家事・ライフ

薄井シンシアさんが語る転職の考え方「リスクは避けずに計算する」「人からどう思われても痛くもかゆくもない」

リスクをひたすら忌み嫌うのは違う

――真理子さんは、看護師として手に職をつけていながら、何度も転職を経験されたのはどうしてですか?

真理子さん:私は子どもの頃、病気がちだったので、看護師さんのお世話になりましたし、憧れて看護師になったんです。ただ、実際に働いてみると、病院って職場としてはかなり独特だと思いました。詳しくは控えますが、私が働いている職場は狭い世界でいろいろと理不尽なことが頻繁に起きました。

シンプルにそれが嫌でしたし、患者さんは会社員がほとんどなのに、そういう一般企業で働いている人が当たり前に知っているようなことを私は何も知らなかった。この世界しか知らないまま生きていくのはどうなんだろうと思ったんです。

井上真理子さん
「『あのとき、やっておけばよかった』っていうのは“一番後悔する後悔”」と真理子さん
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せっかく手に職をつけたのに転職しなくても、という考えも分からなくないですが、転職がうまくいかない可能性より、動かない(転職しない)自分の将来のほうが怖いと感じていました。時間は戻らないので、チャレンジはしようと思ったときにしないと。「あのとき、やっておけばよかった」っていうのは“一番後悔する後悔”だと思うんですよ。やってみて失敗したときの後悔より大きいと私は思うので。

シンシアさん:なるほど。やっぱり真理子さんは絵を描く人だなと思いました。感性を大事にしている。私はバリバリに計算で動く人間だから思うんですが、真理子さんはこの看護師不足の国で看護師の資格と経験を持っていて、いつでも看護師に戻れるわけで、だから(転職という)冒険したほうがいいという判断が下せたんじゃないでしょうか。

真理子さん:確かに。(就職に)困ったら看護師の資格があるのは強みだなと思っているところはあります。

――せっかく手に職をつけた「のに」ではなくて、手に職をつけた「から」冒険できると。

薄井シンシアさん
「リスクをひたすら忌み嫌うのは違う」
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シンシアさん:計算できますよね。先日、外資系で働く女性から「海外に出てみたいけど迷っている」という相談を受けたんです。私は「すぐにも行くべき!」と答えました。日本は人手不足だし、英語のスキルや外資系企業で働いた経験は日本でごく一部の人しか持っていません。彼女が海外でうまくいかなかったとしても、帰国して働き口はいくらでもあるわけです。

私は、なんでもかんでも挑戦することがいいとは思いません。同じ会社に勤め続けることが悪で、転職が善だとも全く思わない。ただ、リスクをひたすら忌み嫌うのは違うと思うんです。リスクは避けるものではなく計算するもの。これはリスクがあるけどメリットが大きいし、損が出てもあとから取り返せるとか、そういう計算をした上でリスクを取っていけばいい。

真理子さん:生活困窮者への公的な支援もありますし、ざっくり言えば何か大失敗したとしても「日本って死なない国」だと思うんですよ。

シンシアさん:そんなに怯えなくていいのでは、とも思いますね。