家事・ライフ

薄井シンシアさんの社交術 外交官夫人時代のホームパーティーは「仕事だからサプライズはしない」

薄井シンシアさん
薄井シンシアさんの社交術とは?
写真3枚

外交官の妻だった薄井シンシアさん(64歳)は世界を転々としながら、2週間に一度、自宅でホームパーティーを開いていたといいます。徹底した合理主義を貫くシンシアさんのパーティー成功の秘訣とは? サプライズをしない理由とは? 17年間の専業主婦生活を経て、現在は外資系企業で働くシンシアさんに外交官夫人の「社交術」を聞きました。

* * *

2週間に一度のホームパーティー

元夫は外交官で、頻繁に社交の場がありました。若いときは上司に招かれていたけれど、役職が上がれば自分のチームを持ちます。だからチームリーダーとして、自宅に人を招いて歓送迎会や新年会などを開かなくてはなりません。これは好き嫌いではなく、仕事の一環。若いときに招いてもらったのに、リーダーになった途端に何もやらないのは責任放棄でしょう?

2週間に一度、金曜日は必ずパーティーをしていました。招待客はチームのメンバーのこともあれば、仕事先の場合もある。国柄にもよるけれど、若いときはお手伝いさんを雇う余裕が無いから、すべて私が準備をしました。

外交官の場合、仕事相手を自宅に招くときだけは、外務省からお金が出ます。なので、日本食レストランのシェフに自宅へ出張してもらい、料理を作ってもらいました。当日はキッチンをきれいに片付けておくだけだから、少し楽。ただ、職員同士の宴会は自腹なので、私がすべての料理を作りました。

パエリアや焼き豚…完璧に作れるものだけを作る

私は料理が好きではありませんが、仕事だから作らなくてはいけない。だから絶対に新しいレシピを使わず、メニューには作り慣れたものを選びました。そして完璧に作ることを心がけました。

薄井シンシアさん
効率化も大切
写真3枚

効率化も大切です。「この目的には、これ」と料理の組み合わせを数パターン決めて、それを使い回しました。あれこれと迷ったりはしません。外交官は3年に一度の転勤があるので、何パターンかメニューを作っておけば、それほどマンネリ化はしないんです。

招待客が日本人のときは家庭料理をバージョンアップしたもの。外国人なら、食べやすい和食か、洋食を少しだけ和風にアレンジしたものが多かったです。

よく作ったのは、卵に豚肉などを混ぜてオーブンに入れる料理。パエリアや焼き豚も定番でした。当日はお客様の相手もしなくてはならないので、焼くだけで完成するオーブンを活用しました。

娘には自分のタスクをこなしてほしいので、料理の準備を手伝わせることはしませんでした。ただ、食事は必ず同席させて、食後に「失礼します」と挨拶をしてから退席させました。幼いときから大人の世界をよく見ているので、「こういう風に会話をするのか」など、パーティーでのマナーや社交術を学んだと思います。

仕事だからサプライズはしない

私はフラワーアレンジメントが得意ではないので、テーブルを花で飾ったりはしませんでした。代わりにテーブルに帯を敷いたり、日本的なものを飾ったり、箸置きをたくさん置いたりして工夫しました。クリスマスのときは家中を飾り付けたりもしました。

外交官夫人のプロとして徹底的に仕事をしたので、評判はよかったと思います。私が専業主婦から仕事へ簡単に戻ることができたのは、そういう積み重ねがあるからかもしれません。

ただ、サプライズパーティーはしませんでした。だって仕事だから。相手の好みに沿ったメニューを考え、完璧なおもてなしはするけれど、そこに感情を入れるようなことはしません。中途半端に感情をこめれば、「お返しをした方がよいのだろうか」と相手を悩ませてしまうことだってあるかもしれません。仕事にサプライズも何もないでしょう。

◆薄井シンシアさん

薄井シンシアさん
薄井シンシアさん
写真3枚

1959年、フィリピンの華僑の家に生まれる。結婚後、30歳で出産し、専業主婦に。47歳で再就職。娘が通う高校のカフェテリアで仕事を始め、日本に帰国後は、時給1300円の電話受付の仕事を経てANAインターコンチネンタルホテル東京に入社。3年で営業開発担当副支配人になり、シャングリ・ラ 東京に転職。2018年、日本コカ・コーラに入社し、オリンピックホスピタリティー担当に就任するも五輪延期により失職。2021年5月から2022年7月までLOF Hotel Management 日本法人社長を務める。2022年11月、外資系IT企業に入社し、イベントマネジャーとして活躍中。近著に『人生は、もっと、自分で決めていい』(日経BP)。@UsuiCynthia

撮影/小山志麻 構成/藤森かもめ

●薄井シンシアさん、やり方が強引で言葉もきついから同僚とはたびたび衝突 それでも敵をつくらないでいられるワケ

●薄井シンシアさんの「親友論」 1人でいることが平気な私が親友によって「救われた」経験