エンタメ・韓流

玉置浩二「安全地帯は自分のふるさと」、37年ぶりの紅白で体現したその言葉の意味

ポプコン北海道予選で中島みゆきと競った

さらに安全地帯の始まりまで遡ると、中学2年生。玉置さんとギターの武沢侑昂さんがバンド「インベーダー」を結成、その後名前を「安全地帯」に変え、オリジナル楽曲を作り、ポプコン(ヤマハポピュラーソングコンテスト)にも積極的に出場したという。中学生でポプコンとはなんと早咲きな! 私が中学生の頃なんて、ただただオロオロしていただけである。

さらにテンションが上がるのが、彼らと同時期、同じ北海道大会でポプコン本選へのきっぷを競っていたなかの一人に、中島みゆきさんがいたことである。安全地帯の演奏を聴いて彼女は「プロが歌っている」と勘違いし、後に彼らが年下と知りビックリしたのだとか。想像しただけですごすぎる、中島みゆきと安全地帯が競う予選!!

第1回日本ゴールドディスク大賞授賞式にて(1987年、Ph/SHOGAKUKAN)
写真5枚

1977年には玉置さんがライバルバンドの六土開正さん、矢萩渉さん、田中裕二さんに声を掛け、安全地帯の完全形ができる。つまり全員、地元じゃ既にゴリゴリに上手い音楽小僧だったということか! デンジャラスな才能集団、安全地帯は1982年にメジャーデビュー。

私も1985年の『碧い瞳のエリス』からその扉を開き、底光りするような名曲に心揺さぶられた一人。『プルシアンブルーの肖像』『Friend』『あの頃へ』、そして猛烈につらいとき、何度も何度も支えになってくれた『ひとりぼっちのエール』!

絶対全員こだわりが強いであろう職人肌、天才肌の集まりが、ぶつかりまた寄り合って名曲を生み、60代半ばになった今もなお鳥肌が立つようなパフォーマンスを見せてくれている。聴いていて勇気が出ないわけがない!

ソロで初出場した紅白歌合戦では、『田園』を披露(1996年、Ph/SHOGAKUKAN)
写真5枚

待っていて良かった

そして2022年の紅白のステージ! 圧巻、ひたすら圧巻だった。玉置さんが盟友・田中さん、そして視聴している人すべてに語り掛けるように歌うソロ曲『メロディー』から始まり、メンバーが待つステージに移動して『I Love Youからはじめよう』へ──。

ああ、安全地帯は本当にブルーのライトが似合う。まさに高温の情熱! フワシャーッとほとばしるような音と声のエネルギーが画面を超え降りかかってくるようだ! 4人横並びになり、ギターの向きを合わせ弾く姿は失礼を承知で言う。クッ、キュート!!

一緒に拳を突きだし歌ったのは言うまでもない。アイラビュ、モーオーゥ……。

演奏を終え、「やったぜ」と称えるように、玉置さんがメンバーを肘で突く姿がなんとも「ふるさと」。待っていて良かった、安全地帯!

前述した1996年のツアーDVDに収録された終演直後の楽屋風景に、こんなやり取りがある。玉置さんが「みんな笑顔なのに最後1人だけ泣いてるんだもん」と田中さんにツッコミ、彼はナハハ! と照れ笑い、こう返していた。

「『メロディー』いつも泣いちゃうんだよなあ、あれ。どうしてもダメなんだ〜!」

◆ライター・田中稲

田中稲
ライター・田中稲さん
写真5枚

1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka

●デビュー35周年の工藤静香、カラオケで“追い静香”をしたくなる「魔力と中毒性」

●「つらいときは中島みゆきを聴け」『ファイト!』『地上の星』…感情のダムを放流する歌声

関連キーワード