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【子犬&子猫を飼う上で知るべきこと】犬・猫の生後「8週齢規制」、早すぎる親ばなれがNGな理由とは?

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早すぎる親ばなれ”母子分離 ”がNGな理由とは?(Ph/イメージマート)
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子犬や子猫の愛くるしさには抗いがたい魅力がありますが、ペットを新たに飼い始めるとき、ペットショップやブリーダーから、少しでも幼い子を迎えようとするのはやめたほうがいいかもしれません。この記事では、犬・猫のいわゆる“8週齢規制”について、獣医師の内山莉音さんに改めて解説してもらいます。

生後56日未満で売りに出される子犬・子猫

日本では、生後56日を経過しない犬または猫の販売や販売のための引き渡し、展示を禁じる改正動物愛護管理法が2019年6月に公布されました 。犬や猫が心身ともに健康的に育つためには、生後8週が経過するまで親きょうだいと引き離すべきでないという理由で、長い時間をかけて審議が行われ、改正されたものです。

ところが法改正後、犬・猫の出生日を実際より早い日付に偽装し、本当は生後8週未満の子犬・子猫をペットショップに引き渡すという違法行為をしている繁殖業者もみられるといいます。業者は、幼ければ幼いほど買い手がつきやすいことが分かっていて、また早く販売すれば管理コストを抑えられるので、こうした行為に手を染めてしまうことが考えられます。

もちろん法を犯す業者が悪いのですが、ペットショップやブリーダーから子犬や子猫を迎える飼い主さんの側でも、悪質な業者のやり口に乗ってしまわないことが大切です。幼すぎる子犬・子猫を購入することは、悪質業者を助長することにつながっています。

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犬や猫の愛護のために、8週齢規制がある(Ph/イメージマート)
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そもそも、犬や猫の愛護のために、8週齢規制があります。どうして幼すぎる犬や猫は親元から引き離してはいけないのか、犬や猫の心身の健康リスクについて、いま一度、おさらいしてみましょう。

子犬・子猫は母親から免疫や栄養をもらう

子犬や子猫を生後8週が過ぎるまで母親から離さないほうがいい科学的な根拠を、獣医師の内山さんは次のように説明します。

「まず、子犬や子猫の身体のためです。子犬や子猫が離乳するのは、生後4~8週のタイミングだといわれています。それまでは母乳で育ちます」

哺乳期にある子犬や子猫は当然、母親から引き離してはいけないというわけです。

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哺乳期にある子犬や子猫は当然、母親から引き離してはいけない(Ph/イメージマート)
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「まず、子犬や子猫が生まれて間もない頃に飲む初乳では、母親の免疫を分けてもらって感染症への抵抗力をつけることができますし、その後も子犬や子猫は母乳から成長に必要な栄養を摂取します。母乳は高たんぱく、高カロリー。子犬や子猫の体重は、個体差はあれど、だいたい毎日1割ずつ増えていきます 」(内山さん・以下同)

社会化のために親きょうだいとの時間が大切

免疫や栄養以外にも、犬や猫の母子分離を早めてはいけない理由があります。

「犬はおよそ生後3~12週 、猫は生後2~8週 が、社会に順応する力を獲得したり、性格が形成されたりする『社会化期』『感受期』だといわれています。犬はその社会化期のピークが生後7~8週だとされていますね。ですからこの時期は、親や一緒に生まれてきた兄弟姉妹と過ごし、さまざまな経験をして、いろいろな刺激に慣れることが大切です」

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親や一緒に生まれてきた兄弟姉妹と過ごし、さまざまな経験をして、いろいろな刺激に慣れることが大切(Ph/イメージマート)
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社会性を身につけるこの時期に、飼い主さんとだけ接していると、成長してからもさまざまな刺激に過敏で、警戒心の強い性格になってしまう可能性があります。なんでもないことで怖がったり、怖いので威嚇したり。巡り合わせが悪いと攻撃に出てしまうようなことも起こりかねません。動物病院やサロンに連れて行きたいとき、犬をペットホテルに預けたいときなどに支障が出ることも考えられます。

「業者が8週齢規制を守っているかどうか、外からは見えにくいので、生後8週未満で購入された犬・猫が実際にどう育ったのかという具体例を挙げることは困難です。ただ、社会化期の重要性とその後の影響という意味では、コロナ禍で生まれて2~3歳になるまで、飼い主さん以外の人や他の犬とほぼ関わらずに育った犬が今わりといるので、そうしたところから実感しやすいかもしれません。コロナ禍で閉じこもりぎみに育ったワンちゃんが、そのせいか少し臆病に育って、散歩で他の犬と遭遇したり、ドッグランで遊んだりが苦手になってしまったという例は見聞きします」

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