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66歳オバ記者、特養に入った認知症の叔母から「黒い電車に乗って旅行にきた」と電話 「長年関わってきた歴史があるから目の前の姿を認めたくない」

「何かにとりつかれたようだった」母親

実は私、この顔にはちょっと見覚えがあるんだわ。4か月間、帰省介護した母親はほとんどボケの症状は出なかったけれど、寝起きに何度かおかしくなったことがあるのよ。最初は、「何でそんなに必死になっているんだ」と思ったけれど、違うんだよ。目をギラギラさせて、顔つきからして何かに取りつかれているみたい。

オバ記者のお母さん
母ちゃんにも誰か知らない顔つきになるときがあった
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感覚では「あ、この人の言うことを真に受けたらダメなんだ」と判断するんだけど、同時にそう思いたくない思いもある。そのふたつがせめぎ合って混乱した私は、母ちゃんを怒鳴りつけたんだよ。「ざけんな、ばばあ。てめえ、私をどんだけ縛りつけたら気がすむんだあ」と。

母ちゃんはそんな私を「あのガギメ(娘)、がががっと怒鳴りやがんだ」と弟に愚痴っていたけど、その時はもう目つきも顔つきもいつもの母ちゃんに戻っている。

歩けるまでに復活した時の母ちゃんと弟
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まあ、家族がいっしょにいられるかどうかは、その度合いと割り合いなんだよね。叔母は母ちゃんよりずっと身体は動くけれど、認知症の度合いはずっと重いように見えた。一緒に食事をするために過ごした1時間足らずの間、ずっと私の知っている叔母ちゃんの顔じゃなかったんだもの。

叔母からの電話「黒い電車に乗って大勢で旅行にきた」

叔母が特養に入居して3日目。なんと叔母から電話が入ったのよ。

「ヒロコちゃん? 私だけどどうしてる? 私、なんか黒い電車に乗って大勢で旅行にきたみたいだけど、やだ、ここどこかしら。それでね。明日、東京駅まで迎えに来てほしいのよ。みんなで旅行にきて泊まっているんだけど、家も猫も心配だし」

電話をかけようとしている女性
「ヒロコちゃん?」突然かかってきた叔母からの電話(Ph/photoAC)
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施設に入居する日がくるとは思っていなかった叔母は、特養がどんなところか知らなかったんだよね。

「昨日はね。ご飯のときにいっしょになった人から『どこから来たんですか』と聞かれたから、『水戸でござんす』と答えたの。そうしたらその人、水戸を知っていてね」と言うけれど、水戸は叔母が生まれた村にいちばん近い都会で、住んだことは一度もない。

オバ記者
状況がわかっていても叔母の発言には冷静でいられない(写真はバイトをしている国会議事堂の前庭)
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電話だったから、「あらそうだったの」と聞けたけど、目の前にいて何時間かこれをされたらどうなるか。モノ取り妄想で、泥棒扱いをされたら冷静でいられるか。「ただ今、魔界に入っているのね」といくら思おうとしても、私はムリ。やっぱり怒鳴るし、もしかしたら手が出るかも。

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