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持ち家を元手に「老後資金」を確保!リバースモーゲージとリースバックはどう違う?メリット&デメリットをFPが解説

家の模型と現金
老後資金を作る方法としてリースバックやリバースモーゲージという選択肢も(Ph/photoAC)
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今の家に住んだまま、まとまった資金を得る制度のリバースモーゲージとリースバックをご存じでしょうか? 注意点も多い制度ですが、うまく使えば今の生活を大きく変えることなく、日々の負担や相続時の問題を軽減することができます。節約アドバイザー・ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんに、2つの制度について詳しく教えてもらいました。

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今の自宅に住み、まとまった生活資金を得る2つの制度

リバースモーゲージとリースバックという制度を利用することで、今の自宅に住み続けながら、まとまった資金を得ることができます。では、この2つにはどんな違いがあるのでしょうか?

自宅を担保にするリバースモーゲージ

リバースモーゲージは自宅を担保として生活資金を借り入れる制度で、債務者である利用者の死亡時に、担保となっていた家が売却され、金融機関が貸付金を回収します。

リバースモーゲージのメリット

リバースモーゲージは、自宅を売却することなくまとまった資金を調達できる点がメリットです。死亡後に自宅が売却されて元本が支払われるため、生存中は借り入れにかかる毎月の利息のみの支払いとなり、月々の費用負担を抑えることができます。

リバースモーゲージのデメリット

リバースモーゲージは、基本的に土地を含めた一戸建てが対象で、マンションは対象外となる場合が多く、利用できる人がその時点で限られます。

一戸建て
リバースモーゲージは基本的に一戸建てが対象(Ph/photoAC)
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さらに、あくまでも資金は借り入れのため、使い道は生活資金などの銀行が認めたものに限られることや、金利や不動産評価の変動などで利子の支払い額が増えたり、融資限度額を超過して返済を求められたりする可能性があるといったデメリットがあります。また、契約次第では残債が相続人に引き継がれることもありますので、注意が必要です。

自宅を賃貸住宅として借り直すリースバック

一方、リースバックとは、自宅を売却し、賃貸住宅として借り直す仕組みのこと。売却で買い取り代金を受け取り、賃貸契約を結び、毎月賃料を支払ってその住宅に住み続ける形です。リバースモーゲージで得られる資金は借り入れ資金ですが、リースバックは売却資金であるという違いがあります。

リースバックのメリット

リースバックは自宅を売却することになりますが、通常の売却と異なり、売却後も同じ家に住むことができるため、生活の変化を最小限にできることがメリットです。

さらに、通常の売却では買い手がなかなか見つからないことも多いですが、リースバックでは不動産会社が買い主となるため、短期間で売却することができます。加えて、リバースモーゲージのように資金を借り入れているわけではないため、売却代金の使い道も制限されません。

このほか、リースバックで現金化しておけば、複数の相続人がいる場合でも、相続の際に自宅をどう分けるかを考えなくていいため、持ち家より考えることを少なくできるといったことも可能でしょう。当然ではありますが、リースバックにする場合はあらかじめ相続人の合意を得ておくようにしましょう。

家の模型と遺言書
死後の相続についても考える機会に(Ph/photoAC)
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リースバックのデメリット

一方で、通常の売却と比べて、売却相場が安くなりやすいといったデメリットがあります。また、不足金額を自身で補てんできるのであれば問題ありませんが、売却価格が住宅ローンの残債額を下回る場合はリースバック自体を利用することができません。

リースバックのトラブル事例

リースバックはその家に住み続けられることがメリットですが、あくまでも所有者が変わり新たな所有者と賃貸契約を結ぶため、中身をしっかり確認しないと、契約の更新ができずに退去を求められることがあります。

例えば、3年や5年などの契約期間を定めた「定期借家契約」の場合、この期間が終わると契約が終了したものとみなされます。貸主と借主双方が合意をすれば、更新ではなく再契約となりそこから〇年といった契約となります。しかし、貸主側が再契約を拒んだ場合は、契約終了時には自宅から退去する必要があります。

修繕費の負担をどちらがするかでトラブルになるケースもあります。通常の賃貸契約の場合、借主の意図的過失によるものでない限り、修繕費は貸主が負担するのが一般的です。しかし、リースバック契約では特約で修繕費は借主(元の所有者)の負担と定められることがほとんどです。

他にも途中で所有者(不動産会社)が変わった、買い戻しができなかった、高額な諸費用を請求されたといいたトラブルがあります。やや複雑な制度ですので、しっかりと契約内容の確認をしておくことが大切です。

家の模型を持つ人に電卓を見せる男性
トラブル事例などを確認して要検討を(Ph/photoAC)
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どちらも計画的な利用が大切

リバースモーゲージは借り入れを最後に清算し、リースバックは売った後も賃貸契約で住み続ける方法です。国土交通省が発表した資料(chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001489272.pdf)によると、リースバック利用者の主な利用動機として「生活資金の確保」が最も多く、リバースモーゲージを選ばなかった理由としては、借り入れすることに抵抗があるという意見が多数でした。

どちらも一長一短あり完璧な制度とは言い切れませんが、どちらも契約内容をしっかりと理解して納得の上かつ、それぞれのリスクなども理解をして決めるようにしましょう。もちろん、相続人の了承を得ることも忘れずに。どちらもそれぞれメリットとデメリットがあるため、老後のライフプランを作成しつつ検討してみてください。

◆教えてくれたのは:節約アドバイザー・丸山晴美さん

丸山晴美さん
節約アドバイザー・丸山晴美さん
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節約アドバイザー。ファイナンシャルプランナー。22歳で節約に目覚め、1年間で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニの店長などを経て、2001年に節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザー、宅地建物主任士(登録)、認定心理士などの様々な資格を持ち、ライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどをテレビやラジオ、雑誌、講演などで行っている。https://www.maruyama-harumi.com/

構成/新藤まつり

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