エンタメ・韓流

35周年の森高千里 ストレス、ハエ、ミーハー、臭いもの…「聴けば不思議な共感の棲む森高ワールド」の秘密

90年代カルチャーに見事ハマった森高

勉強は面倒臭いけど、しておいたほうがいいよ。これを説教臭くならず「私も勉強しておけばよかった」というちょっぴり後悔を交えて歌う『勉強の歌』。これで私はやっと森高ソングに足を踏み入れた。

怒りだけでなく、コンプレックスや弱音も、とってもストレートに話しかけてくる。何か改めて学びたい。年を取るごとにその思いは強くなってくるもので、私はそのたびにこれを聴く。しかし何も思いつかず、せめて学んでいる感を出そうと『ロックンロール県庁所在地』を聴き、自己満足に浸ったりもする。アレッ、森高の思う壺!?

アラフィフになってもスタイルは変わらない(写真は2018年、Ph/SHOGAKUKAN)
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華やかで明るいけれど、負の感情もスパイシーにIN。そのミックスが絶妙で、不思議な安心感を漂わせる彼女。90年代のサブカルチャー黎明期にズバリとハマったのも頷ける。

クラスの中で一・二を争う美人だけど、どこで買ったのかと思うようなヘンテコボールペンをいつも持っていて、少年マンガにやたらと詳しかったりする。「第一印象と違うけど噛めば噛むほど味が出るスルメ」的な同級生を思い出すのである。

私がとても印象に残っているジャケット写真に『非実力派宣言』がある。仁王立ちっぽい立ち方に、片手を「ハイッ」という風に上げているあのポーズ! 衣装はかなりデコラティブなのだが、コドモのような伸び伸び感があって面白かった。あの雰囲気は今もあって、彼女はアラフィフになっても「伸びやか」だ。歌の世界で怒って笑って泣いてイライラして、もうデビューから35周年。

『雨』や『渡良瀬橋』など、今なお愛され続けているラブソングも多く、ガッツリ「実力派」であるのは誰だって認めているところ。ああ、これからの季節にぴったりな『銀色の夢』『ジン ジン ジングルベル』も聴きたくなってきた!

多くのラブソングも歌っている(写真は1997年、Ph/SHOGAKUKAN)
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◆ライター・田中稲

田中稲
ライター・田中稲さん
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1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka

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