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藤原竜也×松山ケンイチの“デスノートコンビ”が話題! 映画『ノイズ』は人間の本質をあぶり出した濃密なサスペンス

『デスノート』の“天才コンビ”が再共演

そんな俳優たちの中でも、何と言っても注目なのがやはり藤原と松山の組み合わせ。彼らといえば、映画『デスノート』で“キラ”と“L”という敵対するキャラクターをそれぞれ演じ、天才同士の闘いを繰り広げました。あの作品以来、およそ15年ぶりに本格的な共演が実現したのです。かつて2人が演じたのはいずれも特殊なキャラクターでしたが、本作で演じているのはごく普通の青年たち。それも、幼馴染みにして親友です。

映画「ノイズ」劇中シーン
(C)筒井哲也/集英社(C)2022映画「ノイズ」製作委員会
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黒木華、神木隆之介による化学反応にも注目

先述したように本作は“隠蔽劇”であるため、彼らの演技は非常に抑制が効いたもの。追い詰められているからといって、感情を外に発散するのではなく、内側に抑え込みます。焦りや苦しみ、怒りの感情を内面に抱えているさまが見て取れるからこそ、私たち観客にも緊張感が伝わってきます。数多くの作品で経験を積んできた2人の俳優のキャリアが再び交わる点は、本作の見どころと言えるでしょう。

さらに、圭太の心優しい妻役として黒木華が、圭太と純の弟的存在である警察官・慎一郎役として神木隆之介が奮闘。藤原と松山にとって、下の世代のトップ俳優であるこの2人が絡んでくることで生まれる化学反応にも注目です。

静かにあぶり出される人々の本質

本作には恐ろしい描写も少なからずありますが、登場人物が声を張り上げて暴れまわったり、感情的になって泣きわめいたりすることはありません。島民を巻き込みつつも、物語はあくまで淡々と進んでいきます。声を上げられない状態ながらも誰もが極限状態に追い詰められているため、そこで静かに、個々の本質があぶり出されていくことになるのです。

映画「ノイズ」
(C)筒井哲也/集英社(C)2022映画「ノイズ」製作委員会
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「かさぶた」が意味するのは?

印象的なのは、神木演じる警察官の慎一郎がしきりに口にする「かさぶた」という言葉。島で何か悪いことが起きれば、誰かしらがかさぶたにならなければならないというのです。傷口を覆うためには、ときには誰かが手を汚すこともある。つまりこれは、“隠蔽工作”を指しています。しかしかさぶたは、自然と剥がれ落ちれば傷は治癒する一方で、無理に剥がせば悪化するもの。常に不安定で脆く、少し突けば簡単に崩れてしまい、そして新たな血が流れます。このようにして本作は、人々が無茶な隠蔽工作に奔走すればするほど、さらなる悲劇を生み出すさまを描いているのです。

ここで言う悲劇とは、見たくない、知りたくない、個々の人間の本質。次々に明るみに出る“悲劇”や驚きの展開は、見る者を釘付けにすることでしょう。

◆文筆家・折田侑駿

折田優駿さん
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1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。http://twitter.com/cinema_walk

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