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【大塚寧々 ネネノクラシ#58】30年以上探し続けた信州の蕎麦店 「探していたお店のような気が…」一口食べてみると

忘れられない蕎麦の味があるという寧々さんだが…(Ph/中野修也(TRON))
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女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第58回は、寧々さんの「思い出の蕎麦」について。

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まだ10代だった頃、母と二人で信州の方に旅行に行った。そのときに入ったお蕎麦屋さんが、ずっと忘れられずにいた。大きな古民家で、お蕎麦屋さんというよりは、田舎のおじいちゃんおばあちゃんの家に遊びに来たようなどこか懐かしく落ち着く、心が温かくなる素敵な雰囲気だった。

メニューはシンプルに十割のもりそばだけで、あとは自家製のお漬物だ。蕎麦の香りが濃く、その美味しさに「蕎麦ってこんなに美味しかったんだ!」とものすごく感動した。あまりの美味しさに、もう一枚追加したくらいだ。

私はこのお店と出会ってから蕎麦が大好きになった。蕎麦茶の香ばしい香りも、そばがきも、そば米も好きになった。大人になってからは、日本酒を呑みながら蕎麦をいただく事も覚えた。そば畑の白い花の景色を見ると嬉しくなる。時々信州の方に行くと、ああ~あのお蕎麦屋さんに行きたいなと思うのだが、私も母もお店の名前を覚えていなかった。当時の手帳に書いたような気もするのだが、30年以上経てばみつからない。雑誌などで蕎麦特集があると、チェックしたりするのだがどこも違う気がする。

探していたお店のような気が…

それから30年以上経ち、母と信州に行った時に地元の方に蕎麦のお勧めのお店を聞いたら、私と母が探していたお店のような気がした。詳しく聞いてみると、もうそこしか考えられない! 気持ちはどんどん高まる。もうこれは行くしかない! 母と一緒に、そのお店を目指して車を走らせた。

着いてみると合っているような、合っていないような…30年以上も経てば道も変わり、景色も変わる。建物も以前のような古民家ではない。不安な気持ちがよぎる。でも、お店というよりは、普通のお宅みたいな感じは変わらない。とにかく入ってみた。

注文してみると…探していた蕎麦なのか(Ph/大塚寧々)
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蕎麦を待っている間ドキドキした。しばらくすると大きな角ざるに入った蕎麦がきた。やっぱりここのような気がする。

一口蕎麦をいただくと…。

力強い蕎麦の味! ああ~ここだ!と懐かしく嬉しく思った。お店の方に聞いてみると、今はもうないが以前はお隣の母屋の方で営業していたそうだ。だから雰囲気がちょっと違う気がしたんだ。

蕎麦も自家の畑で育てていらっしゃるらしい。母も、嬉しそうだ。30年以上も経っているのに、お店を見つけられた事も、変わらない美味しさだった事も、そして何よりまだまだ元気な母と一緒に来られた事もすごく嬉しい。また近いうちに行こう。

◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)

1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。

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