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66歳オバ記者、長年悩まされた「胃潰瘍」の激痛 今振り返って思う「痛みは悪いことばかりじゃない」

激痛→病院→胃カメラ→薬…しばらくして激痛

「胃潰瘍になる原因は、まあ、ストレスですね。ストレスのない生活がムリなら、手術して患部を取る方法もありますが、そこまで重症ではないので様子を見ましょう」という医者のこの言葉、当時10年間で何回聞いたことか。

激痛。病院に行く。胃カメラ検査。結果を聞きに行く。「様子をみましょう」と言われ処方された薬を飲む。ケロリ。胃潰瘍患者であることを忘れる。薬が切れても病院に行かずお酒にギャンブル、ときどき仕事で徹夜。激痛。これを何回転したんだ、私。

激痛のきっかけは決まっているの。ビールとコーヒーよ。このふたつの飲み物がヤバかったの。悪くすると1、2時間後には痛みでのたうち回る。なら、飲まなきゃいいけど、2回に1回はスルーなのよ。世の中はバブル全盛期。私個人はギャンブル依存症が始まったばかり。おまけに見栄っ張りの私は、人に胃潰瘍のことは知られたくない。

ビール
激痛のきっかけはビールかコーヒー。わかってるのにやめられなかった(Ph/photoAC)
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で、くいッと飲む。うまいっ! さぁ、どっちだ。痛くなるか、ならないか。もう、もし今の私があの頃の私に会ったら、単細胞の頭を張り倒していたわよ。

「胃潰瘍の原因はストレスだって聞いているでしょ? 全然、違うんだよ。なんとかという菌が原因だという学説が外国で発表されて、今、世界の医学界で話題になっているんだって」

意外なことを私の耳に入れたのは、かかりつけの歯科医でね。結果的にそれは大正解。その菌はヘリコバクター・ピロリ菌で、5歳までに飲んだ井戸水の中にその菌がいると胃潰瘍になるリスクが爆上がりする。ピロリ菌検査をして陽性なら、1週間、抗生物質などの薬を飲むと大半の場合は除菌に成功する、というのが今の常識なんだよね。私も42歳のときに除菌してから胃潰瘍の痛みからは解放された。

医者とはいえ、人の体のことを全部わかっているわけではない

この常識が、5年前に59歳で亡くなった年子の弟と、その8か月後に亡くなった義父に届かなかったんだよね。ふたりともピッタリ同じ場所にできた胃がんが原因で亡くなったんだけど、2人とも胃潰瘍になったのが、まったく痛みを感じないところだったの。あの痛みがあれば、ふたりとも病院に行ったはずでそうしたら除菌もしたって。

オバ記者
後ろに写っているのが義父
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そんなことがあって思うのは、「痛みは悪いことばかりじゃない」ということと、「医者とはいえ、人の体のことを全部わかっているわけではない」ということ。

除菌がまだ保険診療ができなかったときに、ある病院の若い医師に、「胃潰瘍はピロリ菌が原因という学説をどう思いますか?」と聞いたらね。「そんなこと、ぼくに聞かれたってわかるわけないでしょッ」とキレられた。

その時はなんて医師だと怒ったけれど、今にして思えば、お上が決めたことをキチンとするのが仕事の医師にそんなことを聞いた私が悪かったと思う。

オバ記者
医者頼みではなく自分で調べることも大切
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とはいえ、自分の体は替えがきかないから、医師に全部おまかせしたらダメ。自分で調べられることは調べる。幸いネットには患者と医師、両方の解説や体験談がいっぱいあるから、ほんとうにいい時代になったと思うわ。

◆ライター・オバ記者(野原広子)

オバ記者イラスト
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1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。

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