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【大塚寧々 ネネノクラシ#63】いつか夫と歩きたい思い出の街「歩いているだけで、心が落ち着く場所」

寧々さんの思い出の街は?(Ph/中野修也(TRON))
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女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第63回は、寧々さんの思い出の地「アイルランド」について。

* * *
4、5年会っていなかった友達と、久しぶりに飲もう!という話になった。時が過ぎるのは早くて、彼女が遠くに引っ越した事もあり、お互い連絡はしていたがしばらく会っていなかった。東京に来るというので、どこのお店にしようかと話していたのだが、勢いで旅行に行こうという事になった!

この急な感じが、私はけっこう好きだ。しばらく振りに会った彼女は元気そうで、4、5年の空白もなくひと月前とかにも会っていた感じだよね!と笑い合った。

話題はつきず、ずっと喋っていて自分達でもびっくりだった。一緒に散歩をしていると可愛い花屋さんと雑貨のお店があり、入ってみる事にした。季節も冬なので、ドライフラワーの良い香りがお店中に広がっていて癒される。そこに、アイルランドのaranセーターが置いてあった。

懐かしい!と思わず手に取った。まだ学生だった頃、一人でアイルランドの父の友人の家に数日泊まらせて頂いた事がある。その時に連れて行ってもらったお店にたくさんのaranセーターがあった。学生の私には高価だったが、悩んで旅の思い出にと思い切って買った。

アイルランドで驚いた透明な空気感

父の友人の家はアイルランドの南の海が近い街だったが、それまで出会ったことがないようなアイルランドの透明な空気感にびっくりした事を覚えている。空気の粒子が細かくて美しく、太陽の光が柔らかで透き通っている感じがした。思わず何回も深呼吸したのを覚えている。

アイルランドのお店にはたくさんのaranのセーターがあった(Ph/大塚寧々)
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小さな街の、古い石の建物の重厚感に圧倒された。散歩しても、もう何十年も前だったからなのか、歩いても歩いても人と全くすれ違わず、一瞬私は どこかの空間に紛れ込んだのか、夢の中なのかと思った事が懐かしい。歩いているだけで、心が落ち着く場所だった。日本に帰りたくなくなり、ずっとここで過ごしたいと思った。

あれからイギリスには何度か行っているのに、アイルランドには行っていない。どうして足をのばさなかったのか悔やまれる。考えてみたら私が好きな音楽もアイルランド出身の方が多い。エンヤ、メアリー・ブラック、クランベリーズ、ギルバート・オサリバン。人間としての強さや、優しさ、どこか凛とした雰囲気、透明感、誠実さに惹きつけられる。いつか夫と二人でゆっくりとアイルランドの街を散歩したい。

◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)

1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。

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