家事・ライフ

薄井シンシアさん、仕事を辞めて転職するまでの100日間の小休止で初めて気がついたこと

休んで初めて自分の余裕に気づいた

私も今回の3か月で、自分をあらゆる面から整理できた気がします。人と会って話せば自分の考えがより明確になるし、時間がある分、物事を深く考えられますしね。人間、ブレイクしたほうが活性化されるものだなと思いました。

薄井シンシア
仕事を辞めても焦りは出なかった
写真4枚

まとまった時間ができたときに、さぁやろうと自分が思うのはどんなことか。部屋を片付けていて、今見てもこれいいなと思うものはどれで、実は使っていなかったと気づくものはどれか。自分の健康状態がどうなっているか。そういうことを明らかにすることができた。

経済的にも精神的にも余裕があった

そうやって自分を見つめ直すと、今の自分には余裕があるということが分かりました。仕事を辞めたら、私も焦りが出たりするのかなと想像したこともありますが、実際にはそういうことは全くなかったんです。こういう感覚は、実際に休んでみなければ分からないですね。

今の私は、経済的にも精神的にも結構ゆとりがあるんだなと思えて、だからこそ、これからまた冒険ができると思いました。60代って冒険ですよ。しなくちゃいけないってことがないんですから。今回の就活のテーマも、そういう余裕の中から「モダンエルダーになること」に定まっていきました。

女性に求められる役割が多すぎる 一度にやらなくてもいい

離職期間の心境や過ごし方って、人生のフェーズによってまるっきり異なるものだと思います。子育て中だったり、家族が病気になったり、人それぞれ、いろんな事情でお金が喫緊に必要な時期というのはあって。そういうときは、次が決まらないと会社を辞められないと考えるのも当然です。金銭的に少し余裕がある場合でも、自分の計画にないタイミングで退職すると不安が募りますよね。

ちなみに私は2021年2月に飲料メーカーを解雇されて次の仕事が決まるまで、やっぱり3か月ほど時間があいて、あのときは今のような余裕はなかったです。たった2年前のことです。

「60代って自由」「ブレイクも大切」と強調する理由

私が「60代って自由」「ブレイクも大切」と強調する理由は、50代や60代の人に今の自分に目を向けてほしい思いが一つ。冒険してもいいだけの余裕や自由を獲得した人も多いはずなのに、そのことに気づいていない人も多いと思うから。もう一つは、私が今いるフェーズを将来経験するはずの30代、40代の女性に知っておいてもらいたいことだからなんです。

女性は、子育てに家事に仕事に、求められる役割が多すぎる。今そんなにあれもこれも一度にやらなくていいよ、と私は思うし、この考えがもっと広まってほしい。後でもっと余裕を持って取り組めるときが来ますから。この連載でも繰り返し主張していますが、「Retire Now Work Later」、今は仕事を辞めてまた後で再開する。そういうことも本当に可能な世の中になってきたということを伝えたいですね。

◆薄井シンシアさん

薄井シンシアさん
薄井シンシアさん
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1959年、フィリピンの華僑の家に生まれる。結婚後、30歳で出産し、専業主婦に。47歳で再就職。娘が通う高校のカフェテリアで仕事を始め、日本に帰国後は、時給1300円の電話受付の仕事を経てANAインターコンチネンタルホテル東京に入社。3年で営業開発担当副支配人になり、シャングリ・ラ 東京に転職。2018年、日本コカ・コーラに入社し、オリンピックホスピタリティー担当就任するも五輪延期により失職。2021年5月から2022年7月までLOF Hotel Management 日本法人社長を務める。2022年11月、外資系IT企業に入社し、イベントマネジャーとして活躍中。近著に『人生は、もっと、自分で決めていい』(日経BP)。@UsuiCynthia

撮影/黒石あみ 構成/赤坂麻実

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