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パートで働くときの「年収の壁」は5段階!手取りが減らないために注意すべきポイント

黒板と電卓
パートやアルバイトをするときに気をつけたい「年収の壁」(Ph/photoAC)
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パートなどを始める際に知っておくべきなのが「年収の壁」。社会保険料などの負担によって手取りが減ってしまう年収ラインのことで、把握せずに働いていると、手取り面だけではなく、世帯収入の面でも損をしてしまうこともあります。そこで、節約アドバイザー・ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんに「年収の壁」について詳しく教えてもらいました。

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パートタイムで働くときに意識したい年収の壁

扶養内でパートタイマーとして働くとき、意識しておきたいのが「年収の壁」。年収の壁とは、もともと会社員の配偶者などで、一定の収入がない人は被扶養者(第3号被保険者)として社会保険料を負担していません。このような人たちがパートなどで働いて、その収入が一定額を超えた場合、住民税、所得税、社会保険料の負担が発生し、さらに配偶者特別控除が減少やなくなることで、自身の手取り収入が減少したり、配偶者の手取りも減少したりする年収の基準のことです。

手取り年収が減ることを避けるため、その壁を超えないようにシフトを調整して働く人が多くいます。まずはいくらで何が引かれるのか、5段階の壁を解説します。

住民税が課税される「100万円」

パートタイマーの最初の壁は「100万円」で、住民税が発生するボーダーラインです。住民税額は所得金額や、住んでいる自治体によって異なるため、100万円が目安となります。

100万円の札束
「100万円」が最初の壁(Ph/photoAC)
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所得税が課税される「103万円」

次の壁は「103万円」で、住民税に加えて所得税が課税されるボーダーラインです。年収103万円以下であれば、所得税はかかりませんが、基礎控除以外の所得控除がない場合に、103万円を超えた額に対して所得税がかかるためです。ただし、医療費控除などの各種控除をうけられれば、年収が103万円を超えても所得税がかからない場合もあります。

また、年収が103万円を超えると、これまで世帯主が受けていた「配偶者控除」が「配偶者特別控除」に切り替わります。「配偶者控除」と「配偶者特別控除」は、世帯主の合計所得額が1000万円以下の場合に適用されるものです。

社会保険が発生する「106万円」

「106万円」の壁とは、社会保険料が発生するボーダーラインです。所定労働時間が週20時間以上、1か月の賃金が8万8000円以上、雇用期間(見込み)が2か月以上、厚生年金の対象となる従業員が101人以上(2024年10月からは51人以上)の企業に勤務、といった一定の条件を満たしている場合、健康保険の被保険者と厚生年金の加入者となります。これにより、年間約16万円の社会保険料が発生します。

なお、扶養されている学生は勤労学生控除の対象となるため、130万円までは所得税はかかりません。ただし、学生の場合、アルバイトの年収が103万円をこえると扶養者控除の対象外となるため、扶養者の税負担が増える可能性がありますので注意が必要です。

確定申告用紙とペン
社会保険料が発生する年収の壁(Ph/photoAC)
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社会保険の扶養から外れる「130万円」

年収106万円までは一部の人が対象でしたが、年収が130万円の壁を超えると、一般的には家族の扶養から外れます。その場合、自分自身で社会保険に加入する必要があり、社会保険料の負担が生じます。扶養の認定はその家族の勤務先の規定によって変わるので、確認しておきましょう。

配偶者特別控除の満額が適用される壁「150万円」

150万円の壁は、配偶者控除特別控除の満額38万円が受けられるかどうかのボーダーラインです。年間の給与収入が103万円以下であれば、配偶者控除の満額38万円が適用されますが、103万円を超えると配偶者特別控除が適用され、例えば控除を受ける納税者(夫)の合計所得金額が900万円以下かつ、配偶者(妻)の所得が150万円までなら、納税者(夫)は38万円満額控除ができるというものです。

ただし、納税者(夫)の合計所得額が900万円を超えると、26万円、13万円と控除額は下がります。納税者(夫)の合計所得額900万円以下で、配偶者の年収が150万円を超えると、3万円~36万円の範囲で控除額が変動します。

一方、この特別控除は配偶者を養っている納税者の所得金額が1000万円以下(給与収入のみの場合は1195万円以下)である場合の適用のため、配偶者の年収が1000万もしくは1195万円以上であれば配偶者控除は控除の適用がありません。

配偶者控除の用紙
配偶者特別控除の満額「150万円」(Ph/photoAC)
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年収の壁にも対応する「キャリアアップ助成金」とは

年収の壁を越えて働くことで、手取り年収が減ってしまうことを避けるため、労働者は時間を調整するなど思うように働けずまた、事業主は希望通りに人材を確保できなくなってしまう状況が問題となっています。この年収の壁への対応として、厚労省では「106万円の壁」に対応する「キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース」
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/syakaihoken_tekiyou.html)という取り組みを2023年10月から行っています。

事業主が労働者に社会保険を適用させる際、社会保険料で減ってしまう手取りの補填として賃上げなどを行う場合に、最大3年間その費用を助成するというものです。助成金を出すことによって、労働者への手当支給や賃上げをしやすくしています。

助成金の申請者は事業主

社会保険適用促進手当の支給など、社会保険料分の手取りを補填する仕組みがあるかどうかは職場によって異なります。また、キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コースの申請者も事業主となるため、自身の職場が年収の壁対策を行っているかどうか一度確認してみるといいでしょう。

万札を数えている
手取りが減らないようにする助成金制度も(Ph/photoAC)
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130万円の壁に対応する被扶養者認定継続の仕組みも

また、「130万円の壁」への支援として、「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」という仕組みもあります(https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html)。一般的に年収130万円を超えると扶養から外れてしまいますが、その超過が一時的な場合に被扶養者の認定を継続するものです。

例えば、年収130万円を超えないようにシフトを調整している人が、繁忙期の残業などで一時的に年収140万円となった場合、事業主がそれを証明することで、被扶養者認定を継続でき、社会保険料の負担を避けることができます。

手取りが減っても社会保険加入自体はメリットがある

自身の職場が社会保険適用促進手当の支給などを行っていない場合、社会保険料が発生すると、その分手取りが減ってしまいます。しかし、社会保険に加入することで、将来受け取る年金額が増えたり、傷病手当金が受けられるなどの保障が手厚くなるなどのメリットもあります。

長期的に見れば、社会保険に加入するほうが恩恵を受けられることもありますので、自分に必要な保障を考えて、体力や家事負担などもトータルで考慮してどのくらい働き、稼ぐのかを検討するといいでしょう。

◆教えてくれたのは:節約アドバイザー・丸山晴美さん

丸山晴美さん
節約アドバイザー・丸山晴美さん
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節約アドバイザー。ファイナンシャルプランナー。22歳で節約に目覚め、1年間で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニの店長などを経て、2001年に節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザー、宅地建物主任士(登録)、認定心理士などの様々な資格を持ち、ライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどをテレビやラジオ、雑誌、講演などで行っている。https://www.maruyama-harumi.com/

構成/新藤まつり

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