趣味・カルチャー

66歳オバ記者、お彼岸に思い出した母親介護の日々「なぜ母ちゃんは急にサラダが好きになったのか?」

スペアリブに食らいついた義父ちゃん

お互い歳をとってそんな昔話はしたことがないし、義父ちゃんも覚えているかどうか。で、スペアリブだけど、肉を一切れ乗せた皿を差し出すと、「おら、煮たトマトはすかねぇんだ(好きじゃないんだ)」と顔をしかめるの。「まあ、せっかくヒロコが作ってきたんだが、ひと口だけでも食えな」と母ちゃんに言われて、いやいやながら口に入れた。それから黙々と口を動かして気がつくとスペアリブ一本、ペロリ。

で、何を言い出すかと思えばお皿を私の方に突き出しながら「はぁ、もう、オレはいいや。あと一本でいいや」だって。「うまいからお代わり」と言えばいいのに、それが言えない。

オバ記者
おいしいと言えばいいのに…素直になれない義父(写真は食事中の母ちゃん)
写真7枚

だけど私からすれば完全勝利よ。下を向いて気まずそうに2本目の骨付き肉にくらいついている義父ちゃんを見たらうれしくてたまらない。

なんてことも10年以上前の話でね。義父ちゃんは2018年に、母ちゃんはそれから3年後の一昨年、この世から旅立っている。

“墓標ウォッチング”で盛り上がったことも

先日のお彼岸の中日、弟夫婦と「そろそろ墓碑に母ちゃんも刻まないとな」と言いながら、お墓参りに行ってきた。血縁関係のない義父ちゃんと私の共通点といえば「旅好き」くらいだったけれど、母ちゃんとは親子だなと思うことが多かったな、とか思いながら手を合わせる。

そういえば何年か前のこと。墓参りの帰り道、なにげなくよその家の墓石の裏をのぞいたら、いつの間にか母ちゃんが横にいて「あれ〜よ。こら、◯◯さんのじんつぁま(ジイさん)だっぺな」と言いだしたんだわ。「母ちゃん、知ってる人げ?」と聞くと、「嫁にきたばかりのときに親切にしてくれたんだよ」と言うの。

オバ記者
母ちゃんと一緒にやった墓標ウォッチング楽しかったな~
写真7枚

それからふたりで嬉々としてよその家の墓石、墓標ウォッチングよ。「そうだ。ここの家の長男は早く亡くなったんだよな」といえば私は私で、「母ちゃん、△△さん家っちゃ古い家なんだな。この墓石、天保◯年だってよ」と言うと、「旧家だがんな〜」と母ちゃん。

そんなあれこれを墓石に水をかけながら思い出して「母ちゃん、そっちはどうだ?」と声をかけたら、頭上の大木から気持ちのいい風が吹き降りてきました。彼岸の向こうはいいところらしいわ。

◆ライター・オバ記者(野原広子)

オバ記者イラスト
写真7枚

1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。

【367】66歳オバ記者が振り返る在宅介護の日々 母親が「100万円がねぇ!」と大騒ぎ、その意外な顛末

【366】在宅介護を経験した65歳オバ記者、きょうだい間で起こりがちな「介護のお金問題」と無縁だったのはなぜか?

→オバ記者の過去の連載はコチラ

関連キーワード