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【64歳オバ記者 介護のリアル】93歳母ちゃんが緊急入院、「最期に会えるかどうか。そればかりが気がかりだ」

オバ記者の母親
弟から「母ちゃんが吐いた」と電話が…(写真は昨年12月末、入所中の施設から病院へ定期検診を受けに行ったときのもの)
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ライター歴43年のベテラン、オバ記者こと野原広子(64歳)が、介護を経験して感じたリアルな日々を綴る。昨年、4か月間、茨城の実家で93歳「母ちゃん」を介護。その後、施設に入所した母ちゃんでしたが10日ほど前、体調に“異変”があり緊急入院。何があったのでしょうか。オバ記者がそのときの状況についてリポートします。

* * *

「とうとう来るべきときが来た」

「母ちゃんが吐いたんだって。それでご飯が食えねぇで、薬ものめねみて」と、弟から電話が入ったのは10日ほど前のこと。

認知症だけど体に異常がない高齢者の最期はどうなるか、YouTubeで医師が「食事をとれなくなります」と言っていたのを聴いていたばかりだった私は、とうとう来るべきときが来たかと思ったね。93歳の母親は認知症ではないけれど、体の衰えはどうしようもない。昨年8月初めから11月末までの4か月間、実家で介護をした私はその変化が手に取るようにわかるんだわ。

オバ記者の母親
近所の友人たちとおしゃべりを楽しむ母ちゃん
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体調がいい日は10年前と何ら変わらないんじゃないかと思うほど元気で、近所の年寄り仲間が来てくれたりすると、「耳が遠い」ってウソ?と思うほどの受け答えをする。でもみんなが帰ったあと、疲れてスッと寝入ってしまったり、ガマンしていたのかトイレで失敗したりしてね。

そんな理由がなくて、顔を見て「ん?」と思うこともあったっけ。なんて言ったらいいのかわからないけど、魂が体から抜けかけているような感じ。

V字回復しながらもゆっくり衰えていった

話しかければそれなりの返事はするけど、いつもよりワンテンポ遅かったり、時にはチグハグな答えが返ってくる。だけどちょっと心配すると、「ヒロコぉ、ヒロコよぉ」と大声で呼びつけて何かと用をいいつけられてホッとする。この繰り返しが数日続いて、このまま体のレベルが落ちていくのかなと思っていると、訪問看護師さんの前で盆踊りの動きを見せたりする。

オバ記者の母親
体のレベルが落ちて心配する日があるかと思えば、訪問看護師さんの前で元気な様子を見せるときも
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病院から自宅に帰って、私が介護をするようになって瀕死の状態から家の前を歩けるようになるまでわずか1か月。V字回復したことはしたけれど、同時にやわらかな上半円を描いて衰えていっていたのよね。

危篤状態から復活した母ちゃん
グッタリしていた退院時の母ちゃん
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お礼の言葉はなく「お世話さま」「ん!」

それがわかっているならやさしくしてやればいいのに。そんな仏心が出たときが危ないんだわ。なにせ、タダのばあさまじゃないんだもの。そのひとつがお礼の言葉よ。退院して数日後のこと。「ところてんが食いてえ」「ちめてえ(冷たい)水くろ(くれ)」と言葉が出るようになったので、シモの世話をし終えたとき「ありがとうは?」と聞いてみたの。そうしたら、「思ったことが口から出ねえんだよ」と言ったので、そんなものかと思ったら、なんと次から「お世話さま」だって。

最初のうちは、「はいはい」と答えていたけど、奥さまが使用人にねぎらいの言葉をかけるような口ぶりが、だんだん勘にさわってきたの。で、私が黙ったから不機嫌になったのがわかったんでしょ。しだいに何のお礼もいわず、自分が汚した床を「ん!」と言って指さすようになったの。

オバ記者の母ちゃん
感謝の言葉は無く、口から出てくるのは「お世話さま」と「ん!」
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