エンタメ・韓流

浜崎あゆみ『HANABI』は隠れた名曲 寂しさと憧れ…夏の終わりのムード高める歌姫たちの「花火ソング」

1999年発売の『花火』はaikoの代表曲となった(写真は2000年、Ph/SHOGAKUKAN)
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華やかに咲き、潔く散る「一瞬の尊さ」

浜崎あゆみさんは、花火が終わってしまった後の切なさと、恋の終わりの悲しさをかけて『HANABI』を書いたというエピソードを読んだことがある。そうなのだ、花火がエモいのは、エネルギーが爆発するような美しさのあとに「スン……」という静寂が来るから。「ああ、終わってしまった」という泣きたくなるような心細さ、確かに恋に似ている。

また、花火ソングが増えてきた時期と、春の「桜ソング」が増えてきた時期が重なるのも面白い。

どちらも、もう戻ってこない恋や若さ、思い出を重ねる歌が多いけれど、悲しいだけではなくて、どこか「大切な宝物」という誇りが漂っている。咲く時は生命力が爆発するように咲くけれど、散るときは一瞬。そんな儚い美しさは桜も花火も共通だ。

文明が発達した今、オールシーズンなんでも楽しめるようになった。そんな時代だからこそ、ものすごく華やかに咲き潔く散る刹那的な桜や花火が、より美しく感じるようのかもしれないなあ、などと思うのである。

大塚愛『金魚花火』はバラード調の花火ソング(写真は2004年、Ph/SHOGAKUKAN)
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儚いものは美しい

夏の終わりの花火は、鎮魂の意味が込められている。2020年から始まったコロナ禍によって中止が続いた花火大会だが、今年は久々に開催されるところも多いようだ。

すでに8月中旬開かれた花火大会に参加し、ドカーンと空に咲く花火に深い想いを寄せられた方もいるだろう。お友達や恋人、もしくは家族と花火セットを買い、頭を突き合わせ、小さな光を愛でた人もいるだろう。

ちなみに、これから開かれる花火大会を、平成ラブソングの如く観に行く予定の方、一つマメ知識を。花火は心理的にもラブチャンスが増えるらしい。「もうすぐ花火が上がる」とドキドキすることで吊り橋効果(一緒にいる相手に恋愛感情を抱きやすくなる現象)が期待でき、さらには二人並んで同じ方向を見ることで一体感を得られるらしい(「スティンザー効果」という)。ううむ、マナーをしっかり守って参加すればいいことずくめのようだ!

私からも老婆心ながらアドバイスを。トイレは先に済ませておこう。

というのも私は若かりし頃、花火が上がるとともにトイレに行きたくなり、ものすごく遠くに設置されていた簡易トイレに走ったはいいが、絶望するような長蛇の列ができており、仕方なく並びながら花火を見、無事トイレを済ませたはいいが今度は迷い、グループの輪に戻った時はすでに花火が終了。結局片付けだけ一緒にして解散になった経験がある。あれはある意味、浜崎あゆみさんの『HANABI』を超える切なさであった。

私のようにならないよう、この夏一瞬の輝きを堪能してほしい。儚いものは美しい。たーまやー……。

◆ライター・田中稲

田中稲
ライター・田中稲さん
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1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka

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