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FPが特に注目している利回りの高い2つの債券の種類とは?|賢い債券投資【後編】

考えている女性
実際に債券投資を始める場合どこに注目して買えばいいのか?(Ph/PhotoAC)
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老後に向けて少しでも資産を増やしたいと考える人は多いでしょう。でも、投資初心者がいきなり始めるのはリスクもあります。そこで、『定期預金しか知りませんが、私、本当にお金持ちになれるんですか?』(秀和システム)をこのほど出版したファイナンシャル・プランナーの渡邊一慶さんがおすすめするのが債券投資です。【前後編の後編】

→賢い債券投資【前編】はコチラ

債券の注意ポイント|信用度が低くて利率の高い債券は“買い”?

世界最大手のスイスのプライベートバンク「UBS銀行」で世界中のお金持ちからお金を預かり増やしてきた渡邊さんによれば、“手堅い資産形成”を好むスイスのお金持ちは、株式よりも債券投資を好む人が多いそうです。

「値上がりと値下げの振れ幅が大きい株式より、安定的に資産を増やしていけるという理由で債券を好む人が多い。私自身も、堅実に資産を増やすなら債券をおすすめします」(渡邊さん・以下同)

では、実際に買うならどこをチェックすればいいのでしょうか?

OKとNG
債券投資を検討する時は3つの条件をすべてクリアできたもののみがベター(Ph/PhotoAC)
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「そもそも債券投資を検討するときは、利率に満足できるか、発行体の信用力は大丈夫か、満期まで保有できるかを考えて、3つの条件がすべてクリアできた場合にのみ買うことをおすすめしています。その中で判断しづらいのが、発行体の信用力でしょう。これは、『格付け』と呼ばれる指標が参考になります」

格付けが高いほど利率が低い?

格付けとは、債券を発行する国や企業などの財政状態や、元本や利息の支払いが約束通りできるかといったことを格付け会社が分析して、ランク付けしたものです。最も高いランクが「AAA(トリプルA)」で、一番下は「D」です。

「ちなみに、公共債と民間債を比較すると、公共債の方が格付けが高くなる傾向があります。国や都道府県が破綻するリスクよりも、一般の事業会社が破綻する確率の方が高いからです。

とはいえ、格付けが高い国債は信用力と安全性が高い反面、利率が低いというデメリットもあります。その点、信用力が低い発行体が債券を発行するときは、広く債券を買ってもらいたいため高い利率を設定しますから、私たち個人投資家にとってはより大きなリターンを期待できるというメリットがあります」

債券の注意ポイント|利回りの高い「ハイ・イールド債券」と「劣後債」も視野に

こうした格付けの低い債券こそ、ねらい目だと渡邊さん。その1つは「ハイ・イールド債券」と呼ばれる債券です。

「格付けがBB以下の債券を、『ハイ・イールド債券』(high=高い、yield=利回り)といいます。これは、信用力が低くて格付けが低い債券を意味し、投資適格債券と比較すると少し財政状態が悪く信用力に不安が残ります。ただしその一方で、高い利息が受け取れるという魅力があります。

ちなみに、格付け上信用力に不安が残るといっても、実は日本では誰もが知っている有名企業が発行している債券が多く、高い利息を目当てに買う人も少なくないんです」

お金
信用力が低い債券は不安だか利息が高いという魅力がある!(Ph/PhotoAC)
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渡邊さんがおすすめするもう一つの債券は、「劣後債」。劣後債とは、企業が発行する債券(社債)の一種ですが、一般的な普通社債に比べて、元本や利息の支払い順位が劣ります。

「例えば、A社の株式、普通社債、劣後債と3種の債券を保有していた場合。A社が解散または破綻した場合、会社に残っている財産の一部が投資家に返済されます。第一に返済されるのは、普通社債を保有している人。次に返済されるのは劣後債を保有している人。最後に返済されるのは、株式を保有している人。つまり、劣後債は、発行体に万一のことが起きた場合、利息の支払いや元本の返済順位が、普通社債より劣る債券です。ただしその反面、劣後債は普通社債に比べて利率は高いという特徴があります。

つまり、発行体が破綻しない限り、利息の支払いや元本返済には影響がないため、高い利息がもらえるという点でメリットがあります。この企業は破綻すると思って債券を買う投資家はいませんよね。債券投資は満期まで保有することが前提ですので、発行体が破綻しなかった場合は、普通社債よりも劣後債の方が利回りが高くて魅力的なのです」

不安な人は投資信託で買うのがおすすめ

それでも不安な場合は、個別の債券を単体で購入するのではなく、いくつかの債券をまとめて購入する投資信託という仕組みを利用すれば、リスクを分散できます。

投資信託イメージ
リスクを分散できる投資信託を利用するという手もある(Ph/PhotoAC)
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「同じ金額を1つの債券だけに投入するのと違い、複数の債券に分散すれば、そのうちの1つで損失が出ても、他の4つに損失が出なければ大きな損失にはなりませんから。しかも、1万円程度から世界中に分散投資ができます」

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