ペット・動物

猫が病院を受診する理由の1位は消化器系の病気 飼い主が気をつけたい症状と予防のためにできること

肝リピドーシスの予防には肥満防止

肝リピドーシスは肝臓に過剰な脂肪がたまって肝臓が正常に機能しなくなる病気です。元気がなくなって、食欲が落ちたり、吐いたりします。病気が進行すると黄疸や意識障害などの症状も現れます。

「初期症状として眠っている時間が長くなったりもするので、飼い主さんが早く気づいてあげられるといいですね。原因は栄養障害や脂質の代謝異常、ホルモン異常、ストレスなどが考えられます。太った猫がなんらかの理由で食事をあまり取らなかったときにたんぱく質が不足し、体内の脂肪代謝が落ちて発症するケースもありますね。肥満は万病のもとなので、気を付けたいところです」

肝リピドーシスの治療法は?

治療法は点滴と経管栄養。チューブを通じて高たんぱくの流動食を直接、胃や食道に注入します。予防法はやはり肥満防止だといいます。

「年齢に応じてフードを変えるべきなのに、飼い主さんがそれを怠ってしまったために、シニアになって太る猫が結構います。年齢によって必要な栄養成分は変わってきますし、カロリー過多になると消化器系統に負担もかかりますので、ぜひ年齢に合わせたフードをあげてください」

日頃から食物繊維を十分摂るなどして対策を

その他の消化器系の疾患にはどのようなものがあり、どう予防すればいいのでしょうか。

猫
その他の消化器系疾患の予防策とは?(Ph/イメージマート)
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胆管肝炎

胆管肝炎には、肝臓や胆管が細菌感染して炎症が起きる化膿性と、免疫細胞が過剰に反応して炎症が起きる非化膿性の2種類があります。

「化膿性はオスに多い傾向があります。症状は食欲不振や発熱、脱水、嘔吐、黄疸など。非化膿性は分かりやすい症状が出にくく、ゆっくり進行していくことが多いですね。原因が解明されていないので予防も難しいのですが、肥満防止はやはり大切です。それから、食物繊維を多く摂取することで、併発疾患のリスクを減らせると考えられます」

すい炎

すい炎は、十二指腸で活性化するはずの消化酵素がすい臓内で活性化してしまい、すい臓自体を消化しにかかってすい臓に炎症が生じる病気です。

「主な症状は腹痛、嘔吐、下痢。慢性すい炎はシニアの猫に多いですね。これも原因がはっきりとは分かっていなくて、脂肪の摂りすぎや胆管の奇形が要因になっているようです。予防として飼い主さんにできることは、やはり栄養管理。肥満や偏食には気を付けましょう」

巨大結腸症

巨大結腸症は、便秘が続いて大腸(結腸)に糞便がたまり、大きく拡張してしまった状態をいいます。さらに便秘が進んで、食欲不振や嘔吐、痩せ、脱水といった症状を起こすこともあります。

「予防法は、バランスの取れた食事。日頃から食物繊維がしっかり摂れるようなフードを与えましょう。便秘になったら長引かないように、猫が安心して排泄できる環境を整えたり、たくさん水を飲ませたりすることも大切ですね」

今回は、猫の消化器疾患の代表的な病気をいくつか、山本さんに解説してもらいました。予防法としては、誤飲しそうな異物のない環境、ストレスのかからない環境、ライフステージに合わせた栄養管理、感染症対策(ワクチン接種など)が有効です。猫好きの皆さんにとっては基本的なことかもしれませんが、改めて徹底していきたいものです。

◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん

山本
獣医師・山本昌彦さん
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獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/

取材・文/赤坂麻実

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