起きるのか、原因が解明されていないので、予防する術も今のところ、ありません。ただし、早く病気を見つけられれば、早く治療を始められます。水を飲む量がいやに増えたとか、夜鳴きをするようになったとか、何か変化があれば気付けるように、ぜひ愛猫の様子に敏感でいてあげてください」

◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん

獣医師・山本昌彦さん
獣医師・山本昌彦さん
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獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/

取材・文/赤坂麻実

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