人間関係

脱ぎっぱなしが当たり前のだらしない夫を改善する方法とは?『夫のトリセツ』著者が解説

ゲーム感覚で「ぱなし」改善を夫婦で楽しむ

女性は、言わずともやってくれる「臨機応変な思いやり」に愛を測りがちですが、男性は「定番を緻密のこなすこと」で生き延びてきた脳です。「臨機応変な思いやり」で愛を測ると、愛がないってことになって、とても危険です。

癇に障る部分が多いほど夫婦は完璧?

「臨機応変な思いやり」は無理でも、「定番タスク」を着々と増やしていけば、やがて、素敵な暮らしの相棒になります。逆に言えば、定年退職までに、「暮らしの相棒」に育てておかないと、たいへんなことに。

そして、「定年退職までに、いくつの定番タスクを定着させられるか」なんて具合にゲーム感覚で楽しんでもらえるといいかもしれません。

男女は、脳の機能を、分け合って使っています。得手不得手がきっぱり違うほど、完璧なペアであることは間違いありません。違うから、癇に障るけど、違うからこそ、素晴らしい。つまい、癇に障る夫婦ほど、最強にして完璧なペアだといえます。

男女の脳の違いを知らないままで、「この夫は私に誠意も愛もない」と思い込んでしまうのは悲しいこと。男性の「ぱなし」には大らかに対応し、腹が立たないシステムを作ってくださいね。

◆「男性脳」「女性脳」について

男女の脳は、解剖学的には大きな違いがあるとは言えません。同じ器官で構成された脳であり、フルスペック(機能の取り揃え)はまったく同じ。ともに完全体です。しかしながら、脳には、「とっさに優先して使う神経回路」があり、その「優先回路」に性差傾向が見られます。

例えば、トラブルが生じたとき、「ことのなりゆき」を解析して、根本原因に触れようとする人と、「今できること」に集中して、危機回避をはかる人がいます。前者は女性の多く、後者は男性に多いのです。

あるいは、何かの気配を感じて緊張したとき、「広い範囲に目を走らせて、動くものに瞬時に照準を合わせる」人と、「近くを万遍なく見て、大切なものから意識をそらさない」人がいます。前者は男性に多く、後者は女性に多いのです。

いずれも、それぞれの脳が、生殖の使命を果たすために優先すべき回路なのでしょう。人類の男女は、互いに別々の「優先回路」を選択することによって、互いを守り合い、子どもを無事に育て上げてきたのです。

「優先回路」の存在と、その性差傾向は人工知能開発の現場で発見され、2013年には、ペンシルベニア大学の研究グループが男女の脳の神経信号特性を可視化して発表しています。

このような「とっさの優先回路の類型」を、私は便宜上、「男性脳」「女性脳」と呼んでいます。

とっさに別々の言動を取る2人は最強のペアなのに、人は自分と違う言動をとる相手にイラつき、愚かだと思い込む癖があります。なぜか多くの人が「脳は万能で、男女は同じ」と信じ込んでいるから。「自分ならこうする」のに、そうしてくれない相手は不誠実だと断じてしまうからです。

私が提唱する“感性コミュニケーション”では、「脳がとっさにすること」にはバリエーションがあり、特に男女は対極の使い方をしがちであると知ることを推薦しています。男女の深い相互理解は、その知からしか始まりません。

◆教えてくれたのは:脳科学・人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さん

脳科学・人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さん
脳科学・人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さん
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株式会社 感性リサーチ代表取締役社長。人工知能研究者、随筆家、日本ネーミング協会理事、日本文藝家協会会員。人工知能(自然言語解析、ブレイン・サイバネティクス)、コミュニケーション・サイエンス、ネーミング分析が専門。コンピューターメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳と言葉の研究を始める。1991年には、当時の大型機では世界初と言われたコンピューターの日本語対話に成功。このとき、対話文脈に男女の違いがあることを発見。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。2018年には『妻のトリセツ』(講談社)がベストセラーに。以後、『夫のトリセツ』(講談社)、『娘のトリセツ』(小学館)、『息子のトリセツ』(扶桑社)など数多くのトリセツシリーズを出版。http://ihoko.com/

構成/青山貴子

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