更年期

フェムテックの第一人者、山田奈央子さん 下着との出会いが人生の転機に「下着は女性に自信を与えてくれる」

臆せずに意見を言い続けることで、環境は変わる

学生時代の経験から、山田さんは大手下着メーカーに就職。プロダクトチームに配属されたものの、女性用下着を作るチームにも関わらず、女性はデザイナーしかいない状況。しかも、プロダクトチームに入った女性は山田さんが初めてで、周りの男性たちは戸惑っていたといいます。

「実際に身につけない男性たちが、どうやって“この下着がいい”と決めているんだろうと疑問に思い、実際に自分で試着をしてから女性目線の意見をするようにしました。はじめはなかなか通りませんでしたが、だんだんと信頼を得て、“このサンプルを着用した意見が欲しい”と言ってもらえるようになりました。けれど、実際に使う女性たちの気持ちをもっとたくさん聞いて、大事にするべきではないかと思っていたんです」

ピンクの服を着た山田奈央子さん
山田さんは大手下着メーカーで経験を積み、ブランドを立ち上げた
写真7枚

大企業ではなかなか自分のやりたいことはできないのかと少しあきらめていた中で、とある上司から、小さなブランドを立ち上げる機会をもらえました。

「その事業部には私とデザイナーしかいませんでした。二人三脚でどうにか奮闘して、本来は他の部署に頼むようなプレス発表会などの仕事も全部自分で手配しました。当時は大変だなんて考えもしないくらい無我夢中でしたね。こぢんまりとした発表会ではあったのですが、新聞にも掲載していただいたりして、あっという間に販売目標を達成できたんですよ。それがとてもうれしい経験でした」

本当にこだわるならば、タイミングは決めなくてもいい

4年間の大手下着メーカーでの勤務を経て、より女性に寄り添った下着を作りたいと思った山田さんは、26歳のときに独立を決意。

「独立して大学時代の友人と一緒に会社を立ち上げた当時から、女性が持つ悩みを解決したいという視点はずっと同じ。それが、現在は延長線上として『フェムテック』という言葉に置き換わっているような感じです。独立した当初からフェムテックの視点で女性に寄り添ったもの作りをしてきたのだと思います。

私たちと大手下着ブランドの大きな違いのひとつは、“この時期に絶対にこれを販売する”と決めていないことです。タイミングを決めずに本当にこだわって作ったものだからこそ、女性の悩みを解決できるような、かゆいところに手が届くものができるのだと思います」

ピンクの服を着た山田奈央子さん
女性の悩みを解決できることを大切に下着を開発している山田さん
写真7枚

クラウドファンディングサイト『Makuake』で、下着部門では初めて1000万円以上の応援を集めた『On de miu ビューティーショーツ』も、年月をかけてこだわって作られた製品です。

「制作は、下着に関するお悩みをとことん掘り下げるところから始めます。ヒアリングをすると、なぜこれに悩んでいるのか、何が原因なのか、どうしたら解決するのかということを考えてから、ある程度のパターンを作ります。

簡単に思い通りのものはできませんから、『On de miu ビューティーショーツ』の制作ではサンプルを何度も作るうちにあっという間に1年が過ぎました。試す人によって意見が違うので、何が一番大事なのか、落とし所を決めてから話し合います。目指しているものをイメージしていても、完全に再現できるかといったら難しいんですよね。ベテランの敏腕パタンナーに頼んでいても、想像どおりのものはなかなか上がらないんです。

こんなに苦労しても作ろうというのは、それでも女性の悩みを少しでも解決したいという思いが強いからです」