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66歳オバ記者、特養に入った認知症の叔母から「黒い電車に乗って旅行にきた」と電話 「長年関わってきた歴史があるから目の前の姿を認めたくない」

「人はいつでも心身共に元気ではいられない」

でも怒鳴ったって仕方がないし、本人だって、自分の意識とは別に、もうひとりの自分が起こしたことに責任なんか持てやしないって。じゃあ、どうしたらいいって、いくら考えても出口はないんだよね。老いとはこういうこと。やがては私もそうなるという現実を飲み込むしかないんだよね。人はいつまでも心身共に元気ではいられないんだもの。

そういえば叔母が60歳のときにふたりでパリ、ミラノ、ヴェネツィアの旅をしたことがあるの。何ひとつ自分ではできないくせに、言いたいことだけ言う叔母に腹を立てて、とうとうミラノの繁華街で「じゃあ、勝手にどうぞ」と見捨てたわけ。そして頃合いを見て探しに行ったら、「どこに行ってたのよっ!」と泣きそうな顔で怒るから、「じゃあ、これからも自由行動にする?」と言うと、「そんなこと、できるわけないじゃない」と、やっと白旗をあげた、なんてことがあったっけ。

26歳の時、女友達と訪れたギリシャのシフノス島
白旗をあげるなんて叔母には珍しいことだったな(写真は26歳の時に訪れたギリシャのシフノス島)
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良くも悪くも、長年関わった叔母と姪だからの歴史がある。思えばその記憶があるから、目の前の叔母を認めたくないのよね。

認知症の世話はプロに任せたほうがいいという話はよく聞くけど、そうなんだよね。認知症の知識がある、ない、という以前に、過去がないから、人の老いとはこういうものだと、すんなり受け入れられるんだと思う。受け入れられないから、私は母ちゃんを怒鳴ったんだよね。

元気になるにつれアクの強い性格も復活!?
これから先さら老いていく叔母を受け入れることができるのか…(写真は帰省介護をしていた頃の母親)
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先日の叔母のマトモそうな「ヒロコちゃん?」の声を思い出すたび、そんなことを思うのでした。

◆ライター・オバ記者(野原広子)

オバ記者イラスト
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1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。

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