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綾野剛、新人を導く先輩俳優としての器の大きさ 映画『カラオケ行こ!』で見せた抑制の効いた演技

『カラオケ行こ!』場面写真
綾野剛が主演する人情コメディ(C)2024『カラオケ行こ!』製作委員会
写真7枚

綾野剛さん(41歳)が主演を務めた映画『カラオケ行こ!』が1月12日より公開中です。『オーバー・フェンス』(2016年)などの山下敦弘監督と綾野さんが初タッグを組んだ本作は、“カラオケ”をモチーフにした人情コメディ。新人からベテランまでの妙演が光る、笑って心が温まる作品に仕上がっています。今回は、本作の見どころや綾野さんの演技について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説します。

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手堅い布陣でユニークな物語を描出

本作は、マンガ家・和山やまさんによる『カラオケ行こ!』を、山下敦弘監督が映画化したものです。

山下監督といえば『リンダ リンダ リンダ』(2005年)をはじめとし、数々の名作を手がけてきた監督ですが、本作で主演を務める綾野さんとの映画づくりはこれが初。綾野さんが主演した人気ドラマ『MIU404』(2020年/TBS系)の脚本家・野木亜紀子さんを迎え、手堅い布陣でユニークな物語を描き出しています。

『カラオケ行こ!』場面写真
(C)2024『カラオケ行こ!』製作委員会
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軸となるのは、歌が上手くなりたいヤクザと、中学で合唱部の部長を務める少年の交流。ときにクスリと笑え、またあるときにはポロリと涙が落ちてしまう、そんな作品です。

合唱部の部長がヤクザに歌唱指導!?

ある日、ふと中学生たちの合唱コンクールの会場を訪れたヤクザの成田狂児(綾野)。

彼はそこで美しい歌声を持つ少年を発見します。少年の名前は、岡聡実。合唱部で部長を務める存在です。

そんな聡実に、狂児は歌唱指導を頼みます。彼が所属する組ではカラオケ大会があり、最下位の者には恐ろしい罰ゲームが待っている。だから狂児はどうにかして上達しなければならないのです。そんな彼の勝負曲はX JAPANの『紅』。

狂児の半ば強引な依頼に、聡実は仕方なく応じるかたちに。成長期特有の悩みを持つ聡実と、いつだって穏やかで優しい狂児。やがてふたりの関係は、特別なものへと変化していくのです。

超新星・齋藤潤がすごい

本作は主として、狂児と聡実の関係にフォーカスしています。これまでにも綾野さんは主演俳優として作品の看板を背負える存在だと証明してきましたが、本作の場合は彼ひとりの力でどうにかなるものではありません(もちろん、どんな作品だってそうですが)。狂児の「相方」ともいえる聡実を誰が演じるのかに勝負はかかっています。

『カラオケ行こ!』場面写真
(C)2024『カラオケ行こ!』製作委員会
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そんな聡実という大役を演じているのが、齋藤潤さん。現在16歳の彼は、まだ俳優としての活動をスタートさせたばかりの存在です。

とはいえ、ドラマ『トリリオンゲーム』(2023年/TBS系)では目黒蓮さん(Snow Man)演じる天王寺陽の中学時代の姿を、映画『正欲』(2023年)では磯村勇斗さん演じる佐々木佳道の中学時代の姿を演じています。この事実に、彼の俳優としてのポテンシャルの高さを感じます。

本作の聡実役は、オーディションで掴んだもの。終始ローテンションな性格ながらも狂児の優しさに対して心を開いていく過程を繊細に演じ、齋藤さんからすれば大先輩である綾野さんとともに、これ以上ない狂児&聡実コンビを生み出しているのです。

『カラオケ行こ!』場面写真
(C)2024『カラオケ行こ!』製作委員会
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そして、狂児の所属する組の組長を北村一輝さんが、聡実の所属する合唱部の顧問を芳根京子さんが演じているほか、橋本じゅんさん、やべきょうすけさん、坂井真紀さんらが脇を固め、それぞれの役どころから作品を支えています。

そんな本作の中心に立っているのが、綾野さんというわけです。

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