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65歳オバ記者が振り返る“激動の1年” 母親の死から、卵巣がん疑い手術、『あさイチ』生出演まで

個室バスの旅に「代わりに行ってもらえますか?」

で、大学病院での検査を始めたら、「良性腫瘍の可能性が高い」と言われ、私も張りつめていた気が抜けたのね(「卵巣がんの疑い」ではあるけれど)。雑誌の取材で旧知のライター、Kさんから「個室バスで東京から大阪に行く」と聞いて、「いいなぁ。行きたいなあ」と、けっこうしつこく言っちゃった。

オバ記者
不安しかなかった大学病院での検査
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Kさんも楽しみにしている様子で、私にお鉢が回ってくる可能性はほぼないと思って言ったんだけどね。出発数日前になってKさんにのっぴきならない事情ができた。「どうしても行けなくなったので代わりに行ってもらえますか?」と言われたときは、一瞬、「えっ?」と思ったんだよね。というのもそれまで腫れている下腹部は“違和感”くらいの感じだったんだけど、数日前から“鈍い痛み”に変わってきていたの。けれど、あれだけ「行きたい」と言った手前、断れない。

「きっと大丈夫!!」。乗り物好きってこういう時、絶対に“引く”という選択をしないんだよね。とにかく時間に余裕をもって出発地の池袋に行こうと、出発の30分前に到着するように山手線に乗ろうとしたら電車が来ない。最寄り駅の秋葉原の様子がおかしいの。

やっと「人身事故」というアナウンスがあったのは10分後のこと。その時はまだバスの出発時間まで一時間くらいある。「楽勝、楽勝」と思って気持ちを落ち着かせようとしたけれど山手線はいっこうに来ない。とにかく先に進もうと途中の田端駅で埼玉に向けて方向を変えてしまう京浜東北線に乗り込んだの。

田端駅から池袋駅までふつうに山手線が走っていたら4駅で10分。でもその山手線はまだ動く気配がない。こうなったらタクシーしかない。が、駅前のタクシー乗り場は長蛇の列。

長いことライターをしていると、こういう時に普通じゃないことを普通にしちゃうんだよね。乗り場のうんと手前に陣取って体から「来いっ」と念じると次の瞬間、一台のタクシーが私の前で停まってくれた。そしてその運転手さんがプロドライバーとしてド素晴らしい仕事をしてくれて、出発30秒前に滑り込みセーフ!!

バスに乗車中、振動で“痛み”が…

と、そこまでは良かったんだけど、問題はここからよ。個室バスは誰にも気がねなく寝転がれるし乗り心地は悪くない。けど、走り出してすぐバスの振動がズンズンと私の腫れている卵巣に直に響いて、もともとあった“鈍い痛み”が、時間と共にふつうの“痛み”に変わってきたんだわ。

oba
内心ドキドキしながら散歩した道頓堀
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東名高速を2時間おきに休憩いれながらだけど到着には7時間かかる。「腫れている卵巣が破裂したら即入院です」という医師の言葉が今さらながら思い出されたわよ。どうにか大阪、梅田のバスターミナルに着いたら、朝の道頓堀をちょっとだけお散歩して、撮るべき写真を撮り、すぐに近くのカプセルに潜り込んで薬をのんで横になったときは心底、ホッとしたっけ。

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