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「犬の歯周病」は万病のもと!心臓や腎臓の疾患につながるケースも 1日1回の歯みがきは欠かせない

「犬の歯周病」は万病のもと(Ph/イメージマート)
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人間と同じように、犬や猫にも歯周病はある。特に、犬の場合は動物病院に入院する理由のトップがこの歯周病。中高齢になると、リスクが高まる。予防するには、どうしたらいいのか。獣医師の内山莉音さんに解説してもらった。

歯周病は犬の手術件数、入院件数のトップ

犬が動物病院に入院する理由で最も多い疾患が、実は歯周病だ。「アニコム家庭どうぶつ白書2023」によれば、手術や入院はともに歯周病によるものが最も多く、手術は1万5655件、入院も7670件にも及んだ。

獣医師の内山さんによれば「歯周病になったら必ず手術というわけではありませんが、進行したものは全身麻酔をかけて処置するしかないので、歯周病の手術件数、入院件数は比較的多いですね。生涯に2回受ける子もいますし、それ以上になる子もいます」とのこと。

犬の歯周病の手術では、歯と歯肉(歯ぐき)の間に付着した歯石を除去したり、歯の裏や歯周ポケットなど、家庭ではみがきにくいところまでみがいて歯垢(しこう)を落としたりする。入院日数は平均1.5日ほど。

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犬の歯周病の手術では歯と歯肉(歯ぐき)の間に付着した歯石を除去(Ph/イメージマート)
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「歯周病による入院は、日帰りで済むケースもありますが、用心して麻酔後の経過を病院で1、2日診るケースもあります。犬は病気の治療のためと理解して、長時間、口を開けてじっとしていてはくれないので、全身麻酔をかけるしかありません。中には、無麻酔での処置を行うクリニックやペットサロンもあるようですが、麻酔をかけた上での処置に比べると、歯周ポケットの深い部分などに歯垢や細菌が残る可能性があるので、私はおすすめしません」(内山さん・以下同)

なお、全身麻酔に関連して犬が命を落とす確率は2000年代で0.17%という研究結果が報告されている(鳥取大学農学部共同獣医学科獣医画像診断学教室の村端悠介助教、2015年)。飼い主さんは麻酔のリスクと治療効果を考えて、納得のいく選択をする必要がありそうだ。

歯の周りで炎症が起き、さらには内臓にも…

そもそも、歯周病とはどのような病気なのか。改めて、内山さんに聞いた。

「口の中に食べかすが残っていると、そこに細菌が集まってきて、歯肉など歯の周りの組織に炎症が起きます。これが歯肉炎で、さらに歯を支える顎の骨にまで炎症が起きている状態を歯周炎といいます。これらを総称して歯周病です」

口臭がするようになったら、歯周病は始まっているかもしれないとのこと。歯に歯石が付いたり、歯肉が腫れる症状が出ることもあり、ひどくなると歯が抜けたり、頬に膿(うみ)がたまったり、顎の骨が溶けたりすることも。

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歯周病がひどくなるとさまざまな悪影響が(Ph/イメージマート)
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「また、歯周病は口の中だけの病気ではなくて、全身に悪影響を及ぼします。統計からも、歯周病の犬は、そうでない犬に比べて心臓疾患や腎臓疾患にかかる割合が高いことが分かっています。歯周組織の細菌や炎症関連物質が血流に乗って全身へ運ばれて、さまざまな疾患を引き起こすと考えられています」

歯周病は、進行すると口の中だけではとどまらず、万病のもとになりかねない、恐ろしい病気なのだ。なお、犬が歯周病にかかる確率は加齢に比例して上がり、5歳未満では5%を切るが、6歳になると10%に達する。また、小型犬に多いことがわかっている。

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