趣味・カルチャー

“アフロ記者”稲垣えみ子さんが考えるセカンドライフ「やりたいことを見つけなきゃ」と気負わなくていい

セカンドライフは、自由や豊かさの価値観を見直すチャンス

稲垣さんは30代のころからヨガを続けている。当時できなかったポーズも、50代半ばのいまは楽々とできる。4年間、毎日のように続けたピアノも、憧れの曲に挑戦を続けている。

「ヨガもピアノも、すぐには上達できない。でも逆にいえば、時間さえかければちょっとずつできるようになります。続けていることで、歳をとるのが嫌だという気持ちが薄れてきました。自分になかった新しい価値観を教えてくれたので、出会ったことに感謝しています。でも、私がそうだからといって、無理に趣味を探さなくてもいいんですよ。

稲垣えみ子さん
趣味は無理に探さなくてもいい
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生活を充実させなきゃいけない、と焦燥感にかられるのは、ファーストライフの価値観をセカンドに持ち込んでしまっている気がします。子供を自立させたから今度は自分が輝かなきゃ、という人もいますが、もしその『輝く』ってことが、他人に評価されることを物差しにしてるんだとしたらすごくもったいない。

他人からどう見えようが、どんなくだらないことでも、うまくできてもできなくても、何かを全力でやっていることそのものが『輝いている』ってことなんじゃないでしょうか。そう思うだけで生きることはグッと楽しくなる。残り時間の限られた第2の人生こそ、そんなふうに思い切って価値観を変えるチャンスだと思うんです。

稲垣えみ子さん
他人の評価は気にせず、何かを全力でやってみる。第2の人生は価値観を変える絶好の機会
写真7枚

ファーストの価値観のままセカンドで闘おうと思ったら、絶対に負けます。若くもないし、衰えていくし。新たにやりたいことを見つけなきゃ!と気負うこと自体がファーストライフの呪縛ですよね。急がなくてもいいんです」

◆フリーランサー・稲垣えみ子さん

稲垣えみ子さん
フリーランサー・稲垣えみ子さん
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1965年生まれ。愛知県出身。朝日新聞社で論説委員、編集委員などを歴任。2016年に50歳で退社し、フリーランスに。著書に『魂の退社』『寂しい生活』『人生はどこでもドア』『一人飲みで生きていく』など。『もうレシピ本はいらない』で第5回料理レシピ本大賞エッセイ賞を受賞。今年1月、40年ぶりのピアノ体験を綴った『老後とピアノ』(ポプラ社)を出版。

撮影/浅野剛 取材・文/小山内麗香

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