エンタメ・韓流

鈴木亮平が“MER”とは別人の怪演!『孤狼の血』続編が描く“正義”のぶつかり合い

8月20日より公開中の映画『孤狼の血 LEVEL2』。2018年に公開され大きな話題を呼んだ前作『孤狼の血』の続編である本作には、主演の松坂桃李(32才)を中心に、鈴木亮平(38才)や村上虹郎(24才)など人気俳優が集結し、前作を上回るレベルの熱戦を繰り広げる作品となっています。

「孤狼の血 LEVEL2」の劇中写真
松坂桃李と鈴木亮平が共演。鈴木は”悪役”を怪演(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会
写真10枚

本作の見どころについて、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説します。

脇を固める豪華キャスト陣にも注目

本作は、作家・柚月裕子(53才)による小説『孤狼の血』シリーズ三部作を映画化したもの。数々の映画賞を総ナメにした『孤狼の血』に続いて白石和彌監督(46才)がメガホンを取り、広島の裏社会を舞台に原作には描かれていないオリジナルストーリーがとてつもない熱量で展開していきます。

主演の松坂は、前作で主演を務めた役所広司(65才)からバトンを受けての再登板となりました。松坂の演じる刑事・日岡の成長(変化)や、演じ手としての松坂本人の変化に着目するのも楽しみの一つなのではないかと思います。

「孤狼の血 LEVEL2」の劇中写真
(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会
写真10枚

一匹狼の刑事と”悪魔”と呼ばれる男との闘い

本作のあらすじはこうです。一匹狼の刑事・日岡(松坂)は、3年前に暴力組織の抗争に巻き込まれて殺害されたマル暴の刑事・大上(役所)の後を継ぎ、広島の街の秩序維持のため、警察と裏社会のタイトロープを担い続けていました。ところがある日、服役期間を終えて出所した上林(鈴木)の登場によって、何とか保たれていた街の秩序が崩壊し始めます。

「孤狼の血 LEVEL2」の劇中写真
(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会
写真10枚

上林は、世の中の一切の常識が通用しない、まさに“悪魔”とも呼べる恐ろしい男。やがて日岡は、上林の存在によって窮地に追い込まれていくことになるのです。

2018年の前作公開時、多くの観客に衝撃を与えた作品の続編とあって、脇を固めるキャストも錚々たる顔ぶれが並んでいます。新顔としては鈴木や村上を筆頭に、吉田鋼太郎(62才)、中村梅雀(65才)、寺島進(57才)、斎藤工(40才)、早乙女太一(29才)らが登場。

さらに、音尾琢真(45才)、滝藤賢一(44才)、中村獅童(49才)ら前作からの続投組の存在が、本作の世界観の強度を上げている印象です。誰もがよく知る俳優たちですが、ハードな内容の作品だけに、これまでに見たことのないほどの“危険”な表情や演技を見せており、新鮮味を感じられると思います。

暴虐の限りを尽くす鈴木亮平の“怪演”

本作を語るうえで一番の話題に上がるのが、やはり何と言っても鈴木亮平の“怪演”でしょう。「極悪非道」「残忍極まりない」、彼が演じる上林を見ているとこんな言葉がいくつも浮かんできますが、これらの言葉を持ってしても、その枠に収まりきれないほどの破壊力を感じさせます。

「孤狼の血 LEVEL2」の劇中写真
(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会
写真10枚

日本映画史に名を刻む悪役を怪演

例えば、口にするセリフのトーンと表情がズレていたりする時などは、見ているこちら側の足がすくんでしまうほどの恐怖。まさに怪演と言えます。上林の暴力行為の数々も度を超えていて(暴力に“度を超す”も何もありませんが…)、鑑賞中に目を背けてしまう観客も多いようです。

つい最近まで鈴木は、ドラマ『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)で善意の塊のような医師役を演じていました。これを観た後ではとても同一人物だと思えません。観ているこちらが人間不信になることはもとより、演じる鈴木の精神状態が心配になってしまうレベルです。それほどまでに凄まじい、日本映画史に名を刻むであろう悪役を演じているのです。

「孤狼の血 LEVEL2」の劇中写真
(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会
写真10枚

前作の役柄から大きな変身を遂げた松坂桃李

本作に凄まじさをもたらすのは、鈴木だけではありません。村上虹郎の健闘ぶりにも大いに心を揺さぶられます。彼が演じる“チンタ”は、主人公の日岡(松坂)を兄のように慕う人物。彼はヤクザでも警察でもありません。一筋の希望を胸に、いまを懸命に生きる一人の若者です。

そんな彼は、日岡の指示で“とある報酬”と引き換えに、危険な連中が集まる上林組にスパイとして潜り込みます。前述の通り、“悪魔”が率いる上林組。その中で危険を冒しながら悪戦苦闘するさまは、応援せずにはいられません。善悪や自身のアイデンティティに葛藤する若者像を、村上は鬼気迫る演技で立ち向かっています。

「孤狼の血 LEVEL2」の劇中写真
(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会
写真10枚

広島弁は前作よりも重い響き

そして、主演の松坂桃李の演技からも目が離せません。大物俳優、役所広司からバトンを受けての主演ということで、相応のプレッシャーがあったと想像できます。それも、過去に類を見ないほどのバイオレンスな作品なのだから尚のこと。

しかし本編を観れば、そんな心配は彼の登場シーンで吹き飛ばされます。見た目を威圧的な風貌にしていることや、登場シーンだからこそのクールでスタイリッシュな演出が施されていることも大きいでしょう。しかしそれ以上に、彼の口にする広島弁は前作のものと比べ明らかに重い響きを持っていますし、一つひとつの所作にも威厳がみなぎっています。

「孤狼の血 LEVEL2」の劇中写真
(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会
写真10枚

前作での青臭い新米刑事・日岡からは想像できないほど別人に変身を遂げており、登場シーンの瞬間に本作が前作を上回るものになっていると確信したのは筆者だけではないでしょう。

それぞれの“正義”のぶつかり合い

さて、ここまでいろいろと書いてきましたが、やはり観る人を選ぶ作品なのは事実です。流血や暴力シーンが苦手な人は注意が必要です(得意な人なんて、そういないとは思いますが…)。正直なところ筆者も、ちょっとだけ目を閉じたり、太ももをつねったりしながら鑑賞しました。しかし、それでも鑑賞後は「観て良かった」という感覚に浸れる魅力が本作はあるのです。

まず一つは、恐ろしいシーンばかりでなく、絶妙な塩梅でユーモアが織り交ぜられており、激しいスピードで物語が展開していくことです。この観点から言えば、一級品の爽快なエンターテインメント作品に仕上がっていると言えるでしょう。そしてもう一つは、作品から浮かび上がってくるテーマです。

「孤狼の血 LEVEL2」の劇中写真
(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会
写真10枚

それぞれに譲ることのできない正義

上林はもちろん、刑事である日岡やチンタにしても、決して褒められた人間ではありません。ところが彼らには、それぞれの“正義”があるように思えます。

例えば上林の場合、過酷な環境で幼少期を過ごした彼に居場所を与えた石橋蓮司(80才)演じる故・五十子会の会長に、忠義を尽くそうとしていた。本作における上林の暴挙の原点は、五十子会長の仇を取ろうという復讐心からきています。つまり彼にとって、この目的の邪魔者を排除することは正義なのでしょう。

「孤狼の血 LEVEL2」の劇中写真
(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会
写真10枚

少なくとも“悪”だという自覚はないはずです。また、日岡やチンタにも、譲ることのできない自身の正義がある。そんなそれぞれの正義のぶつかり合いを描いているのが本作なのです。自分の正義に、そして誰かの正義にどう向き合うか。凄まじい熱量のエンターテインメントを堪能しながら、そんなことを考えさせられる作品となっていました。

◆文筆家・折田侑駿さん

折田優駿さん
文筆家・折田優駿さん
写真10枚

1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。http://twitter.com/cinema_walk

●今必見の映画『ドライブ・マイ・カー』、西島秀俊、岡田将生らの“新たな顔”に出会える

●柳楽優弥、三浦春馬さんらが出演『映画 太陽の子』が今の時代に問いかけるものとは?

関連キーワード