更年期

閉経前後から急増する「GSM」|骨盤の”ゆるみ”チェックリスト&予防するヨガについて解説

聴診器を当てようとしている
エストロゲンの減少による下半身のトラブル「GSM」の解説&対策を紹介!(Ph/Photo AC)
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『いちばん親切な更年期の教科書【閉経完全マニュアル】』(世界文化社)の著者で産婦人科医の高尾美穂さんによると、閉経前後はエストロゲンの減少により、下半身のトラブルを抱える人が急増するといいます。中でも気づかないうちに起こりやすいという骨盤臓器脱について、詳しく紹介します。

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閉経前後の3大悩み~尿もれ、骨盤臓器脱、性交痛

更年期世代の下半身トラブルの代表的な3大悩みは、尿もれ、腟の乾燥からくる性交痛、骨盤臓器脱(こつばんぞうきだつ)です。

婦人科や泌尿器科で扱われるようになったGSM

これらをはじめとする下半身の不快な症状はかつて、「加齢によるしかたのないもの」とされてきたそうですが、今は、GSM(閉経関連尿路生殖器症候群) という総称で呼ばれ、婦人科や泌尿器科で扱われるようになっています。

GSMの多様な原因

GSMは、エストロゲンの減少からくる筋肉や皮下組織の衰え、難産や多産などで生じた骨盤底(こつばんてい)の損傷、遺伝的な体質などが原因で起こるそうです。

気づかないうちに進行する骨盤臓器脱とは?

骨盤臓器脱とは、腟口や肛門から臓器が出てくる症状のこと。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

骨盤底筋群の図説イラスト
GSMは骨盤底筋群が弱ると起こりやすい(Ph/Illust AC)
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骨盤臓器脱のしくみ

骨盤内の臓器は、前から膀胱、子宮、直腸の順に並んで、骨盤底筋にしっかり支えられて落ちることなくキープされています。骨盤底に収まるはずのこれらの臓器に負荷がかかり、骨盤底が緩んだり傷ついたりして起こる症状が骨盤臓器脱です。

骨盤臓器脱の原因

若いうちはエストロゲンにより筋肉量がキープされていますが、閉経前後にエストロゲンが減少することで筋肉が萎縮し、ゆるみが生じるのだと高尾さんは語ります。さらに、過去の長時間に及ぶ出産や多い出産回数、排便時の過度ないきみ、肥満による内臓脂肪の増加なども骨盤臓器脱の原因と考えられます。

股間を押さえる女性
尿もれはGSMのひとつ(Ph/Photo AC)
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骨盤臓器脱の種類

骨盤臓器脱にはいくつかの種類があります。

膀胱脱…膀胱が腟壁から飛び出た状態で、残尿感や膀胱炎の原因になります。
直腸脱…直腸が肛門の外に突き出した状態。排便時のいきみが主な原因になります。
子宮脱…子宮が腟から外に出た状態。腹圧がかかったときに起こりやすいそうです。

骨盤臓器脱は、膀胱脱、直腸脱、子宮脱内臓の順で頻度が高く、一度に複数の臓器が落ちてくることも少なくないといいます。くしゃみをすると尿もれしたり、腹圧をかけたときや座ったときに座面に違和感がある場合は、骨盤底が弱っていて骨盤臓器脱につながる可能性があります。

骨盤底のゆるみ度チェックリスト

椅子に腰掛ける女性
骨盤底のゆるみをセルフチェック!(Ph/Photo AC)
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骨盤臓器脱は気づきづらい症状なので、原因となる骨盤底のゆるみ度をセルフチェックしてみましょう。

□くしゃみをすると尿もれしたり、おならが出てしまうことがある
□運動やストレッチをしていると、腟から空気が出るのを感じる
□何かの拍子に、腟から空気が出て音が鳴ったことがある
□お風呂から出たあとに、腟から水が出てくることがある
□椅子に座ったときに、座面に何かが当たったような違和感を覚えたことがある
□自転車のサドルに当たる部分に痛みや違和感がある
□夕方になると、股間に異物感があることがある

1つでも当てはまる場合は、骨盤底のゆるみが疑われます。

骨盤臓器脱や尿もれなどGSMを予防するヨガ

骨盤低筋を鍛えることが、骨盤臓器脱や尿もれなどの予防に役立ちます。ここでは、腹横膜から骨盤底筋肉を強化する「スッキリZ」のポーズを紹介します。

「スッキリZ」のポーズのやり方

「スッキリZ」のやり方1
骨盤底筋群を鍛えるエクササイズのやり方【1】(『いちばん親切な更年期の教科書【閉経完全マニュアル】』〈世界文化社〉)より。以下同)
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【1】ひざを肩幅に開いてひざ立ちになる。足の甲を床につける。

「スッキリZ」のやり方2
骨盤底筋群を鍛えるエクササイズのやり方【2】
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【2】肩の高さに両腕をあげ、手のひらを下に向ける。目を正面に向け、ひじはまっすぐに伸ばす。

「スッキリZ」のやり方3
骨盤底筋群を鍛えるエクササイズのやり方【3】
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【3】手の位置を変えないようにしながら、背中に体重をかけていく。おへそを背骨に押し込むイメージで、首筋から背筋をまっすぐにし、肩を引く。この姿勢を10秒キープ。2~3セット、毎日続けることで自分では意識しにくい骨盤底筋が鍛えられる。

 恥ずかしいもの、と悩まず相談を

骨盤臓器脱や尿もれをはじめとするGSMは、「恥ずかしいもの」として人知れず悩んでいる人が大半なのだと高尾さんはいいます。しかし、これらの症状は年齢とともに誰でも起こる可能性があります。気になる症状があれば、我慢せずにすぐに産婦人科や泌尿器科を受診して相談しましょう。

◆教えてくれたのは:産婦人科専門医・高尾美穂さん

高尾美穂先生
婦人科医の高尾美穂さん
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女性のための総合ヘルスクリニックイーク表参道副院長。医学博士。スポーツドクター。ヨガドクター。東京慈恵会医科大学院修了。同大学附属病院産婦人科助教を経て2013年より現職。「すべての女性によりよい未来を」をモットーに、医療・ヨガ・スポーツの3つの活動を通じ、専門的な知識をわかりやすく伝える啓蒙活動に精力的に取り組む。テレビや雑誌、イベントなどで幅広く活躍するほか、YouTube「高尾美穂からのリアルボイス」を毎日更新。著書に『超かんたんヨガで若返りが止まらない』(世界文化社)など。https://www.mihotakao.jp/blog

いちばん親切な更年期の教科書【閉経完全マニュアル】

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