ペット・動物

犬はなぜ噛む? 愛犬に人や他の動物を噛ませないために大切な「しつけ」と「苦手シチュエーション回避」

子犬のうちに噛んではダメと教え込む

犬にとってストレスのかかる状況を避けることと並んで、飼い主さんにできる有効な予防策が、やはりしつけです。子犬を飼い始めたら、「人や他の動物を噛んではいけない」と教えましょう。

犬
子犬のうちに噛んではダメと教え込んで(Ph/イメージマート)
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具体的には、子犬が飼い主さんの手などを噛んでしまったときに、痛くなくても毎回欠かさず叱ること。犬が「構ってもらえた」と誤解するといけないので、低い声色を使って、「ダメ」「止め」など短い言葉で教えます。教えるという対応自体はもちろん、使う言葉や声のトーンを家族全員で統一すると、犬も混乱せず、噛むことはいけない(噛んではいけないものがある)と理解するようになります。

「注意しても噛むのをやめない場合は、飼い主さんが別の部屋に移ったりして、犬を一時的に無視するといいですね。『噛んだから、楽しい時間が終わってしまった』という因果を含めるのです」

犬が噛んだときに飼い主側が怒りをあらわにすることはよくない

逆に、よくない教え方は、犬が噛んだときに、飼い主さん側が怒りをあらわにすること。力まかせに叩いたり怒鳴ったりすると、犬は怯えて余計に噛んでしまうかもしれません。落ち着いて、低く短く注意しましょう。

自分の手をおもちゃにして遊んではいけない

「それから、うっかりやってしまう人が多いのですが、自分の手を猫じゃらしか何かのように使って子犬と遊ぶのは絶対にやめてください。幼いうちは牙も小さいし、噛まれてもあまり痛くないからといって、注意もせずに遊んでいると、犬は『手は噛んでいいもの』と誤った学習をしてしまいます。遊ぶときは必ず、おもちゃを使って。噛んでいいもの、噛んではいけないものを明確にしてあげてください」

それでも噛みグセがついてしまったら、どう矯正すればいいのでしょうか。

「成犬の矯正は容易ではないので、トレーナーなど専門の業者に相談するのも有効な手段です。特に若い犬の場合は矯正できる可能性が高いといいます」

散歩する芝犬
噛みグセの矯正は容易ではない(Ph/photoAC)
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犬を飼う際は噛みつき事故の防止に精いっぱい努めて

獣医師と保険会社社員の経験を持つ山本さんはあらためて、犬の飼い主さんには噛みつき事故の防止に精いっぱい努めてほしいと話します。

「犬は噛む力がとても強いです。飼っている犬が咬傷事故で被害者に怖い思い、痛い思いをさせたり、後々まで影響するケガをさせたりすると、飼い主さんに請求される損害賠償も高額になります。

金銭面でも痛いですが、それ以上に、愛犬を殺処分するしかなくなるなど、非常に悲しい結末を迎えることになってしまう。事故を未然に防げるように、しつけと工夫(犬の苦手な状況の回避)に努めましょう」

◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん

獣医師・山本昌彦さん
獣医師・山本昌彦さん
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獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/

取材・文/赤坂麻実

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