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65歳オバ記者が振り返る「麻雀」で徹夜を繰り返していた30年前、「何かにハマる理由は1つじゃない」

オバ記者
今回の病気がきっかけで昔をいろいろ思い出したオバ記者
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昨年、入院と手術を経て境界悪性腫瘍であることがわかった、ライター歴30年を超えるベテランのオバ記者こと野原広子(65歳)。退院から5か月経つが、病気を経験していま思い出すのはなぜか30~40代にハマったという「麻雀」についてだった。

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麻雀台にしがみついていた30~40代

昼も夜もなく麻雀台にしがみついていた30代、40代の私。あの20年がなかったら、こんなことにならなかったのかなと、思うんだわ。昨秋、65歳にして「卵巣がんの疑い」で大学病院で6時間に及ぶ大手術をして5か月が経過。ちょっと無理をすると翌日、起き上がれなくなったりするけれど、規則正しい生活をすると、「元に戻った?」と思うほど体が良く動く。それで1か月前から毎週日曜日に区のスポーツセンターでヨガをしているんだけどね。

オバ記者
昨年手術を受けた術後の1枚
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「野原さんが麻雀にハマっていた時期があったなんて、初めて聞きました」と言ったのは、この連載の担当編集者・O君。そう言われてみると彼と麻雀は入れ違いなんだよね。それまで人に聞かれれば1日20本と答えていたけれど、実は30~40本の喫煙者だった私はさまざまな禁煙グッズを試し、雑誌の企画で禁煙セラピーを受けていたけれど、しばらくはガマンできても、いつの間にかスーッ、パッパ。

禁煙がうまくいくと麻雀熱も冷めた

そうしたら「これでやめましょう」とさっそうと現れて東京女子医大の禁煙外来に連れて行ってくれたのが、当時、雑誌編集部にいた編集O君だったの。このときに飲んだ禁煙補助薬のおかげでやめられたのはタバコだけじゃない。なぜかあれほど私を夢中にさせた麻雀熱まですっかり冷めちゃったんだよね。

オバ記者の母親
母ちゃんが生きいてたら怒られそう
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今だから言えることだけど、当時の私は病院にいったら間違いなく依存症と診断されたね。依存症がなにか、ひと言でいえば「わかっちゃいるけど止められない」よ。あの頃の私だったらこうして麻雀という2文字が書けなかったもの。書くまでもない、頭に浮かんだだけで、これからどこの雀荘に行くかで頭がいっぱいで、そのためにサッサと仕事を終わらせる、くらいだったら健全な趣味なんだけどね。

『麻雀放浪記』にやられたのがきっかけ

私と麻雀の出会いは映画なの。和田誠監督で、鹿賀丈史、真田広之、大竹しのぶが出演していた白黒映画『麻雀放浪記』にやられたのよ。が、セリフのかっこよさや映像の斬新さにすっかり魅了されたものの、ストーリーの一部のなっている麻雀の上がり手がわからない。

麻雀
麻雀にハマっていたことは人に言えなかった(Ph/イメージマート)
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今思えば、映画が発表された1984年当時は町のあちこちに雀荘があって、麻雀はサラリーマンのたしなみだったのね。

だから映画を見たというと、男たちは口々に「上がり手がわかるともっとあの映画が面白くなるよ」と言ったのよ。

それが頭から消えないうちに、今度は西原理恵子さんの初期の大ヒット漫画『まあじゃんほうろうき』が私に迫ってきた、ように感じたの(笑い)。麻雀を男っぽいモノクロの世界のものだとどこかで思っていたのが、西原さんのかわいいカラフルな絵で、ますます雀荘の敷居が低くなった、と当時の私は思ったんだね。

「愛だの恋だののほうこそ絵空事」

将棋と違って麻雀はベテランで強いから勝つわけではなくて、怖いもの知らずでイケイケどんどんの初心者が勝ったりするのよ。私の場合、まさにこのパターンだったの。

オバ記者
昔はタバコと麻雀が生活の一部だった(写真は入院していた病室から見えた景色。遠くに見えるのはスカイツリー)
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「またチョンボかよ。オレ、こんな手だったのによ」と、学生さんに怒られたりしながらも、ビギナーズ・ラックの私はとんでもない手ができたりする。「えっ、こんなことあり?」と男の子たちが立ち上がって驚いたりして、そんなこんなが楽しくて仕方がない。

店には郷ひろみの『僕がどんなに君を好きか、君は知らない』と、広瀬香美の『ロマンスの神様』、そして森高千里の『私がオバさんになっても』が耳にこびりつくほど流れていたけれど目の前に並んだ麻雀牌に比べたら、愛だの恋だののほうこそ絵空事。何言っちゃってんのってハナで笑っていた私。

そうこうするうちに、麻雀は私のライフスタイルの一部で、仕事が終われば雀荘へ直行よ。雀荘に行けば徹夜だし、次の日の予定がなければ体力が続く限り遊んでいたっけ。当時、私は小さな編集プロダンクションを経営していたから、たまには飲み会にも出なくちゃならないし、人付き合いもある。でも正直、これがうっとうしくてたまらなくなったんだわ。

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