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SixTONES・松村北斗と上白石萌音、朝ドラ共演時とは全く異なるアプローチで見せた「絶妙なバランス」

松村北斗と上白石萌音が朝ドラ『カムカム』ぶりの共演

松村さんと上白石さんが共演するのは、2021年から2022年にかけて放送された朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)以来のこと。同作でふたりは夫婦を演じましたが、その仲は戦争によって引き裂かれてしまいました。この不幸に対して方々から悲痛な声が漏れてきたものです。視聴者の誰もが心に傷を抱えることになったのではないでしょうか。

そんな2人が本作で演じるのは、すでに記しているように、それぞれに“生きづらさ”を抱える男女です。

『夜明けのすべて』場面写真
(C)瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会
写真18枚

“男女”とくくってしまうと、すぐに恋人関係を想像するかたがいるかもしれません。それはこれまでに多くの創作物の中で描かれてきたものですから、しょうがないとも思います。ですが男女の間に、友情でもなく、恋愛でもない特別な関係が成立することだってたしかにある。

『夜明けのすべて』場面写真
(C)瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会
写真18枚

絶妙な距離感で互いの心に触れる山添くんと藤沢さんの関係を、松村さんと上白石さんは『カムカムエヴリバディ』のときとはまったく異なるアプローチで立ち上げているのです。

バランスが絶妙なふたりの掛け合い

松村さんが演じる山添くんが抱えるのはパニック障害で、上白石さんが演じる藤沢さんが悩んでいるのはPMSによる症状。

山添くんは非常にマイペースな性格の持ち主です。発作が起きないように心を平穏に保つためには、これが正解だと思います。けれども他者の目には“自分勝手なヤツ”だと映るかもしれない。気遣いの人である藤沢さんには、やはりそのように映ります。そしてPMSの症状でイライラが抑え切れなくなった彼女は怒りを爆発させるのです。

『夜明けのすべて』場面写真
(C)瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会
写真18枚

このときの上白石さんの演技は、ぐいぐいと怒りのメーターが上がっていき、ある瞬間を機に一気に振り切れるもの。普段の藤沢さんはとても人当たりのいい人間ですから、当然ながら誰もが驚きます。観客である私たちも同じ。しかしいくら感情が振り切れるといっても、上白石さんの表現そのものは独りよがりなものではありません。これはあくまでも演技であり、演じるにあたって“見られている”という冷静な視点を持っているのが感じられる。さすがは主演俳優としてさまざまな作品の看板を背負う上白石さん。そして彼女のこの冷静で丁寧な表現が、松村さんとの掛け合いのハーモニーを生んでいるように思います。

『夜明けのすべて』場面写真
(C)瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会
写真18枚

すでに記しているように、山添くんは非常にマイペースな人物です。終始おっとりとしたローテンションで、周囲に流されることがない。そんな彼に対して藤沢さんはストレートに言葉を、感情を、ぶつけてくる。もしもこれがただ激しいだけでは、その後の展開にはつながらないでしょう。ふたりの関係は断絶しかねません。藤沢さんは怒りたくて怒っているわけではない。感情がコントロールできずに溢れ出してしまうのです。

いつしかこれをマイペースな山添くんは受け流すようになります。演じる松村さんは上白石さんの演技に変に引っ張られることなく、ただただ山添くんとして存在し続けます。それは上白石さんもまた然り。山添くんのペースに乗せられることなく彼女は感情を発露させます。いえむしろ、彼がマイペースであればあるほど藤沢さんの怒りはヒートアップする。本作はこの演技の掛け合いのバランスが絶妙なのです。

『夜明けのすべて』場面写真
(C)瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会
写真18枚

しだいにふたりのこのやり取りは、多くの観客にとって心地良いものとなることでしょう。ときにはクスリと笑えたりもします。『カムカムエヴリバディ』のときとはまったく異なる関係性で再会し、そのゆるやかな心の交流は私たちに“癒し”をもたらすのです。

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