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『るろうに剣心』最新作、前作までとの違いとコロナ禍の今こそ見るべき理由

佐藤健(32才)主演の映画『るろうに剣心 最終章 The Final』が4月23日より公開中です。大ヒットシリーズの第4作目となる本作では、新田真剣佑(24才)や有村架純(28才)らを新キャストとして迎え、これまで以上に胸が熱くなるドラマとアクションを展開しています。

『るろうに剣心 最終章 The Final』
(c)和月伸宏/集英社 (c)2020映画「るろうに剣心最終章The Final/The Beginning」製作委員会
写真8枚

映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんは、シリーズを見たことのない人でも楽しめる、映画を通して“いま大切なこと”を教えてくれる作品と語ります。

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【見どころ1】シリーズ「最終章」にふさわしい物語展開

本作は、和月伸宏(50才)による国民的人気マンガ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』(集英社)を原作とし、映画『3月のライオン 前編/後編』(2017年)や『億男』(2018年)などの大友啓史監督(54才)が実写化したもの。

シリーズ開始からおよそ10年、最新作である今作は、本来であれば2020年の7月に公開される予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で約1年延期に。満を持して封切りとなったものの、数日後には東京、大阪などで緊急事態宣言が発令され、TOHOシネマズをはじめとする映画館が休館になるなど、苦しい状況が続いています。素晴らしい作品なだけに、この苦境を乗り切って欲しいと願うばかりです。

『るろうに剣心 最終章 The Final』
(C)和月伸宏/集英社 (C)2020映画「るろうに剣心最終章The Final/The Beginning」製作委員会
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◆剣心が未来に進むために過去と対峙

そんな本作のあらすじはこうです。激動の幕末において、“人斬り抜刀斎”として恐れられた男・緋村剣心(佐藤)。新時代を迎えた彼は、斬れない刀・“逆刃刀”を手に「二度と人を殺さない」と誓い、仲間たちと穏やかな日々を過ごしていました。ところがある日、彼らの暮らす東京が何者かによって攻撃され、剣心の大切な人々が危険な目に遭うことに。

この首謀者が、かつての剣心の妻・雪代巴(有村)の弟である雪代縁(新田)です。彼は剣心に対して底しれぬ憎悪の念を抱き、剣心だけでなく、剣心が切り開いた新時代もろとも叩き壊そうとしています。なぜなら彼は、剣心の手によって最愛の姉を斬殺されたから。

縁は、剣心自身が生み出してしまった”最恐最悪”の存在となってしまったのです。こうして剣心の、未来に進むための“過去との対峙”が幕を開けることになります。

(c)和月伸宏/集英社 (c)2020映画「るろうに剣心最終章The Final/The Beginning」製作委員会
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あらすじだけを見てみても、実によく練られたドラマだと思います。刀によって新時代を作り上げた剣心の元に次から次へと刺客が現れる。これまでの本シリーズのテーマに沿ってはいますが、従来の作品との大きな違いは縁の存在です。

彼は剣心を憎み、敵視する正当な理由があると言えます。また彼は、剣心のトレードマークとも言える頬の“十字傷”の秘密を知っている人物です。この秘密と、“剣心がなぜ巴を斬殺したのか”が本作では語られます。

周囲の者たちを巻き込んだ大戦争を描きながら、同時に主人公・緋村剣心のよりパーソナルな部分にも迫っているのが本作『The Final』なのです。まさに最終章にふさわしいテーマと言えるでしょう。そして物語は、“剣心の過去”を描く6月4日(金)公開予定の『The Beginning』に続きます。

【見どころ2】俳優たちの身体能力が有機的に作用し合うアクション

本作の大きな見せ場の一つがアクションシーンです。「手に汗握る」という言葉がまさに当てはまる圧巻の戦闘シーンとなっています。一口にアクションといってもとても奥が深く、各キャラクターごとに戦法が異なるため、演じる俳優たちのさまざまなアクションも堪能できます。この“違い”に目を向けてみるのも、本作の楽しみ方の一つでしょう。

これまでのシリーズもそうでしたが、本作も例に漏れず、身体能力の高さに定評のある俳優たちが集っています。青木崇高(41才)、江口洋介(53才)、伊勢谷友介(44才)、土屋太鳳(26才)らお馴染みの面々はもちろん、映画『キングダム』(2019年)出演の阿部進之介(39才)や『今際の国のアリス』(2020年)の栁俊太郎(29才)、「アクション俳優」の肩書きを持つ丞威(26才)、恵まれた体格を生かした格闘技を得意とする成田瑛基(31才)らが“縁一派”として、雪代縁演じる新田の脇を固めています。

『るろうに剣心 最終章 The Final』
(c)和月伸宏/集英社 (c)2020映画「るろうに剣心最終章The Final/The Beginning」製作委員会
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◆”混戦”によって見る人も混乱?

彼らが入り交じるダイナミックかつスピーディーなアクションシーンの数々は、スクリーン上で一体何が起きているのか混乱してしまうほど。しかし、これこそが本作の醍醐味でもあります。なぜなら、一人のキャラクターの動きに注目して見てみると、そのキャラクターが紛れもなく的確に動いているのが分かるはずだからです。

『るろうに剣心 最終章 The Final』
(c)和月伸宏/集英社 (c)2020映画「るろうに剣心最終章The Final/The Beginning」製作委員会
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一人が“攻め”に出れば、周囲の者たちは“守り”や“回避”に出る。身体能力に自信のある俳優たちによる“混戦”から生まれる観客の混乱は、本作が世界に誇る日本製アクション映画の証なのではないでしょうか。俳優たちの身体能力が有機的に作用し合ってこそ、「手に汗握る」圧巻のアクションシーンが成立するのだと思うのです。

【見どころ3】コロナ禍の公開に作品が問いかけるメッセージ

本作は、1年近い延期の末に公開されたものの、その直後の緊急事態宣言の発令によって、上映がままならない地域があるのは先に説明した通りです。筆者はなんとか公開初日に鑑賞することができましたが、いまだそれが叶わない人も多いのではないかと思います。筆者は運良く観ることができたに過ぎず、実際、鑑賞日の前日になっても、果たして本当に観られるのか怪しかったものです。

映画だけに限らず、新型コロナの影響で多くの人の生活が一変し、今は誰もが不安や不満を少なからず抱えていることと思います。明日がどうなるか分からず、もし何か問題が起こったとき、気持ちのやり場も分からない。そんな環境下で観た本作は、どこか現在の自分の心境と共鳴し合うところがありました。

『るろうに剣心 最終章 The Final』
(c)和月伸宏/集英社 (c)2020映画「るろうに剣心最終章The Final/The Beginning」製作委員会
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◆剣心の心情は現実の社会とも重なる?

主人公の剣心は、自分を憎む縁への向き合い方に苦しんでいます。なぜなら縁は、完全に彼自身が生み出してしまった“悪”だからです。ことの真相は“十字傷”の秘密とともに明らかになりますが、縁が剣心を憎んでいるのは事実で、剣心が巴を斬殺してしまったことも事実。過去と現在の自分は違うとはいえ、自らのしたことに変わりはありません。だからこそ剣心は、自身の気持ちのやり場に困るのです。

剣心の心情とは少し違うかもしれませんが、現実の社会に目を向けると、コロナ禍で変わってしまった現状にやりきれない気持ちを抱え、もはや爆発寸前、この気持ちをどこに向けていいのか分からなくなっている人も多いのではないでしょうか。

そしてこの鬱積した思いが、時に特定の個人に向かい、誹謗中傷や差別が連鎖してしまう悲しいニュースも見かけるようになりました。 一度怒りや悲しみの感情が芽生えると、それがどんどん大きくなり、やがて歯止めが効かなくなるものなのかもしれません。

『るろうに剣心 最終章 The Final』
(c)和月伸宏/集英社 (c)2020映画「るろうに剣心最終章The Final/The Beginning」製作委員会
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◆二つの正義が対立し合うさまを見せる

劇中でも、復讐に燃える縁が過熱するあまり、その熱が剣心の周りの者たちにも飛び火してしまう描写があります。その気持ちは分からなくもありません。しかし、皆が大変なときこそ冷静さを失わずにいたいもの。剣心は過去を背負いながら前に進み、縁は過去に囚われ前が見えない。本作は、そんな二つの正義が対立し合うさまを垣間見せてくれるのです。どちらの心情も理解できるだけに、私たちの置かれている現状を改めて突き付けられているようでした。

本作を鑑賞した際には、そうした作品のメッセージや、10年にわたるシリーズが紡いできた俳優、スタッフの思いに触れることができるのではないかと思います。劇場に行けない間に、これまでのシリーズを予習・復習するのも良いかもしれません。

文筆家・折田侑駿さん

折田優駿さん
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1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。折田さんTwitter

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