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66歳オバ記者が振り返る在宅介護の日々 母親が「100万円がねぇ!」と大騒ぎ、その意外な顛末

現金が見つかると「全部、持ってげな」

「母ちゃん、これが?」と差し出すと、「あれ~よ。どごにあったんで?」と、さすがにバツが悪そうだ。すかさず「まあ、〇さんのことは聞かなかったことにしてやっけどさ。約束は守ってもらうがんな」と私。で、封筒から一万円札を抜き出して数えたら、な、なんと57万円ある! それをちゃぶ台に札をきれいに並べて、「半分こな」と分けようとしたら、母ちゃんは笑って「あはは。いいよ。全部、持ってげな」だって!

母ちゃんにボケられるのも怖いけど、欲が離れてあっさり旅立たれるのもどうよと、現金を前にした私はとってもやさしい気持ちになっていていてね。そうか。こういうのを「現金」っていうんのか、と思いながらニマニマが止まらなかった。

オバ記者
見つけた現金全部持ってけって、母ちゃんの太っ腹発言にニンマリ
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その直後、母ちゃんは自分のお金を全額、弟に預けて、それきりお金の話は死ぬまでしなかったの。25年間、ホームヘルパーをしていた母ちゃんは老人の末期をイヤというほど見ている。この夜のことで何か悟ったのかもね。

そうそう。ビニール袋に現金といえば忘れられないことがあるの。足立区でひとり暮らしをしていたWさん(当時72歳)から20年以上前に聞いた話だ。

彼は元地主さんで家の改築をしようと不要品の片づけをしようと、お嬢さん夫婦を助っ人に頼んだ。「廊下のすみからいらないものを積み重ねて、細かいものはゴミ袋に入れていたんだけど、ほら、昔は黒くて中身が見えない袋を使っていたでしょ。その時は増改築のことしか考えていなかったんだけど数日後、片づけがひと段落したら血の気が引いたよ」。

オバ記者
1700万は無いと思うけど、現金捨てないように気をつけよっと(写真は千葉県柏市の『道の駅しょうなん』まで原チャリで遊びに行った時)
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なんとWさんは黒い袋の中に現金を入れて廊下のすみの目立たないところに置いておいたそうな。その額1700万円! それがない!

清掃局に問い合わせたり、ゴミ集積所まで見に行ったけれどあるわけがない。こうして、ゴミになる現金が、かなりあるらしいよ。

◆ライター・オバ記者(野原広子)

オバ記者イラスト
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1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。

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